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その21 玩具
姉の子が遊ぶ
ペンギンの恰好をした玩具だ
ゼンマイを巻いて水に浮かすと
黄色い足ひれで
ピタピタと水を叩いて前進する
風呂に入った俺は
そいつを水中に引きずり込んだ
底で手を放すと
水面へ勢いよく上がってくる
不都合 と思った俺は
上がってくる頭を横に払った
そいつは力なく胴を見せた
が 忽ち頭を上に向け
意外に鋭く上昇してくる
水面との接近
俺は慌てて
手荒く頭を叩き下げた
苦し気に身を捻りつつ
そいつは下降する
が 膝の間で踏み止まり
またも頭を上に向ける
俺は重ねてその頭を
底に向けて押し下げた
苦悶に沈むかのように
底を這うそいつ
が なお俺の手に
確かな突き上げを返してくる
何度目かに
俺の一瞬の隙を突いて
そいつの顔は水面に出た
あどけないはずの
眼と嘴が
妙に生き物の力を持って
俺に挑んでいる




