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その14 愛について(2)
この世には
許される幻想と
許してはならぬ幻想とがある。
こころを持たぬ自然に
美しく懸ける心情の虹は
許される。
我を愛さぬ人を
甘美な愛の光彩で飾ることは
許される。
むしろそれらは
人間の崇高の一つの証。
だが
許してはならぬのは
人間を愛せぬという幻想
閉じてしまう心という幻想
憎悪と闘争の人間関係という幻想。
ああ、待ってくれ
もう少し聞いてくれ
荊棘の道を歩いてきた
その傷の痛みを
忘れたわけではない
そうだ、
伸びようとする愛を
何度叩き折られた事か!
だが聞いてくれ
それでも
愛さねばならぬという事を
人間である限り
やはり
そうなのだ。
人間の不毛は
具体的な人間同士の
具体的な愛でしか
越えれぬ。