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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第三章 彼らと彼女は、何かを考えていた
19/55

17「有罪、かな」

 『フォルトゥーナ』ヒット曲(予定)の伴奏が概ねできるようになったので、クラスメート達に聴いてもらうことにした。みんなも聴きたがっていたしね。でも、今のところはクラス以外で聴かれない方がいいわけで、学校とかではやはり迂闊に演奏できない。なので、スマホに録音して学校に持ってこようと思ったのだけれど。


「なら、いっそのこと、みんなで菜摘ちゃん()に行かない? 電子キーボードがあるんだよね」

「湯沢さん、菜摘さんとその御家族に失礼ですよ」

「あっ、ごめん。そうだよね、家に押しかけるなんて、普通は(・・・)迷惑だよね」

「安積さんが住んでいるのは親戚の家なんだろ? もっとダメじゃないか」

「まさか柿本にまで言われてしまうとは……不覚」

「なんでだよ」


 私抜きで話が一回転してしまった。


「えっと、たぶん、大丈夫だよ? おじさんとおばさんに、事前に言っておけばいいと思うから」

「そうなの?」

「うん。というか、友達が誰も遊びに来ないことを心配された」

「おお。なんか私達と同じ感覚だね、菜摘ちゃんのおじさんとおばさん」

「お前と一緒にするなよ。俺達はこの一年を何度も繰り返して、ようやくそう思うようになったんだからよ」

「むう、今日は柿本にいじめられてばかり」

「いじめてねえよ!」


 湯沢さんと柿本くん、なんか仲いいね? ん、そういうことなのかな? 私も次第に恋愛の話題についていけるようになった気がするし。気がするだけで違う可能性もあるから、あえて突っ込まないけど。


「まあまあ。じゃあ、お言葉に甘えて、今度の週末に安積さんの家に行くことにしようか」

「さすがに全員はないから、4人くらい? 競争率高いねえ」

「それなら早速、拙作のくじソフト(・・・)を……」

「おい、松坂、以前の文化祭でやったようなずっこい仕掛けは仕込むなよ?」

「な、なんのことですかな? あれは別になんの仕掛けも……」

「すごかったよね、あれ。『期待値』も微妙に調整されていて、くじに偏りがあるってことが一見わからなくて」

「え、なんのことなの、松坂くん?」

「ひいいいいっ」


 不正はダメだよ?


「うん、菜摘ちゃんのこの周回でのクラスでの役割がほぼ決まってきたね」

「ある意味、安藤さんよりクラス委員長に適任かもしれませんね」

「ああ、そうかもしれないね。安積さん、今からクラス委員長を交替する?」

「そんなことよりも、松坂くんは何をしたの?」

「筋金入りだった」


 松坂くんが過去の周回で仕込んだという仕掛けについて詳しく聞く。文化祭のビデオゲーム同好会の出し物として、くじに当たればなつかしのゲームソフトを進呈するというものだったのだが、実は、引く人の様子を見ながら当たり出現率を手元のスマホで遠隔変更できるというものだった。ちなみに、くじ1本引くのに100円を設定していたとのこと。


「で、お金を持っていてレトロゲームに関心のある大人の一般参加者が何度も引くよう誘導したと……」

「さ、参加賞として、同好会謹製のミニゲームアプリがダウンロードできるURLを渡しましたよ!」

「あれ確かに面白かったけど、どっちにしても、はずれ何度も引いたら割に合わないよね」

「あと、レトロゲームのソフトにしても、1本平均10円で100本ほどかき集めてきたものだろ? 何周回かかけて店を手広く調べてさ」

「どれだけ利益を得てきたのでしょうね。万単位じゃ効かないかしら」


 うん、『証言』も揃ったね。


「裁判長、判決を」

「有罪、かな。少なくとも、今回の文化祭では企画を中止しようね」

「既に集めた約36本のゲームソフトは……」

「クラスの出し物に参加した人に興味があればお土産、でいいんじゃない」

「著作権や税金とかの問題もクリアできるかな? 後から違法性を疑われても困るしね」

「安積さん、法律に詳しいの?」

「お母さんが、ね」


 そういえば、最近は連邦政府のプロモーションビデオ作成に携わっているって、お父さんから聞いたっけ。大変だなあ。


「なんだろう、菜摘ちゃんの御両親の仕事がループ現象並に謎に思えてきたよ」


 そんなことないよ?


「話を戻すけど、くじは僕が適当に作るから、次のHRで決めよう。安積さん、後で何人くらいお邪魔できるか教えてね」

「うん」

「じゃあ、今日のHR(・・・・)はこれでおしまい」


 ぞろぞろ


「……とてもじゃないけど、他のクラスには見せられないHRよね……」


 白鳥先生がため息を付いている。何かつぶやいていたけど、また何か気がかりなことがあったのかな?

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