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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
最終章 彼らと彼女は、何かを取り戻していた
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48「今日も明日も明後日も、楽しいことが待っているから」(最終話)

※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は最終話です。

 一夜明けて僕らに待っていたのは、全世界を挙げての歓迎ムードだった。僕らの転移の様子は一部のTVチャンネルで中継されていたらしく、それまでの経緯の解説(byキラさん)も付いて、大騒ぎどころの話ではなかった。もちろん、映像トリックも疑われたのだが、最終的には、誰もが時空間転移の成功を信じるようになった。


「それもこれも、安積先生(・・)のこれまでの実績がモノを言ったってわけね」

「そうなのかな? そうでもないと思うけど」

「はー、しかしまあなんというか、よくよく思い返してみたら、白鳥先生と菜摘ちゃん、どこか似てたわ」

「ごめんね。因果関係の問題を考えると、私自身を含めて、同一人物と知られるわけにはいかなかったから。ちょっとだけ、喋り方を変えていたんだ」

「そりゃそうだ。同一人物がふたり、同じ場所にいる……タイムパラドックスの典型じゃねえか」

「12回ループ中はともかく、13回目の年は、さすがにね」

「でも、その12回ループも、『白鳥先生』として僕らの様子を見ていたと」

「まあ……」

「そして、私たちが暴走しないよう、あちこちに奔走していただけでなく、私たちの心理状態も誘導していたと」

「……えへへ」

「くそう、安積菜摘モードで微笑まれると何も言い返せねえ。眼鏡(・・)は伊達だったし、髪型(・・)も戻ってるし」


 なんでも、遺伝子情報の鑑定結果によって、安積さん自身が白鳥先生と同一人物であると『確認』してからというもの、過去に転移して別人として存在するためのあらゆる方法を考案したそうだ。そこには、素性を捏造(・・)するための書類偽造も含まれていた。『過去に向けての公文書偽造』という前代未聞の行為に、法令は対応できなかったらしい。というか、それを前提にあらかじめ関係各署と交渉した上での実行だったそうだ。偽造のための文書を関係各署自身が作成したというのだから凄まじい。


「あれ、ねえ、じゃあ、『白鳥先生の御家族』って?」

「あれは、もともと住んでいた家で働いていたお手伝いさん達に協力してもらったの」

「ああ、『本邸』ね……」

「でも、私の素性は当然隠していたし、その人たちへの依頼文書をお母さん直筆で作ってもらって対応したんだけど。もちろん、未来のお母さんね」

「なんかさあ、安積さんが天才ってだけじゃ実現できなかったよな、一連の出来事って」

「もう、奇跡だね。いや、時空間転移なんて奇跡以外のなにものでもないけど」


 本当に、そうだ。その転移技術は、今この瞬間では未だ実現されていないのだ。更に言えば、転移技術の実現を信じるきっかけとなった僕らの12回ループも、安積さん自身がゼロから発案したのではなく、過去の経緯として知ったからだ。『鶏と卵』の問題が頭をよぎる。


「さてと、そろそろ本来のHRを始めていい? みんなにとっても初めての高2なんだから、始業式の日の連絡事項はたっぷりあるよ!」

「うわあ、なんだか、面倒。安積せんせー、高2も何回かループさせませんかー」

「だめだよー」

「ああ、やっぱり、菜摘ちゃんだわ……」


 僕らは元の高校の2-Cとして再編され、担任業務も白鳥先生……安積先生が継続担当することとなった。どうやら、研究活動の傍ら、数学の教員免許も取得していたらしい。なお、教室追加やら教師雇用やらの問題は、安積家からの大量の寄付で賄っているとのこと。公立学校なのに。


「どうしたの、安藤くん? HRの司会してくれないの?」

「え? ああ、うん……いや、はい、今からします」

「よろしくねー。ああ、連絡事項は既にクラウド上のカレンダーに置いてあるから、そのことを伝えて確認してもらうだけでもいいよ」

「え、そうなんですか? でも、それじゃあ、他には何を……」

「みんなとお出かけする予定とか決めないの?」

「いや、僕たちはもう、ループの恩恵によるアドバンテージはないから、たいしたことは……」

「そんなことないよ! 今日も明日も明後日も、きっと楽しいことが待っているから!」


 そうだ。僕らはようやく、高校2年生になった。そして、その先の未来も存在する。みんなと一緒に。そのみんなの中には、もちろん、安積さん……菜摘さんもいるのだから。


「あ、そうそう。今年の3泊4日の修学旅行だけど、2-Cは『月面都市』に行く予定だよ。局所的な時空間転移実験もするから、将来の研究者(・・・・・・)たるみんなにも見てもらわないと!」

「「「「「えっ」」」」」

これにて完結です。くぅ~疲(略)。なんか辻褄の合わないところとか説明が足りないところとか(誤字脱字含む)結構ありそうなので、完結後もちょこちょこ修正をかけると思います。あと、番外編というか、IF話も(別作品として)書きたいなあと。菜摘も含めて14回目ループに突入するとか。年度末が恐ろしいことになりそうだ……。なお、最終章に登場人物まとめはありません。


完結しましたので、よろしければ、あらためて御感想や評価、ブックマーク登録等いただけますと幸いです。その、『連載版に気づかなかった』という方が結構いるらしく、完結ブースト等でランキングに載れば、短編版気になっていた方々に届くのかなあと(ごにょごにょ)。もちろん、次作の参考にも……いや、短編版からして出オチ感満載だったから、似たような話はもう書けないかな。次の『空想科学』ネタを考える参考に。このジャンルの作品を増やしたいので。

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― 新着の感想 ―
久しぶりの読み直しふぇ読んだが改めて読んでも面白かった 読み直しで気付いたのが、15話「第三章13」の最後の文章 「……傍から見ればすぐわかることでも、本人はなかなか気づかないものなのね……」 の言葉…
[一言] 面白かったです。 良い物語をありがとうございました。
[一言] 面白くて一気読みしました。 物語の構造が最後にスッキリ分かって気持ち良かったです。 ありがとうございました。
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