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その19 杭
床に入り
仰向けになって一息つく
逃れるように
本に伸びたがる手を止めて
そのまま天井を見続ける
たまには
己の抱えこんだ不安に
ぴったりと身を寄せよう
今日一日
むしろそれを避けるために
忙しく手足を動かして
終ったのだとしても
糊塗したセメントに滲出する
黒い地下水のように
そいつは胸に浸潤し
歯ぎしりしたいような不確かさは
意識の底を噛み続けるのだから
真向うことを
放棄した日常の
「なめらか」な流れ
その中で
俺が
溺死するのであれば
むしろ
苦しさを越えて
己の抱えこんだ不安に
ぴったりと身を寄せよう
流れに打ちこむ
杭として