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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第五章 彼らと彼女は、何かを頑張っていた
30/55

26「いや、本当に、なにこれ」

 ピロン


【みき】@なつみ ふおおおおおお!

【なつみ】@みき おちついて

【みき】@なつみ これが、落ち着いてっ、おつちいてっ、てえええ

【なつみ】@みき フォルトゥーナの新曲なら、私も聴いたよ。いい曲だね

【みき】@なつみ そうなのよ! 今までの路線とはまるで違ってて!

【みき】@なつみ でもでも、今までのフォルトゥーナの雰囲気も出てて!

【みき】@なつみ あれ? 初演奏は今日のライブだったんだけど

【なつみ】@みき ちょっと、ツテがあってね。先に聴いてたんだ

【みき】@なつみ ……もしかして、前のライブの時に知り合ったとか?

【なつみ】@みき え? 誰と?

【みき】@なつみ なんでもない。なんでもないよ……


 瑞希からの怒涛のフォルトゥーナ愛のメッセージが届いたと思ったら、急に収束した。なんだろ、何かマズいこと言ったかな?


 なお、『ツテ』があったのは嘘ではない。他ならぬ、白鳥先生だ。ゴールデンウィークの時にショッピングモールの音楽ショップで見かけた、白鳥先生と一緒にいた男の人。同年代っぽかったし、てっきり、お付き合いしている人かと思っていたのだが、なんのことはない、『フォルトゥーナ』のボーカルだったのだ。あの音楽ショップは事務所がタイアップしている店で、そこで合流して話をしていたという次第だ。


 当時のボーカルはバンドのマネージャみたいなことも兼ねていたらしく、湯沢さんなどのマスメディア対策と並行して、文化祭での曲使用をあの頃から(ほぼ無名の時に)打診していたらしい。もちろん、その当時までの曲を想定したものだったが、明日にも新曲使用をねじり込む(・・・・・)とのこと。明後日にはピアノ伴奏を含む合唱練習ができる見込みである。


「周回維持のための人脈づくりもすごいことになってるのだろうなあ。これが、白鳥先生が12回ループで極めてきたこと……なのかな?」


 もしかすると、いろんなことを犠牲にしてきたのかもしれない。いろんなこと、いろんなもの、いろんな……人を。


「……安藤くんは、知ってるんだよね、たぶん」


 今の私には、そのことについて何か関わることはできそうにない。せめて、白鳥先生や安藤くんが維持してきた『舞台』を100%活用できるよう頑張るだけだ。クラスのみんなと一緒に。



 そんな想いを抱きながら、文化祭の準備を進めてきた私であったのだが。


 ざわざわ


 パシャパシャパシャ


「きゃー! 安藤くん、こっち向いてー!」

「おお、湯沢も、陸上をやってる時とはまた違った魅力が……」

「柿本くーん、湯沢さんと腕組んでー!」

「おい、ビデ会の持ってるあれ、最新鋭のビデオカメラだぞ!」

「笹原さんはあはあ」


 通り過ぎる生徒の十人中十人が私たちを振り返り、遠目で見つめたり、黄色い声を上げたり、歓声を上げたり、スマホカメラのシャッターが鳴り響いたりしている。他クラスはもちろん、他学年の生徒も含めて。しまいには、先生方もそんな反応の中に混じっている。


 なにこれ。


 いや、本当に、なにこれ。


「下見を兼ねて、準備状況の様子を巡回しているだけなんですけどね」

「それにしたって、見世物感がハンパない……」

「あら、菜摘さんもそういう感想を言うようになったのですね」


 腕章を着けた1-Cの面々が、文化祭準備の進む各クラス、各会場の近くを整然と歩いていく。整然、といっても行進しているわけではなく、ゆっくりと、周囲を見回しながら、揃って歩いているだけである。服装も、いつもよりきっちりさせてはいるが、普段の制服である。笹原さん謹製の腕章も、さほど目立つわけではない。デフォルメされた剣と盾に、校章が小さくプリントされていて……何かの作品のマークらしいんだけれども。


「鳴海さんは、部活の大会とかで慣れてるのかもしれないけど」

「そんなことありませんよ。でも、ほら、手を振って下さいな」

「え? こ、こう?」


 すっ


「「「「「おおお……」」」」」


 あ、なんか静かになった。


「さすがですね、菜摘さん。みなさんをきっちり魅了されています」

「へ?」

「抑止力にもなりそうで、期待できますね」


 抑止力? それまでの反応がすっと消えたような雰囲気になったのが? わからない……。



「安藤、モテモテだったな。1-C男子の中ではダントツだな」

「これまでの周回でもそうだったから驚かないけど、そういう意味では、菜摘ちゃんがすごいね!」

「安積さんも別の意味で驚かなかったけどな。いやあ、安積さんのおかげで、今までになく楽しめそうだよ、文化祭」

「おかしいよな。雑用ばかりの仕事みたいなものなのに」

「でも、各会場で何が起こるかだいたい把握してるから楽だと思うよ?」

「ボヤ、迷子、ケンカ、停電、……結構、いろいろあった(・・・)な」

「でもよ、今まではわかってても見過ごすしかなかっただろ?」

「そうなんだよ。結局クラスの出し物にかかり切りになるから、予防できてもほんの一部で」

「今思うと、みんなが不登校の周回でまとめて調査しといて良かったよ」

「「「「「その節はすまんかった」」」」」

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