03「……みんな、スタイルいいんだね」
新規挿入分です。次回も新規の予定です。
今日は定期健康診断の日だ。身体測定も併せて行われることもあって、一日まるまるをそれらに充て、授業は行われない。内容が内容なので、こればかりはループは関係ないな……と、思っていたのだけれど。
「うふふふ、安積さん、どう? 私達」
「……みんな、スタイルいいんだね」
「でしょでしょ!」
「え、それもループと関係あるの!?」
朝の決まった時間に、他の女子クラスメートと更衣室で一斉にジャージに着替えたのだが、その、出るとこは出て引っ込むところは引っ込む、ナイスバディなお姉さん達ばかりとなっていた。ウチのゆったり目の制服ではよくわからなかったのだけれども。
……はて、最初の体育の時は、そんな様子はなかったよね? たとえば、今話しかけてきた湯沢さんはもっとぽっちゃり、鳴海さんはどちらかというとスレンダーだったような。それが今はみんな、ぼんっきゅっぽっ、って感じで。
私? どこもかしこもすっきりしてますが、何か。ぺったん、ぺったん。
「安積さんにも、後で教えますね。効果的なダイエット法と食事」
「いやあの、効果的と言ったって、ループ開始からまだ2週間ほどだよね? いくらなんでも」
「あと……」
むぎゅっ
「きゃっ!?」
「ここを……こう」
「そして、こうね」
「んっ……あれ?」
詳細は省くけど、ある部分の寄せて仕舞う方法とか、背中から腰にかけての姿勢とか。とにかく、いろんな『見せ方』を、周囲の娘たちにテキパキと指導された。もちろん、雑誌とかで既に見た方法が多かったけど、なんというか、私の体型に合わせて的確、かつ、手際が良いのだ。
「さて、どうですか?」
「わあ……」
更衣室の壁にひとつだけ付いている鏡を見て、思わず感動した。これが私のスタイル? みたいな?
「ループの中で、プロ級のテクニックをこれでもかって身につけたからね! それも、あらゆるタイプの!」
「もちろん、元がないとどうにもなりませんけど、ぜい肉と思っていたものも、適度なスタイル維持には必要なのですよね」
「っていうか、モデルとかアイドルも、プロにやってもらってるよね、こういうこと」
なるほど……。
でも。
「でも、なぜこれをもっとはや……じゃなかった、今教えてくれたの?」
「それは……ねえ」
「そう……ですわねえ」
?
「と、とにかく、後で美容トレーニングとかも教えるからね、楽しみにしてて!」
「うん。ちなみに、トレーニングってどんなの?」
「んー、とりあえず、腕立て伏せ10回を毎日3セット?」
「えっ」
◇
体育館で男子クラスメートと合流して、出席番号順に身長や体重、座高とかを測っていく。この学校では男女混合で測定するのかー、ちょっとはずかしいなあ、と思っていたら。
「お、みんな、今回もナイスバディだな。ジャージだとよくわかるぜ」
「だな。眼福眼福」
「ちょっと男子ー、あけすけ過ぎ。今回は安積さんもいるんだから気をつけてよ」
「あ、しまった。ごめん、安積さん」
「えっと……うん、気にしないで」
というか……男子達も鍛えてるよね、たぶん。あ、あんまりまじまじと見れないから、ちらっとだけだけど。うん、ちらっとだけ。
それにしても、やっぱり12年も同じクラスだと、男女間でも仲がいいんだなあ。ちょっと、仲が良すぎる気がしないでもないけど。後で、安藤くんあたりに聞いてみようかな。
「はい、みなさん、次は体力測定ですよ。……言わなくても、わかってるわよね」
「「「「「はーい」」」」」
担任の白鳥先生が、ずっと喋っていた私達を注意して次の測定を促す。
「あれ? そういえば、白鳥先生も……」
「ダメですよ、安積さん。それに触れては」
「そうそう。1セットだけで4日後に筋肉痛とか、残念過ぎる」
「いいから、早く行きなさい!」
たとえ何度ループしても、どうにもならないことがあるようだ。
すみません。短編版から入った人には『ちがう、そうじゃない』かもしれません(言い訳)。