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坂本梧朗詩集  作者: 坂本梧朗
Ⅰ 第一詩集『帰郷』  1979年刊
23/133

その23 午後


階下の祖父母の部屋から

母が私を呼ぶ


祖父の頭から流れる血を

脱脂綿で拭きながら

気がつかなかったのかと

母は私に問う

だが私も

帰ってきたばかり


買物から帰った祖母が

部屋に入ると

祖父が俯せになって

踠いていた


荒い呼吸をしながら

祖父は頭を垂れている

額に汗が光り

サポーターのずれた膝頭が

赤くこすれている


頭は何で打ったんかねっ

いつからこけとったんかねっ

勝気な祖母が尋ねる

――わからん

力の脱けた

祖父の答はそれだけ


はあーと大きな息をして

私の顔を

遥かそうに眺める

鼻に汗の玉がある


逸らす私の眼に

祖父が一日中

眺めているテレビが

白々しい光を投げる


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