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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第五章 彼らと彼女は、何かを頑張っていた
32/55

28「瑞希の趣味が今になって判明した」

※当初の1日1話更新予定を変更し、第27話より連続公開をしています。この回は、第五章(文化祭編)の4話目です。

 文化祭二日目。この日はほとんどトラブルが起きないはずということで、警備ローテーションをゆるやかにし、交替で文化祭巡りをすることになっている。


 私の言動に基づく『変動率』増大の懸念もあったのだが、そればかり気にしていてもしかたがないということで、一日目夕方の緊急HRにおける議論は落ち着いた。実際、二日目午前は『予定通り』の対応で終了した。ボヤが二件も発生(未遂)するなんてねえ。


 そして、二日目の午後。


「なっちゃーん!」

「瑞希、来てくれて嬉しいよ」

「私もだよ! イケメン達の相手ばっかで誘ってくれないと思ってたし!」

「はい?」


 かくかく、しかじか

 まるまる、うまうま


「んもう、私が『高校デビュー』だなんて」

「だってえ……なっちゃん、会うたびに綺麗になってるし」

「そう? ありがと」

「あと、『高校デビュー』って言葉も理解してるし」

「いや、それは……」


 クラスメート達に教えてもらった、と言うとまた誤解されそうなので、無難な回答をしておく。ネットで見たとかなんとか。


「あれ、でもそれじゃあ、私のクラスの人と一緒に回るのは嫌?」

「そんなことはないです! よろしくお願いします!」

「そ、そう」


 とことこ


「菜摘ちゃん、お待たせ。あ、瑞希ちゃんだっけ?」

「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」

「なーんだ、女の子かあ」

「瑞希……」


 湯沢さんと鳴海さんに失礼だよ? というか、瑞希の方が人付き合いひどくなってない?


 すたすた


「ああ、三人もここにいたんだ。瑞希さん、ひさしぶり」

「お、ゴールデンウィークの時にもいた娘だな」

「柿本、おすわり」

「なんでだよ!」

「えっと、僕らも一緒に回っていいかな?」

「喜んで!」

「瑞希……」


 まあ、いいか。ダメな理由はないし。それにしても、プールの時もそうだったけど、やたら安藤くんを見つめているよね? ダメだよ、安藤くんは大人の女性が好きなんだから……っていうと語弊ありまくりだから言わないけど。



 もぐもぐ


「へー、こっちの方ではフランクフルトを出す屋台が多いんだ」

「うん。学校の近くに、安くてたくさん扱う業務用量販店があってね」

「そのまま焼いてよし、ホットドッグにしてよし、刻んで焼きそばの具にしてよし。万能だな!」

「だから、ある周回では半分の屋台がフランクフルト出してたこともあったね」

「アレは辟易したわあ……最近の周回では、制限するよう事前に根回ししてるからそんなことないんだけど」

「根回し? 湯沢さんと柿本くんが毎回説得してるの?」

「いや、白鳥先生経由」

「なるほど」



 ひょいっ

 かつんっ


「輪投げ、ムズイな……」

「おかしいよね、私これ、ここんとこ毎周回やってるんだけど」

「『変動率』の増減に影響されやすいのかな?」

「いや……単に俺たちが下手なだけなんじゃね」

「でも、鳴海さんもハズしてばかりだよ?」

「ごめんなさい……」

「いやいや、謝らないで! しかしそうすると……」


 ひょいっ、すとんっ

 ひょいひょい、すとんすとん


「え!? 菜摘ちゃん、すごい、百発百中!」

「本当に……菜摘さん、どうやってるんですか?」

「え? 普通に台の動きに(・・・・・)合わせて(・・・・)狙ってるだけだけど」

「「「「あっ」」」」

「台が遠くにあるからわかりにくいよね。鳴海さんも、動く的には慣れてないってことかな」

「いや、でもこれって不正なんじゃ?」

「そんなことないと思うよ? 『的は固定されています』って宣言しているわけじゃないし」

「そう……なのか?」



 ……!? …………!

 …………

 ……? …………!!


「あー、俺らも演劇にすれば良かったか? 安積さんもいるんだし」

「いや、練習している時間があまりなかったかも。台詞も覚えなきゃいけないしね」

「衣装や舞台の準備も大変だよねえ。それなしにして、即興劇っぽくしてもいいのかもだけど」

「それだと、ファッションショーの周回の悪夢が……」

「裏コンテスト、とかやられそうだよなあ……」

「ああ……」


 !? ……!!!

