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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第五章 彼らと彼女は、何かを頑張っていた
33/55

29「明日もきっと君に会えるから」

※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は、第五章(文化祭編)の5話目です。

 そして、文化祭三日目、最終日。今日は午前にクラス対抗のスピーチコンテストと合唱コンクールがあり、午後に出し物を再開、一般公開が終わる夕方から夜にかけて後夜祭となる。


「(・。・)」

「瑞希、昨夜から呆けているけど、大丈夫?」

「だ、大丈夫でございますですわよ、菜摘様」

「だから、その喋り方やめてって言ってるのに」


 瑞希には、午前の会場である第一体育館の席に早くから座ってもらう。今朝、学校来る時にも田島さんに乗せてきてもらったので、だいぶ早く到着しているのだ。まだなんかぼーっとしているけど、椅子に座っている分には問題ないだろう。


「やあ、安積さん、おはよう。いよいよだね」

「おはよう、安藤くん。合唱、みんなで頑張ろうね!」

「安積さんは、あんまり緊張してないんだね」

「そりゃあ、みんなであれだけ練習したから。安藤くんは緊張してるの?」

「実は、少し。僕たちは何度も繰り返しているけど、今回は安積さんの伴奏で盛り上がるかもしれないと思うと、ね」

「じゃあ、伴奏うっかり間違えないようにしないと」

「昨日の練習と今の様子を見てると、心配はないんだけどね」

「そう? じゃあ、とりあえず私たちも席に座りましょ」


 よーし、がんばるぞー。



 午前の前半は、スピーチコンテストである。1-Cの代表は安藤くんか柿本くん、もしくは松坂くんかな?……と、思っていたんだけど、意外な人がスピーチを行った。


「……ということであり、この国は『萌え』という感情に根付いた様々な産業を……」


 笹原さんだった。いやその、なんというか、クラスのみんなもよく『許可』したよね?


「いや、このスピーチ、実は市のお偉いさんが聞いててな」

「保護者の中に、地元の経済産業関係の方針を立案している人がいるんだ」

「素性は表に出してないけど、結果的に、年始の商店街が活気づいてねえ」


 はあ。


 ……はあ。


 コンテストの結果は、全てのクラスのスピーチが終わった直後に審査が行われ、発表された。


 笹原さんは、敢闘賞だった。……敢闘?



 いよいよ、合唱コンクールが始まる。実のところ、ウチの学校の文化祭のメインイベントらしい。なぜか、地元のマスメディアによる取材や撮影が行われている。てっきり、湯沢さんなどの1-Cの活躍が影響しているのかと思ったのだが、これは昔からの伝統らしい。やはりというか、この学校ってPR方面ではかなり特殊? 公立なのに。


 クラス順に合唱が行われ、そして。


<次は、いよいよ1-Cの合唱です。曲目は……なんと、フォルトゥーナの新曲、『Song for Tomorrow Morning ~明日もきっと君に会えるから~』です!>


 クラスのみんなと私は、既に壇上に上がっている。


 私はピアノの前で姿勢を正し、タクトを握る白鳥先生(・・・・)を見つめる。タクトが上がり、その動きに合わせ、鍵盤に指を添えて―――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 君はいつも、やわらかな微笑みを浮かべ

 何事もなかったかのように、声をかける

 他のみんなが、避けるようにしていても

 それでも君は、優しい言葉を奏で続ける


 僕たちの恐れ、嘆き、叫び、諦め、痛み

 君はそれを全て希望に変えてくれるから

 

 期待を胸に、星が煌めく夜空を見上げる

 明日もきっと君に会えると、そう信じて

 ここに捧げる Song for Tomorrow Morning  ※


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ♪~♪、♪♪♪、♪~

 ~♪

 ……♪


 ………………

 …………

 ……


 ん? なんか、観客席の方がしーんとして……


 わああああああああああっ


「はうっ!?」


 え? え? なんか、これ、合唱に対する反応じゃないよ!?


「おお……歓声だよ、拍手じゃなくて」

「いやあ……なんか、感無量だなあ」

「ねー。これまでだって、新曲だから注目はされたけど」

「この……なんだろうな、この、達成感」


 クラスのみんなは、これまでの周回での合唱と比べて、何か思うところがあるようだ。よくわからないけど、みんなが満足しているなら、私も嬉しい。



 だだだっ

 がばっ


「なっちゃん、よかった、よかったよおー!!」

「瑞希、おちついて」

「フォルトゥーナの新曲ってのも良かったけど、なんかもう、もう……!」

「ありがとう。でも、私は伴奏だけで、結局歌ってなかったんだけどね」

「いやいや、あの伴奏があってこそだよ! 広がりというか、深みというか、……はあああ」


 フォルトゥーナの大ファンである瑞希のお墨付きももらえたようだ。


「特に、あの歌詞のところが良かったよね。『恐れ、嘆き、叫び、諦め、痛み』。こう、ぞくぞくっとしてっ!」


 なにかが、台無しになった。

※曲の題名および歌詞は作者のオリジナルです。ちなみに、伏線でもありません。

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