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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第七章 彼らと彼女は、何かを期待していた
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42「今の彼らには、未来が存在しない」

※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は、第七章(バレンタイン&年度末編)ラストです。

 白鳥先生と安藤くんとの3人で小旅行をする日の朝、待ち合わせ場所に集合する。なお、全員『自転車に乗って』である。


「おはよう、安積さん」

「おはようごさいます、白鳥先生」


 ニコニコ


「先生もなかなかやりますね。ここを集合場所にするなんて」

「なんのこと? ここが距離的に集まりやすいだけなんだけど」

「そういうことにしておきます」


 ニコニコ


 がちゃっ


「白鳥先生に安積さん……おはよう」

「「おはよー」」


 集合場所は、安藤家の前であった。


 がちゃっ


「ちょっと、お弁当、忘れているわよ……あら」

「おはようごさいます、安藤さん」

「おはよう、菜摘ちゃん。それと……」

「はじめまして、白鳥です。安藤くんのクラス担任をしています」

「あなたが……。今日は、引率してくれるということですけど」

「あくまで、個人的にですが。でも、問題のないよう送り迎えいたします」

「そうですか。その……よろしく、お願いします」


 うーん、いつか白鳥先生を安藤くんのお母さんに引き合わせようと思っていたのだけど、白鳥先生の方から突っ込んでいくとは思わなかった。ここを集合場所にしたの……というか、この小旅行自体、安藤くんのお母さんと会うためだよね。でも、これまでの周回ではこんなことしなかったみたいなんだけど。はて?


 ガラガラガラ


「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい。菜摘ちゃんも気をつけて」

「はい、行ってきます」


 いいよね、家族に言う『行ってきます』って。必ず戻る、そんな意味も込められているから。



 私たちが自転車で向かったのは、少し離れた地域にある、山の山頂である。山と言ってもそれほど高くはなく、ゆるやかな坂をゆっくり登っていけば、自転車でもさほど疲れずたどり着ける。


「はあ、はあ、はあ……」

「安藤くん、また休憩しようか?」

「いや、だいじょう、ぶ……」

「大丈夫じゃなさそうね。そこの退避場所で少し休みましょ」


 ……たどり着けるはずなのだが、安藤くんの体力が限界だった。


「だらしないわねえ。私と安積さんは全然疲れてないのに」

「いや、ふたりとも鍛えている方だと思うんだけれども。安積さんはともかく、白鳥先生は知らなかったけど」

「いつも私を残念とかなんとか言ってる安藤くんが、何を言ってるのかしら?」

「それは、僕が言ってるというより、みんなが……」


 こっち見ないでよ、安藤くん。


「さて、山頂まで、あと一息よ。さあ、行くわよ」

「「はーい」」


 白鳥先生、元気だなあ。安藤くんがいるから……なのかな。もしそうなら、私も誘う理由がわからないのだけれども。



「到着、しましたね」

「そうね」

「やっと……」


 それほど高くないとはいえ、山頂からの見晴らしはとても良かった。快晴なのも良く見える理由だろう。遠くに、私たちが住む街の広がりが見える。


「それじゃあ、お昼にしましょうか」

「ですね。あそこの、公園のようになっているところで食べましょうか」

「えっと……少し、休ませて。今は……喉が、通らないと思う……」


 安藤くんのバテ加減がマックスになっていた。芝生のようなところにビニールシートを敷くと、安藤くんはバタッと倒れる。しばらくは無理かな。


「しょうがないわね。安積さん、少し、散策しましょうか」

「はい」


 とことことこ


「……いよいよ、来週ですね」

「そうね。『恒例イベント』については聞いている?」

「はい。たぶん、私も大丈夫です」

「教師の立場としてはあまりやりたくないけど、ループの問題に限っては、みんな一緒にいた方がいいのよね」

「結局、タイムカプセルも3月31日の夕方に埋めることになりましたね」

「それを口実に、昼間のうちに学校の鍵を借り出せそうなのは助かったわ。これまでは、鍵をこっそりと……犯罪よね、あれ」

「あ、あはは……」


 3月31日の深夜、1-Cのみんなと白鳥先生が学校に集まり、日付切り替わりを共にする。もとはリセットの検証をみんなでするためだったらしいけど、ここ数回はほとんど『年越し』の様相を呈しているらしい。


「奇妙なものよね。ループを脱出しても、あの子たちはようやく高校2年生なんだから」

「周囲にとっては1年間でしかありませんからね。でも、みんなにとっては……」

「ようやく訪れる、高2。でも、今の彼らにとっては、来月4月1日以降の未来が、存在しない(・・・・・)


 未来が、存在しない。結構きついよね。もし、ひとりだけがそんなことになったら、他にいたとしても交流がなかったら。考えただけでも、気が狂いそうになる。ひとりなのは、やっぱりいやだ。これからも、みんなと未来を共有したい。たとえ、私を含めて『14回目』が始まったとしても。


「さてと、安藤くんもそろそろ復活するかしら? 先に戻って彼を起こしてくれる?」

「はい。それじゃあ」


 たったったっ






「……最後に、あなたとこうして一緒に過ごせてよかった。3月31日を過ぎれば、もう会えなくなるはずだから―――」

ここまでを第七章とし、登場人物まとめの後に、最終章(短編版後半加筆修正)となります。

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