 ……! ??……?

 ……!……!!……!!!


 ぱちぱちぱち


「面白かったよー! ストーリーってオリジナルだよね、これ」

「そうね。特に、桃じゃなくて、衛星軌道上のデブリってところはね。でもまあその、私たちは……」

「……ありがと、黙っててくれて」

「やっぱり、ネタバレはね」



 ♪♪♪、♪♪、♪!

 ……♪、♪♪♪♪、♪、♪……

 ♪♪♪♪♪! ……♪


 わーわー


「バンドの類だけは、やったことないんだよな」

「楽器方面は全滅だもんね、僕たち。安積さんを除いて、だけど」

「私、ある周回でちょっとギター借りて練習してみたことあったんだけど、練習にならなかった」

「走る方がよほど楽ってか?」

「うぐ……言い返せない。でも、柿本だって文字追ってた方が楽なんでしょ?」

「まあな。笹原には負けるけど」


 あんこーる、あんこーる


「ああ、ここで『フォルトゥーナ』の曲か。でも、初期作の……」

「うおおおおおおおお!!!」

「瑞希!?」

「眼帯! ドクロ! ベルト! そ・れ・が、己の†アイデンティティ†!!」


 わー、きゃー


「……これが、どうしたらあの新曲を採用することになるのかしらねえ」

「作詞作曲担当した人、プロの中のプロだよな……」

「あとで白鳥先生に紹介してもらわない? 純粋に、興味がある」

「8周目の時に断られたろ? あれきっと、別名義だぜ」

「隠さなければならない、理由があるってことね……」

「恥ずかしいだけじゃね?」

「包帯! 十字架! 鎖! そ・れ・が、お前の☆レゾンデートル☆!!」



「はー、堪能したー! この学校の文化祭、ウチのより勢いがあるものばかりですごいね!」

「瑞希は最後のライブだけが気に入ったんじゃないの? それまでずっと黙って見ていただけだったし」

「そんなことないよ? ただ、なっちゃん達の話していることがよく理解できなかっただけで」

「うっ……なるほど」

「ねえ、『周回』とか『変動率』とかって、結局どういう意味なの? もしかして、魔界用語とか!?」

「瑞希の趣味が今になって判明した」


 柿本くんと話が合うのかな? 口には出さないけど。


「さて、と。僕らはこれから合唱の練習をしてから帰るけど、瑞希さんはどうする?」

「あ、瑞希には先に自宅(・・)に行っててもらうことになってるんだ。今晩はウチに泊まってもらって、明日も文化祭に参加してもらうんだよ」

「なっちゃんの家、楽しみ! 中学の時は郊外にあって遠かったから行ったことなかったけど、親戚の家ってこの学校から近いんだよね?」

「「「「えっ」」」」


 あ、クラスのみんながなんか心配してる。でも、だいじょうぶ!


「そうなんだけど、クラスのみんなが言うには、住所だけだとわかりにくいみたいなんだ」

「そうなの? じゃあ、その練習が終わるまで待ってようか?」

「必要ないよ。お迎えをお願いしてるから」

「あ、それって、一緒に住んでるっていう、いとこの子? 小6だっけ」

「ううん、違うよ。ちょっと、駐車場に来てもらえる?」

「駐車場?」


 とことことこ


「あ、もう来てる。田島(たじま)さーん!」

「お待ちしておりました、菜摘お嬢様」

「ありがとう。この娘が瑞希です。よろしくお願いしますね」

「え? ……え?」

「田島さんは、おじさん家の専属ドライバーだよ!」

「へっ!? あっ、じゃあ、この黒塗りの車は……」

「おじさん家の車だよ。ここからなら数分で着くかな」

「……なっちゃんのおじさん、すごい人なんだ……」

「詳しいことは今晩話すね。じゃあ田島さん、よろしくお願いします」

「かしこまりました」


 がちゃっ

 ばたん

 ……ブロロロロロロロ


「……彼女も今晩、『洗礼』を受けるのか」

「柿本ほどじゃないんじゃない? あんたの場合は事情が事情だから」

「でもさ、泊まるんだろ? 訪問するだけじゃなくて」

「ああ、僕らよりいろいろとショックを受けることがあるかもだね」

「中学で3年間、一緒に学校生活送ってたらしいしねえ……」


 ん? 洗礼? みんなも瑞希の影響を受けたのかな?

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