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その17 旅立ち 壺の中
旅立ち
窓べの椅子に腰かけ
靴下を穿く
レースのカーテンを透かして
朝の光が射しこむ
出発は
このように来るのか
まだまだ潜り続けなければならないと
覚悟していた
不透明な酸っぱい流れが
不意にとぎれ
前触れもなく
トンネルの出口の
白さのなかにいる
上着のボタンを
とめ終わるころになって
出発の訪れを
諾っている
十分長い時間だった
体に染みこんでいる
澱のようなものの暈に
傾きながら
光が
背中を押す
壺の中
生まれ落ちると
僕らは瓢箪の形の壺に
放り込まれる
上方に穴が一つ開いていて
そこからだけ光が漏れてくる
足場のくびれはヌルヌルしていて
油断すると
脇の底無しの暗闇に滑り落ちる
僕らは光に少しでも近づこうと
押し合いへし合いしながら
這い上がる
生涯の終りに近づいても
光との距離は縮まらず
夢想だけが僕らを
光のなかで寛がせる
至り得ぬ怨嗟を映して
光は毒々しく輝き
せめぎあう僕らの体を
じりじりと焼き焦がす
照らし出された
累々たる屍
僕らは我が身を焼く光に
一瞬でも早く身を晒そうと
争ってきたのだ!
壺の外から
見ているものがいる




