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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第七章 彼らと彼女は、何かを期待していた
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38「神隠しの伝説?」(前編)

※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は、第七章(バレンタイン&年度末編)の2話目です。


最初で最後の前後編かな? 前後編にした理由は特にないです。書いていたら6000字越えたので分割しただけです(ヒドス)。

 ざっ


 ざっ、ざざっ、ざっ


 すーっ……


 すちゃっ


「うわー! 菜摘ちゃん、スキーうまーい!」

「そう? ありがと」

「すげーよなー。俺、ある周回で、冬の間ずっとスキーの特訓したことがあったけど、へっぴり腰は直らなかった」

「で、ナンパできなかったと」

「若気の……まだ青かった頃の周回時の気の迷いと思ってくれ」

「わかりにくいよ」


 今日は、学校行事としてのスキー合宿の1日目である。スキー自体は、小さい頃からお母さんと(・・・・・)何度もスキー場に行って慣れてるけど、学校のクラスメートと一緒に、というのは初めてだ。昔はどこの学校でも珍しくなかったみたいだけど、ここ数年はめったにないらしい。暖冬の影響という説もあるけど、


「それじゃあ、インストラクターの方々の言うことをよく聞いて、怪我のないようにね。私は、ふもとのレストランで待機しているから」

「「「「「はーい」」」」」


 ……引率する先生がとても辛いから、という説の方が有力らしい。ちなみにこれは1-Cのみんなから聞いた話ではなく、今こうしてそそくさと去っていく白鳥先生から直接聞いた話である。直前のHRで。


「白鳥先生も、辛いのかね」

「よくわかんないのよね。過去の周回で、インストラクターからはぐれた生徒を回収していた時もあったらしいから、滑れないわけじゃないみたいなんだけど」

「まあ、インストラクターを雇っているなら、非常時のために待機しているというのは正しいかもしれないね」


 非常時かあ。確かに、怪我しやすいしね。私も小さい頃は、たまに怪我をしていた。お母さんの指導がとても厳しくて、逆に骨折するほどのことはなかったんだけど。


 あれ?


「ねえ、ってことは、今回(・・)も同じ生徒がインストラクターからはぐれるってこと? 夏のドーピング発覚じゃないけど」

「……あっ」

「そういえば……いやでも、その話を聞いたのは一度切りだよな? しかも、初回の頃だったはず」

「あー、みんなでまとめた手帳、今持ってないんだよね。でも、うん、確か、2回目か3回目だったような」

「私の記憶でもそんな感じですね。もしかして、白鳥先生が事前に対処しているのでしょうか?」

「なるほど……あり得ますな」

「じゃあ、今そそくさと去っていったのも……」

「うわあ……」


 白鳥先生、影でどれだけ奔走してるんだろう。みんなの話を聞いていると、周回によってはヒドいことになっていたみたいだけど、それでも、こうして12回ループを経ても普通に……まあ、ある意味普通よね、仲良くしていられるのも、白鳥先生の苦労の賜物(たまもの)なのかもしれない。


「やっぱり、菜摘ちゃんのおかげかな、こうして白鳥先生を評価できるようになったのも」

「上から目線だなおい。残念美人とか言ってたくせに」

「それは柿本もでしょ!? まあ、あらためて、白鳥先生サポートを強化するべきよね。またみんなでアパートに遊びに行こうか?」

「え、あ……うん、そうだね」


 安藤くんのそこはかとない様子に気づいたのは、今いるメンバーでは私と鳴海さん……だけっぽい。柿本くんもそうだけど、湯沢さんも気づいてないっぽい。安藤くん同様、クラスでも割と中心的な感じなのに。


 ひそひそ


「あとで、安藤くんもフォローした方がいいかな?」

「大丈夫とは思いますけど……そもそも、白鳥先生の方がどう思っているのか、私には今も良くわかっていませんので」

「ああ、うん、そうね。やっぱり、手や口を出すのは無粋か。はー、以前もそう決めたんだけどなあ」

「菜摘さん、その……」

「……やっぱり、そうなのかな? でも、安藤くんには、うまくいって欲しいって思うんだよね」

「……菜摘さんも、なかなか複雑ですね」


 私自身、自分の気持ちがよくわかっていないわけで。なんだろう、この感じ?



