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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第四章 彼らと彼女は、何かを繰り返していた
23/55

20「鳴海さんと湯沢さんの特訓のおかげかな?」

 ピロン♪


【AND】@なつみ 明日の海水浴、準備できてる?

【なつみ】@AND できてるよ。穴場スポット、楽しみ

【XOR】@AND @なつみ 俺が発見したからな!

【しゆ】@XOR はいはい、遭難遭難

【XOR】@しゆ (。・・。)

【しゆ】@XOR ほめてないし

【NOT】@AND 今回もJT65はなしですかな

【AND】@NOT そうだね。JT9も期待薄だし

【なつみ】@NOT @AND ?

【AND】@なつみ あー、説明が長くなるから、現地でね

【さら】@AND 私は今回もパス。原稿優先

【AND】@さら ……了解

【はの】@AND ところで、白鳥先生は今回どうしますか?

【なつみ】@はの 白鳥先生も誘うの?

【AND】@なつみ ああ、別件なんだ。この時期特有の

【AND】@はの まあ、今回も行ってみるよ

【はの】@AND では、私も。@なつみ には後ほど私から伝えますね

【なつみ】@はの うん


 ……なんだろう、白鳥先生の、この時期特有のって。


 ピロン♪


「あ、鳴海さんからだ。……え?」



 ぴんぽーん


「白鳥先生ー、大丈夫ですかー」

「白鳥先生、鳴海です。今回は、菜摘さんも一緒ですよ」


 …

 ……

 ………


 がちゃっ


「あー……3人とも、来てくれたのね」

「大丈夫ですか先生、夏風邪(・・・)

「大丈夫。たぶん、いつも通り、明日には治ると……けほっ」

「ああ、寝て下さい。今回は、菜摘さんがおかゆを作ってくれるそうです」

「……ありがとう、安積さん」

「い、いえ」


 これまでの周回では、本日この日にクラスメートの多くが海水浴に行くと言うのが定番だった。柿本くんが国内でも無茶をした時にたまたま発見し、充実した海水浴場ながらも、今日が最も空いているとのこと。この検証だけで3周ほどかけたというから、相当の自信があるようだ。


 ただ、何をどうしたわけか、この日の白鳥先生は全ての周回で、必ず酷い風邪を引くのだそうだ。一周目はともかく、それ以降はわかっているのだから予防できそうなものなのだが、どうしても風邪になってしまう。ピークで38.1度、咳と身体のだるさがひどい。これが、毎周回のちょうどこの日に起こるとのこと。


「海水浴場が定着した次の周回かな、白鳥先生も誘うことにしたんだ。ちょうど週末だったし」

「そうしたら、これまでの周回を含めて、必ず寝込んでいたことがわかって」

「今回みたいに、サプライズのつもりで先生の部屋を訪ねたら……ってことで」

「そうなんだ……」


 話には聞いていたが、白鳥先生は本当に、学校近くのアパートの一室を借りて住んでいた。和室と洋室がそれぞれひとつ、そこに台所とバス・トイレ。あとは、押入れかな。


 それだけのスペースなのだが、家具は多いわけではなく、一通り片付いてもいるので、なんとなくひっそりとしている。やっぱり、私ならここで一人暮らしというのは厳しいかも。家事はともかく、住居スペースに他の誰もいないというのは寂しい。初めてまともに見るコタツは落ち着きそうだけど。


「おかゆ、できたよ」

「さすが、レトルトとは違うね。いい香りだよ」

「そうですね。さ、白鳥先生」

「ありがとう、みんな……あっ」


 ふらっ


「先生!」


 がっ

 すっ


「だ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫よ、安藤くん、鳴海さん。急に起き上がって、少しくらっとなっただけだから」

「でも、これまでの周回では、こんなこと……」

「気にし過ぎよ。タイミングの問題じゃないかしら。安積さんのおかげで、前より少し早く食べられるから」

「なら、いいんですけど。とにかく、おかゆを……」

「……」

「安積さん?」

「え? あっ、と……はい、白鳥先生。熱いですから、気をつけて下さい」

「ありがとう」


 ずずっ


「うん、おいしい。これは、しそ味かしら」

「はい。梅よりも、この方がいいかなって」

「やっぱりね。安積さん、本当にありがとう。また今度何かお礼をするわね」

「そんな、いいですよ……」



 その後、少し話をしてから、私たち3人は白鳥先生の部屋を後にした。これから最寄駅で他のクラスメートに合流して、目的地である海水浴場に電車で向かうためだ。


「白鳥先生、今回は大したことがなくて良かったですね」

「そうだね。いつもなら、僕たちが帰る寸前にふらふらしていたから」

「じゃあ、私がおかゆを作ってタイミングがズレたっていうのは、本当なんだ」

「そう、だね……」


 みーん、みーんみーんみーん……


 ………

 ……

 …


「ねえ、安藤くん。今日の海水浴なんだけど」

「なに、安積さん?」

「とりまとめ、私がやろうか?」

「……え?」

「菜摘さん?」

「安藤くんは、その方が……いいんじゃ、ないのかな?」


 みーんみーんみーんみーん……


 ……


「……お願い、できる?」

「うん、まかせて」

「ありがとう。じゃあ、また。鳴海さんも」

「え、ええ」


 たったったったっ……


 ………

 ……

 …


「びっくり、しました。私たちでさえ、仲良くなり始めた8周目前後に、ようやく気づきましたのに。今でさえ気づいていない人もいますけど」

「柿本くんとか?」

「ええ、まあ。でも、安積さんはどうして気づいたのですか? 安藤さんが……白鳥先生を(・・・・)好きなこと(・・・・)を」

「どうしてかな? 鳴海さんと湯沢さんの特訓のおかげかな?」


 正直言うと、直感でしかなかった。恋やら愛やら全く縁がなかった私に、そんなことがわかるはずもない。はずもないのだけれど……。


「まあその、風邪を引いて苦しんでいる白鳥先生を見る安藤くんの目が、なんとなく、ね」

「……その、安積さん。もしかして、安藤さんを……」

「え? うーん……そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない」

「……?」

「一緒にいて、落ち着くとは思う。話しているときとかね。でも、それだけかなあって」


 もしかすると、鳴海さんの言う通りなのかもしれない。私は、クラスのみんなの中でも安藤くんを特によく見ていて、だからこそ、今日の安藤くんの様子もよくわかったのかもしれない。でも、それだけなのである。


「こんなこと言うとマズいのかもしれないけど、白鳥先生もまんざらではないと思うんだよね」

「え!? それはさすがに私たちも……え、でも、本当に?」

「白鳥先生、普段はあちこち飛び回って私たちをフォローしてくれているから、気を張っているところがあるよね。でも、今日の白鳥先生は風邪で弱っていて、いつもよりも本音が出ているように見えたんだ」

「じゃあ、一緒に白鳥先生の様子も?」

「証拠があるわけじゃないけどね。でも……恋とか愛とかって、はっきりと証明するものじゃないんでしょ? 鳴海さんと湯沢さんが教えてくれたじゃない」


 客観的に観察して考察し、結論を導こうとすることはできる。でも、それが無意味で無粋であることもある。それが、私自身を含む、気持ちの問題であるならばなおさらだ。


「ある意味、菜摘さんらしいですね。……でも、それなら柿本さんにもまだチャンスがあるということでしょうか」

「柿本くん? え、柿本くんも白鳥先生が好きなの!?」

「……まだまだ特訓は必要のようですね」

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