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幼児用ゲームに幽閉された死にたがりはどうにかして死ぬらしい。  作者: 白州ダイチ
フェーズ1 子供騙しのクソゲー
3/3

3 喜び→悲しみ


―――らんらんらんらんランランルー!


 ランランルーは一部で呪いの言葉と勘違いされているようだが、ドナルドの名言だから安全である。



 というのも、俺の手へと超人気ゲーム、「グラディウス・ファンタジー」の店頭プレミア版が渡ったのだ。これ程はしゃいでも、誰も居ない一本道なのだし、別にいいだろう。

 しかし、感動を伝えられないことと、はしゃいでているのを見られないことが重なりプラマイはゼロである―――







 ガードレールの支柱を数えて3000本、死フェチの青年ケイはやっと家に辿り着く。

 開け慣れすぎて草すぎるドアノブを回して家の中へ。





 学校はもうサボってゲームをしようと思っていた―――





 特に大事でもない話、父がいた。


 一升瓶片手にである。





 「おぉよ、刑じゃあないか!

  ちとお前も飲んでけよはっはァー」




 とにかくウルサイ。




 超近隣に響くくらいにウルサイ。




 病弱な母とはこんな扱いを壁越しに受けるものなのだろうか・・・



 父は会社帰りなのか(朝)スーツ姿で、頭にネクタイ、首に靴下という絵に描いたようななりで酔っていた。酔いとは回りの速いものだ、すでに頭は何処かへ向かっており、顔は赤らむばかりだ。



 「どうしたよ、父上?」



 「いやァ、今日は休みなモンだから、朝飲みだァ!」



 こいつ―――語尾がアガるまでに飲んでいるようだ・・・






―――会話は成り立たねぇなァ、これ。







 大酒飲みの黒田岸辺衛は無視(さこく)して、俺はさっさと自分の部屋(りょうち)へと歩く。







 てくてく、てく―――





 誇りだらけの机上のフィギュア類に、埃だらけの床。

 ベッドの上には枕と畳まれることを知らぬ毛布、そして制服から取ったハンガーが無造作に。




 俺の部屋だ。




 いや、ゴミ屋敷っぽく()()()()、とでも言おうか。




 とにかく俺は整理整頓が苦手である。

 まず、ニート(契約済)にそんなスキルはいらないと思っている。それに潔癖症でもないから、こんな部屋でも生活できるワケだ。

 綺麗にしても何か思うことはない。

 いっそガンジス川の水をホースで流せば、部屋も心も綺麗になって一石二鳥になるかもしれないのだが。




 ベッドの上からハンガーを薙ぎ払ってスペースが出来たら、《GDF》の入った袋と一緒にダイブする。それからゲームにもダイブするつもりである―――

 










―――寝ていた。





 我不覚也。だっけ?


 現在時刻は12時30分。俺は5時間も寝てしまったようだ。日も飽き飽きして回ってしまい、屋根を挟んで真上に位置している。



 早速(本日2回目)ダイブ・・・と行きたい所だが、「くぅーーー」腹が申し訳なさそうに鳴った。






 廊下を過ぎてリビングへ。ふと右手を見ていただければ、酒豪がソファにヨダレを垂らしているのが分かります。



 今だに酒を飲んでいるかと思われた父は、案の定寝ていた。机の上には、父の胃袋に入った後の瓶やら缶が散乱し、ゴミ屋敷みたくなっていた(現実)。




 父と一体化したソファの横を静かに通り過ぎる。

 こんなクズだが、俺らを養う立派な大黒柱なのだ。たまには、羽目を外して休んでもらお―――








 「―――うーん、カナちゃーん・・・またあそぼぅよォー」






 もちろん、俺の母さんの名は別だ。美鈴という。「カナ」にカスってすらいない。





―――柄でもないこと言った俺がバカだったわ、これ。






 巨人が大地を駆けるように床を鳴らしながら、俺はダイニングキッチンへ向かう。


 戸棚から茶碗、冷蔵庫から卵を1個と醤油、マヨネーズを取り出し、炊いてあった白米をよそう。卵の殻を割ったら卵黄を白米の上に落とし、醤油とマヨを両手で掛ける。

 1分クッキング、「TKG」の完成である!




 TKGをマンガの1シーンみたいにかきこみ、腹は溜まった。




―――よし!




