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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第四章 彼らと彼女は、何かを繰り返していた
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22「好きっていうか、あんまり来たことなくて」

 今日は、弓道競技の全国大会がある日だ。会場が地元から比較的近いということと、同じ会場で他の高体連決勝も実施されるということで、ウチのクラスだけでなく、他のクラスや学年の生徒も合わせて応援に向かった。もちろん、最注目は鳴海さん率いる弓道部の試合なのであるが。


「鳴海が率いる、か。安積さん、言い得て妙だな」

「あ、いや、そんな感じかな、と思って」

「結構早い周回から率いていたものな。一年なのに」

「そういえば、他の学年の先輩は何も言わないの?」

「聞いたことないなあ。団体戦中心だからかな」


 確かに、弓道といえば団体、というイメージがある。確かに個人戦もあるはずなのだけれども、当事者というか弓道の世界以外はあまり知られていない感じがする。私が詳しくないだけかもだけど。


「一説には、オリンピック競技じゃないから、というのがあるね」

「ああ……オリンピックって、個人競技が有名だよね」

「アーチェリーとかね。あちらは個人戦の方が歴史があるらしい」

「鳴海さんも、アーチェリーに転向したら目立つのかな?」

「どうかな? 確かに鳴海は最終的に(・・・・)超高校級と呼ばれるようになるけど」

「それっきり……で、リセットされると?」

「まあね」


 なるほど……。でもまあ、評価されるのは確かだし、鳴海さん自身も団体戦に力を入れているみたいだし。それはそれでいいのか。


 学校が手配したバスに乗りながら、クラスのみんなとそんな会話を繰り広げていく。白鳥先生はともかく、運転手さんは話の内容がちんぷんかんぷんだったことだろう。



 ザッ


 ススス……


 カチャッ


 ………


 ヒュッ―――ストン


 ヒュッ―――ストン


 ………


 ヒュッ―――ストン


 ………


「うん、予定(・・)通りだね。ほぼ皆中」

「鳴海さんだけでなく、他の部員もってのがすごいね」

「強化メニューのアドバイスもあるけど、鳴海がお手本として引っ張ってるってのもあるかもな」

「ああ、目の前で実現されれば『私にもできるかも』って思わせるっていう」

「鳴海さんは新入生でもあったからね。一応、中学からやっていたみたいだけど、知人つながりで個人的にやっていただけだそうだから」


 これって、科学技術の研究開発でもよく聞く話だよね。実現できるか否かが不明の段階では、試行錯誤も相まって、ものすごく時間がかかるのだけれども、一度でも誰かが実現してしまえば、たとえ実現方法がわからなくても、『実現できるはず』と思って研究開発を続けるから、最初に実現した人々よりもずっと早く実現できてしまうという。


 もちろん、スポーツのそれとは経緯や構成が大きく異なるだろうけど、でも、『新入生がここまでできるなら、私にも』っていうのはあると思う。既に実力のある選手を引き抜いてチームに入れるだけで、他の選手もファンを含む周囲の人々も期待をする。スタンドプレーばかりじゃダメだけど、チームワークを大切にするなら、全体として良い方向に進んでいくことになるだろう。


「しかし、毎回思うんだが……俺たち、要らなくね?」

「大声で応援するような競技でもないしねえ」

「というか、会場自体も狭いから、クラスみんなで来たのは厳しいね」

「屋外は各種球技で使われているから……」


 そして、競技自体もすぐに終わってしまった。団体戦は何回戦かあるものの、それでも、である。表彰式もつつがなく終わる。もちろん、ウチの弓道部が女子団体優勝、鳴海さんも女子個人戦で優勝した。


「終わったな」

「終わったね。じゃあ、合流して、一緒にバスで帰りましょ」

「そうだな」


 ぞろぞろぞろ


「みんな、バスには速やかに移動してね。特に、安積さんは」

「え、私ですか?」

「ああ、そうかもね。白鳥先生、一緒にいてあげてもらえます?」

「そうね、その方がいいわね」

「???」


 よくわからないが、白鳥先生が私にぴったりとくっついて、バスまで移動していく。私は別に選手じゃないし、湯沢さんみたいにマスメディアで有名になっているわけじゃないんだけど。ん?



 夕方早くには地元に戻ってきた私たち。が、クラスとしてはまだイベントが残っていた。


「じゃあ、18:00に境内の前に集合ね」

「みなさん、今回も浴衣に期待していますよ!」

「松坂は、デジカメはもちろんスマホも没収な」

「そ、そんな!? 僕はただ、風景として撮影していただけで!」

「?」

「過去の周回で、こいつ女子を盗撮しやがって」

「いや、男子も撮影してたでしょ」

「それをプリントして他のクラスや学年に売りやがっただろうが!」

「ふうん?」

「ひいいいいっ」


 (省略)


「いやあ、この周回に安積さんがいてくれてほんっと良かったよ。僕らはどうにも馴れ合いが出ちゃってね」

「そうそう。俺もチケット転売の過去があるからどうにも強気に……うわああああっ」


 (省略)



 ぞろぞろ


「柿本って、バカよね」

「そんなことより、屋台を紹介してくれない? なんかもう、楽しくて美味しそうなのばかりなんだけど!」

「あら、菜摘さんは屋台が好きなんですか?」

「好きっていうか、あんまり来たことなくて。この時期はいつも日本にいないから」

「「「「「そのパターンか」」」」」

「パターン?」


 やだなあ、パターン化しているのはみんなの方でしょう? もちろん、いい意味でね。


「よし、じゃあ、鳴海、まずはあの射的屋を制覇してくれ!」

「あの、私、昼間に試合したばかりなんですけど……」

「うわあ、鳴海さんって銃も得意なの!?」

「銃というか、狙いを定めるおもちゃ程度でしたら……しかたありませんね」

「よっし! ……鳴海も、安積さんが絡むとチョロいチョロい」

「何かいいましたか?」

「いや、まて、鳴海、フレームで脇腹突くの地味に痛いから!」

「柿本、やっぱりバカね」


 そうして、射的屋を制覇した鳴海さんに、たくさんの景品をもらった。松坂くんは、思いがけずレトロゲームのソフトがいくつも手に入って喜んでいたけど……文化祭販売は許さないよ?

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