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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第五章 彼らと彼女は、何かを頑張っていた
31/55

27「松坂くんを再度有罪にした」

※当初の1日1話更新予定を変更し、連続公開をしています。この回は、第五章(文化祭編)の3話目です。

 文化祭が始まった。物作り的な準備がほとんど必要なかった1-Cとしては、特に慌てることもなく当日を迎えることができた。なお、1-C生徒中心の国研とビデオゲーム同好会も部活動単位の出展は見送っている。他にあるとすれば、笹原さんの文芸部への寄稿くらいだろうか。『リテイクを三回求められた』とか言っていたけど。


「午後は、お父さんとはぐれないようにね」

「うん。ありがとう、お姉ちゃん!」


 たったったっ


「迷子はあの子で最後?」

「うん。長いこと独りぼっちにさせておかなくて良かったよ」

「過去の周回で何かあったの?」

「……体育館裏で、ひっそり泣いていたのを見たことがあって」

「そう……」


 もちろん、どの周回でも、最終的には親御さんと巡り合っている。でも、できればそれは避けたい。こういうのって、結構トラウマになることもあるんだよね。


「不謹慎だけど、あの子を早めに助けたことで『変動率』が大きくなることもあるはずだけどね。でも、以前助けた時は、年度末までに変動が確認できなかったかな」

「そっか……未来が大きく変わる可能性があっても、これまでのみんなには確認できなかったんだものね」

「……今度(・・)は、確認できるようになりたいかな」

「……そう、だね」


 ループを経験していない私には、単純にうなずくことしかできない。でも、ループ脱出がみんなの悲願なのは理解している。たとえ、ループによって多大な恩恵を受けることがあったとしても。


「この時期になると、変動率の変化の影響もあまり気にしなくなっているね。もっとも、今回は安積さんがいるから……」


 たったったっ


「おい、安藤、緊急事態だ! これまでの周回で発生しなかった暴力沙汰が発生している!」

「なんだって!?」


 えっ……!



 クラスメートのひとりに呼ばれてかけつけてみると、校門近くの屋台の前で、大学生らしき男の人がふたり、声を荒げながら腕を振り回している。その手は、ひとりは女子生徒の腕をつかみ、もうひとりは屋台のテーブルをつかんで倒そうとしている。そしてよく見ると、男子生徒が三人、地面に倒れてうずくまっている。


「やめて下さい! 警察を呼びますよ!?」

「へっ、今から110番しても間に合わねえよ。ずっとここにいるあんたらと違ってな!」

「おう、あんたも結構美人じゃねえか。ちょっくら付き合ってくれよ、なあ?」

「白鳥先生!?」


 男の人ふたりに抗議をしていたのは、白鳥先生だった。周囲には、他にも警備を担当していた1-C生徒や何名かの先生もいるのだが、近づこうとすると迷いなく殴りかかったり足で蹴ろうとしたりして、なかなか近づけない。それでも取り押さえようとして突っ込んだのが、うずくまっている生徒達なのだろう。


「おい、やめろ! 警察は既に呼んでいる。大人しく……ああっ!?」

「あんだあ? まだ、楯突くやつが……あっ! ようやく見つけたぜ!」

「おう、確かにこいつだ! そんで……ひゅー、この女も一緒じゃねえか!」

「お前が聞いた『噂』通りだったな!」


 あっ……流れるプールでぶつかった、あの男の人!


 えっ、それじゃあ……本来の目的は、私!?


「そうか、これまで起きなかったわけだ……」

「なに、ぶつぶつ言ってんだ? お前や他の連中には煮え湯を飲まされたんだ、借りは返してやる!」

「んでもって、そこの女はお持ち帰りってやつだ」


 ぶんっ

 がしゃんっ


 屋台の生徒たちの腕を放り投げ、テーブルもひっくり返した後、ふたりは私たちに近づいてくる。


「っ……安積さんに近づくな!」

「うるせえっ!」


 どがっ


「がっ……」

「安藤くん!?」

「ったく、邪魔ばかりしやがって……お前は後でもっと痛めつけてやる」

「ほら、来な!」


 男の人の手が、私の身体に近づく―――



 すっ


「うおっ!? 急に()けやがっ……」


 がしっ


「んっ!」

「ぐがっ!?」


 どすっ


(いて)っ!? いでででででで!」

「おとなしく、してもらえませんか?」

「おい! なにしやがる!」


 だっだっだっ

 ぶおんっ


 ひょいっ


「はっ!」

「ごはっ!?」


 ざざっ


「あぐっ……」

「うごっ……」



 ―――っと、なんとかなったかな?


 って、そんなことより!


「安藤くん、大丈夫!?」

「……」

「安藤くん、本当に大丈夫!? 頬を殴られた時、脳震盪(のうしんとう)にでもなった!?」

「い、いや、大丈夫、大丈夫だよ」

「でも、ぼうっとして……」

「そ、それは、安積さんが……」

「私?」


 私が、どうしたのかな? あの人達を護身術で(・・・・)取り押さえただけなんだけど。こう、向かってくる腕をつかんで背中にまわしつつ、その背中をひざで押さえて地面に押し付ける。そして、そのままの体勢で、向かってきたもうひとりに回し蹴り(・・・・)を食らわせる。


 定番だよね?


「あ、安積さん、強いんだね……」

「そう? お母さんに習ったやり方だったんだけど」

「えっ」

「お母さんは、もっと速くやれるはずだよ。私より身体が小さいのに、すごいんだ」

「そ、そう……」

「だから、たいしたことは……」


 ざっ


「「「「「うおおおおおお!」」」」」

「ひっ!?」


 三回目、三回目だよ、その突然の歓声! しかも、1-C生徒だけじゃなく、周囲の屋台にいた生徒たちも含めて、全員が全員叫んでる!? なんか、凄まじいんだけど!


 あ、白鳥先生だけは『やれやれ』って顔してる。


 えっと、ごめんなさい。



 その後、警察に連行される男の人達を見送りつつ、文化祭は何事もなかったように再開された。大きな騒ぎになったのに不思議な感じだけど、安藤くんを含めてさほど大きな怪我は負っておらず、殴られた生徒たちにしても、少し休んだら復活して続行を希望したので、そうなった。なんというか、タフである。


「いや、一番タフだったのは菜摘ちゃんだよね!?」

「すごかったなあ。生で見たかったぜ、安積さんの回し蹴り!」

「でも、良かったですね。菜摘さんは普段スカートが長いですから、中が見えるようなことにならなくて」

「そんな、私のは規定通りの長さだから、むしろ他の娘が……」


 ん? ちょっと待って?


「なんで、みんな知ってるの? 現場にいた1-C生徒って、数名だけだったよね?」

「「「「「あっ」」」」」


 その後、警備記録と称してビデオ撮影していた松坂くんを再度『有罪』にしたのは言うまでもない。

よし、この連載でもバトルシーンが書けた!(おい)

強くてかわいいは正義。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 擬音と台詞だけのアクションシーンでは、何をやっているのか読者は全く分かりません。 作者が思い描いている情景は、地の文としてちゃんと書かないと。
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