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その4 夕ぐれに 哀切 退行
夕ぐれに
断念することの
涼しさ
頭も目も確かになる
人民は断念の集積なのだ
鏤骨の人生
陽焼けした笑い
哀切
生きる。
時の白く冷めた
鋼鉄の軌道の上に
滴り落ちる生命。
その剃刀の光沢を鈍らすように
弾き返す長大な無機を融かすように
絡みつき 濡れ光る
人間の柔らかい 温かい血。
各々は
各々のようにしか
生きれぬ。
鋼鉄に沿い
鋼鉄に血塗りつける者こそ
人間。
退行
あの頃は
僕はまだ透明で
母の胎内の温かみを
そのまま持っていて
餅みたいに柔らかだった
陽射しが膚にまといついて
生毛がキラキラして
背中に温もりの玉が転がり 友達と
眩しい川面を見ていた 木の橋の袂
川面の反射光が
僕と友達の紺の上衣に
縞になって揺れていた
明るく暗く〳〳
あれは幼稚園に通っていた頃