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その2 愛の基準 ピンボケ バス停
愛の基準
その人と
一緒にいると楽しい
基準は単純でした
自己への理解を
追い求めて躍起でしたが
一緒にいると
すでに流れている喜び
それが愛でした
ピンボケ
ほら考えちゃいけない
そんなふうに考えちゃ
誰もなんにも言えないさ
すらすら出る言葉が
過不足ない真情を語るもの
なにをどう言うべきかなんて
だからあんたは
ピンボケなんだ
バス停
私は酔っていました
何者も逆らう者はないようでありました
バス停までくると
くすんだ中年のおやじ
着ぶくれたオーバーの婦人
暗い目つきの青年
俯いた若い女
勤めを終えて
おし黙って
じっと
並んでいるのでした
護送車を待つように
黄昏の街路
路面電車の重い音
ええ
私もつつましく
彼らの列に加わりました