 1日目が終わり、宿泊施設に戻る。ちなみに、宿泊施設はホテルの類ではなく、スキー場の近くのいわゆる合宿研修所である。大浴場で汗を流し、自分でシーツを整え、就寝の準備をする。


「うー、近くに温泉があるのになあ」

「まあ、いいじゃない。こうして、菜摘ちゃんと同室になったし!」

「そうね。菜摘さんって湯沢さんや鳴海さんといることが多いから、私たちが話す機会って少ないのよね」

「ねえねえ、菜摘ちゃんって、安藤くんと柿本くんのどっちが好きなの?」

「うえっ!?」

「それとも、松坂!? ものすごく積極的に断罪してたよね!」

「いや、それは柿本くんも同じだけど……」


 いきなりガールズトーク、しかも、私に関する恋愛話が始まってしまった。就寝前のお約束? なお、聞いての通り、スキーの時とは異なり、湯沢さんと鳴海さんは同じ部屋ではなかった。この部屋はもともと4人部屋のところ、これまでの周回では3人しかいなかったらしい。他のクラスとの都合上、ずっと同じ部屋割だったとのことで、空きのあるこの部屋に私が組み込まれたとのこと。


「え、えっと、安藤くんが、ちょっと気になるかなあ……」

「わー、やっぱり! ねえねえ、どんなとこが気になってるの?」

「え!? いやその、一緒にいて落ち着くっていうだけで、それ以上でも以下でもないというか……」

「少しだけ、菜摘さんに性格が似てるよね」

「そうかな?」


 そうかも、しれない。逆に言えば、それだけ、ということなのかも。


 その後、私の恋愛話があまり発展しないと判断するや、他の3人が過去の周回についてあれこれ話し始めた。同じく、恋愛話で。ちょ、ちょっと、勘弁してほしいかなあ……なんか生々(なまなま)しいんだもん。あれとかこれとか。ひー。



 スキー合宿の2日目。昨日は低い場所で練習していたのだけれども、今日は最初からリフトで高いところまで移動して滑るという予定だ。


「うう、高い……」

「ゆっくり降りれば大丈夫だよ」

「いや、ここまで急だと、ゆっくり降りるの難しくないか?」

「え? だから斜めに滑るんだよね?」

「それがなぜかうまくいかねえ……」


 昨日、練習したのになあ。


「というか、ちょっと寝不足でな」

「あら、柿本さん、珍しいですね。どうしたんですか?」

「いやな、他クラスで同室だった奴に、変な話を聞かされてな。その意味を考えていた」

「変な話?」

「このスキー場がある地方には、『神隠し』の伝説があるらしい」

「神隠し? 人が突然、消えるってこと?」

「ああ。それ自体はよく聞く話だけど、過去の周回では聞かされなかったのがどうにも気になる」

「そうなの!?」


 それは……確かに、気になる。この周回の一番の『違い』は、私が存在することである。でも、私がそんな伝説を話題にするよう、他のクラスの生徒に影響を与えたとは思えない。


「……もしかして、私以外にも、この『13回目』で新しく関わっている人……存在が、あるのかな?」

「「「…………!!」」」


 ざわざわ


「その発想は、なかった……!」

「だよね、そうだよね。こうして菜摘ちゃんがいるんだもん、他にいても不思議じゃない!」

「いやあ、安積さんのインパクトが強すぎて……え、安積さん、スティックを平行にしてなにするつもり!?」


 あはは、安藤くんにそんなことを言われるとは思わなかったなあ。あはははは。……やっぱり、気になるなんてのは気のせいだったんだ。うん。

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