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その14 横が見えない
横が見えない という言葉がある
あいつは横が見えない人間だから
というように使う
人と人との連関に
背中を向けた姿
を言うのだろう
目的と自負を抱いて
脇目もふらずに走っている姿
のつもりだろうが
飛びくる矢弾丸を避けて
周りを盾で囲い
中でうずくまっている姿
とも見える
自己の充実さえあれば
とは常々思うことだろうが
充実は
背中を向けている〝横〟から
生ずることが多いので
なにかしらいつも
満たされぬ表情を
していることになる
向けた背中は
我が道を行く決意の
デモンストレーションと考えたいが
無視された〝横〟は
その背中に切りつけ
切り裂く
時おり首を前に落し
肩を上下させたり
息を大きく吐いたりするのは
背中が痛むのだ




