133/133
その35 友の犬
犬の形をした
僕の友は
鼾をかいて眠っている
授乳のために食べこんだので
ぶあつくなった背中が
上下している
その友の
子供が死んだ
生まれてきたのは
苦しむためだったような
四十日の命
瀕死の重態にありながら
くっと立って
横たわる場所はここではないと
ホットカーペットの外に出てしまう
毛布をかけると
撥ねのけるように立って
死を覚悟したのに
二度三度と
立ち直りの
期待を抱かせてくれた
強い奴
最期は
文字通り足掻いて死んだ
ストーブの前に横たえられていたから
足掻いたのは例によって
ホットカーペットの熱から
脱出しているつもりだったか
血を吐いて
口のまわりを朱に染めて
受難に
雄々しく立ち向かった
小さな体よ
今、頭をもたげて
友は窓の外を見ている
亡き子の声が聞こえたか
その瞳の
無垢な光