 次はゲームで溜まりに溜まったストレスをゲ〇る番だ。






 廊下をまたも足踏みしながら通った―――この家には母がいたと忘れていた岸辺 刑17歳である。












 「さてさてさーて、GDFやっちゃいますかぁ!」




―――うわぁ、ドキドキしてきた。





 ベッドに置いたままだった袋を確認してから、《ガレリア》諸々を揃える。





 「コードはおっけは、ガレリアの傷も・・・おっけーかな?」





―――俺専用スキルだと思われる、対壁会話(ぼっちの独り言)が発動したようだ。






 《ガレリア》側面部の電源ボタンをワンタップし、セットアップはオールグリーン。


 後は頭に被って()()()()()()を唱えるだけなのだが、まだ大事なことをやり残しているため、そうは動かない。







 「ついにキマしたよォ!!」



 また件のスキルを使用していた。無意識でだ。




 これは無詠唱魔法の才能があるのかもしれない・・・















―――魔法なんてねェ、がな。













 人生は既に諦めたも同然、今しか見ることの出来ない俺にとって、《フルダイブ》系列のゲームはまさしく()()()だった。



 脳に直接情報を送っているということは、夢を見ているのと同館だといえる。



 しかし、それは所詮()()()()()であり、絶対に自分の身に起こることはないのだ。





 夢の中にまで夢を見て、自分を騙すだけの弱い俺。



 きっと、世界はラノベの主人公なんて生み出さないのだろう。


 転生する前の主人公たち―――ニートやら引きこもりはたくさん此処にいるが、転生しないかぎりは全員「クズ」だ。



 殻を作りたくて作っているワケじゃない。



 ()()()()()()()()()のだ。




 親が死んだ時には心を塞ぐように、俺達は心や根性が死んでいるからこそ、殻を被る。




 線香に聖なる炎を灯す?



 祈りを捧げる?





 岸に置いて行かれた者達がプレイ(Pray)するように、社会に置いて行かれた俺達がプレイ(Play)することを、一体誰が憚ることが出来る?





 ただ、ただ単に―――()()()()()()()()()()()()のだ。






 魔法が使えるとしたら、俺は自分のために使ってしまうだろう。



 誰かに差し伸べることもなく、RPGの魔王のように。



 そしてチカラに自惚れ、誰かの魔法にかかり、破滅してしまうかもしれない。







 魔法の無い()()()()()だからこそ、魔王のクズで残虐な部分を持ち得ている俺は、《フルダイブ》という名の魔法に―――例え夢だとしても―――かかってみたいと思ってしまうのだ。








 俺の中で定めた魔法のレベル、それが一番高かったもの―――《GDF》こそ、俺を変えるキッカケになると思っている。だが、それは並立して破滅の可能性を孕んでいるともいえる。





 どっちに転ぶかは、魔法でも占えない。




 

 ゲームがしたい―――その気持ちが他人にどう見えるかはイマイチ分かっていない所だ。


 ただ、それは良くも悪くも見える、1つの魔法のようなものなのだろう・・・











 自分でも思う。




 「はァーーーーーー!?






  急に何考えだしたんだよ俺ェ!?



  遂にゲーム不足で頭が狂ったかァ?




  あーやばい。早くやろ。」





 無意識の内にさらりとかっこいいこと―――社会では「イタい」と呼ばれる―――を言った俺は、ソフトの入ったプラ袋からソフトを取り出し、()()()()()













 刹那、本当に頭が狂ったと思った。













 ソフトのパケには、明らかに《GDF》―――「グラディウス・ファンタジー」とは別のソフト名が書かれていたからである―――






 「インファンズ・・・






  ふぁんたじィだァーーー!?」










 「何故だ何故だ何故だァ!?


  俺は確かに・・・・・・《GDF》を手に取ったハズだが―――」




 脳内にDVDショップでの記憶が次々流れていく。



 「あの店員は・・・ちょっとワルそうだったか。

  ただ、店員は店員だろうしな・・・」




 記憶と意見は一致しているのに、解だけが定まらない。




 その中。




 ふと、1つの可能性を思いつく。





 「あの女の子、確か俺にぶつかってきて・・・・・・まさ、かな。へへ」


 





 状況理解と回答のタイミングは、カンマを書かない位に同じだった。






 「あんのォーーーー・・・・・・









  ロリガキがァ―――――――――――」












 これは俺の発狂権を行使してもよいだろう―――親父じゃあるまいが。






 あんなに欲しかった―――外に出たくないため断念した―――ソフトを、発売翌日に買えた俺はラッキーボウイかと思っていたが、これは違うようだ。やられ千葉。




 あんなに長々と、しかも無意識で語る程に腐った俺の心情は落ちに落ち、オチも無く、全く笑えない状況になってしまった。





 例えるとしたら、fateが元々エロゲなのだと知った時みたいな気分だ。確かにこれは引き篭もりたくなる。





 








 30分が過ぎ、俺の心は聖母マリア並みに落ち着いた―――あのゲームと対面できるほどに。






 「どうする刑?


  やるかァ、この見た感じ絶対クソゲーのクソゲー?」




 俺の中に「プレイする」という選択肢があることが、まず意外だったのかもしれない。


―――ちょっと楽しいかもとか思い始めたんだけど。













すみません、白州です。

かなり展開が濁り、タイトル詐欺となりそうになっておりますので、一度投稿させていただきます。

改めて、仕上げるつもりです。

どうかお許しください。

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