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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
最終章 彼らと彼女は、何かを取り戻していた
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44「みんな、どこにいるの?」

※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は、最終章の2話目です。短編版後半の一部を、連載版に沿って加筆修正したものです。

 眠りから覚めた私は、まだ少し混乱している頭で、スマートフォンやテレビなどのメディアを使って、情報収集を行った。


「地震の被害者が……ゼロ!?」


 この街を中心とした酷い揺れが、半径100キロほどの範囲に渡ったにも関わらず、である。もちろん、物損は激しかったが、人的被害は、いずれもかすり傷程度らしい。


「え、報告レベルでゼロ? どういう……」


 リーーーン、リーーーン


 私のスマホに電話? メッセージアプリの通話じゃなくて?


「……はい、もしもし?」

『菜摘ちゃん? 安藤です』

「安藤くん……の、お母さん!?」


 アルバイトの時に電話番号を交換したのを思い出した。こんな時にかかってくるとは思わなかったけど。


『よかった、菜摘ちゃんにはつながって。ウチの息子がどこにいるか知らない?』

「……いえ、知りません」


 嘘は、ついていない。


『そう……。どうも、夜中に出かけたらしいのよ。地震が起きて、どこかに取り残されているんじゃないかって思うんだけど、連絡がつかなくて』

「そう、ですか。……私の方でも、探してみます」

『お願い! そっちも大変だと思うけど』

「いえ……」


 ピッ


「……いつかは、わかるよね。私以外の1-C生徒と、白鳥先生がいなくなってること……」


 スマートフォンを操作し、メッセージアプリを起動する。白鳥先生も入っている1-Cのグループに、メッセージを送る。


【なつみ】@all みんな、どこにいるの?


 既読数は、いつまで経っても表示されなかった。



 高2となった私は、もともと人数がひとり少なかった2-Aに組み込まれた。ウチの学校はクラス替えはせず、今年度『2-C』は欠番扱いである。


 新学期が始まるまでの日々は大変だった。なにしろ、特定の学校・クラスの生徒および担任教諭が、そっくり行方不明となったのだから。


『……本当に、知らないんです』


 詰めかけてくる親御さん達に学校関係者、警察、マスメディア、等々。でも、いくら私ひとりだけが行方不明になっていないといっても、答えようがない。ループのことであれば、なおさらである。


「……なんといったら、いいものかな」

「ありがとう、お父さん。気を遣ってくれて。お母さんも」

「当然だろ! 菜摘が無事だったのは嬉しいが、あの愉快な連中が地震を境にこぞって消えるなんて」

「その……タイムカプセルを、みんなで埋めた時までは、みんなと、一緒に……」

「もう、いい。いいから」


 地震の後すぐに帰国して、今もおじさんの家で一緒に過ごしてくれる両親には、感謝と、そして、罪悪感がいっぱいだった。信じてくれなくてもいい、昨年度のうちに少しでも話していれば、あるいはもしかすると……。今となっては、後悔にしかならない。


 世間的には、私以外がこの街の出身であることと何か関係があるのではないか……ということが話題になり、それ以降、話は先に進まなかった。みんなの家族の方々には申し訳ないが、これ以上の何かは望めない。


「出席番号1番、安積(あさか)菜摘(なつみ)といいます。家の都合で、去年隣の県から……」


 始業式の日、私以外のクラスメート全員が私にだけ自己紹介するという奇妙なHRを終えた。状況も、自身の気持ちも、昨年度とは大きく違うのであるが。


 2-Aの生徒達とは、付かず離れずの人間関係を築いている。仲が悪いわけではない。昨年度の1-Cのみんなほどではない、というだけである。それは他の生徒もわかっていたから、相手も気を遣っているという側面があったのかもしれない。


 なお、前もって天気がわからないというのは地味に困った。タイムカプセルに入っていた安藤くんの手帳は、既に過ぎ去った出来事が綴られているだけだった。

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