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高1を12回ループしたクラスメート達が賢者モードになっている件  作者: 陽乃優一
第二章 彼らと彼女は、何かを楽しんでいた
12/55

11「それも極めないといけないの!?」

 ~♪

 ~♪~♪、♪~

 ……♪


「ここ、厳しいな……。やっぱり、ギターとかの方が弾きやすいのかな」


 近い将来の(・・・・・)『フォルトゥーナ』ヒット曲の伴奏をこなすため、前の自宅から持ってきていた電子キーボードで練習する。


 練習の前にコード進行から楽譜に起こす必要があり、それ自体は割と簡単にできたのだが、それを鍵盤楽器で弾くというのがなかなか難しかった。


「バラード調といってもポップな部分は結構あるし、そのまま弾こうとすると叩くような音になっちゃうし……少なくとも、間奏のところはピアノ用に編曲し直した方がいいかも」


 そして、キーボードで一通り弾けるようになっても、ピアノはピアノであらためて調整したり練習したりする必要がある。しかも、学校のピアノで練習するのは、たぶん『フォルトゥーナ』が曲を発表した後の方がいいのだろう。


 ピロン♪


【しゆ】@なつみ 今日、ひまー?

【なつみ】@しゆ 午後なら暇だけど、なに?

【しゆ】@なつみ 私のシューズ買いに行くんだけど、一緒にどうかなって

【なつみ】@しゆ うん、いいよ

【なつみ】@しゆ @はの は誘わないの?

【はの】@なつみ 私も行きますよ

【はの】@なつみ @しゆ 同じ方向の店で本を買うつもりです

【しゆ】@はの @なつみ じゃあ、午後イチに駅集合! どちらの店も駅前だから

【なつみ】@しゆ わかった

【はの】@しゆ わかりました


 伴奏の練習は急ぐ話ではないし、連休明けにクラスのみんなに見せる楽譜は既にできあがっている。ゴールデンウィークもまだ半ばだし、お誘いがあるならおでかけしよう。


 ちなみに、先ほどのやりとりはメッセージアプリで行ったことである。『しゆ』は湯沢さん、『はの』は鳴海さんだ。ふたりともユーザ名が本名と全然違うけど、曰く『ストーカーはもうこりごり』という理由らしい。……前の周回で何があったんだろう。怖くて聞けないけど。


 コンコン


「はーい」


 がちゃっ


「菜摘お姉ちゃん、今、いい?」

「うん、いいよ。なに?」


 この家に住む、いとこの芳月(ほうげつ)(つかさ)が私の部屋にやってきた。現在小学6年生で、私が居候している親戚、芳月夫妻の家の子である。私も司もひとりっ子だったせいか、家ではもちろん、ここに来る前からも割と仲良くしている。


「お姉ちゃん、今日の午後空いてる? 小学生だけじゃ入れないところに行きたいんだけど……」

「あー、ごめんなさい、さっき予定が入っちゃって。でも、どこに行きたいの?」

「……猫カフェ。同じ学校の友達と一緒に行きたいんだけど」


 猫カフェかあ。私も行ったことがないけど、小学生だけだとダメなところなのか。でも、そういう場合は普通、保護者同伴が必要で、高校生の私が一緒でもダメじゃないのかな?


 ……ということを、司に尋ねてみたところ。


「友達のお兄さんがバイトしているところだけど、同伴は高校生以上ならいいって」

「そうなんだ。ところで、なんて名前のお店?」


 猫カフェの名前と場所を訊いたところ、最寄り駅の近くだった。ネットでも評判が高い店であることもわかった。


「じゃあ、私の友達に、一緒に猫カフェに行けるか確認してみるね。さっきの予定って、その友達と駅前にお出かけすることだったんだ」

「ホント!? ありがとう!」


 がばっ


 ものすごく喜んだ司は、私に抱きついてきた。そんなに行きたかったんだ、その猫カフェ。確かに、ネットの店舗紹介ページには、かわいい猫がたくさん写っている。私もちょっと楽しみになってきたかな。



「ダメ! その店だけは、ぜーったい、ダメ!」

「え? なんで?」

「よりにもよって、あの店ですか……」


 駅前に集合した私達3人と、司とそのお友達の、計5名。湯沢さん、鳴海さんには、猫カフェの名前まではメッセージアプリで伝えてなかったので、集まった後自己紹介をしつつ、店の名前を伝えたのだが……猛烈な反対にあった。


「ネットで見た限り、良さそうだったんだけど……」

「それはたぶん、大学生を中心とした店評価でしょうね。全く……」

「えっと、どういうこと?」

「それはねえ……あ、お姉さん達だけで話してくるねー」

「ちょっと、こちらへ」

「え? え?」


 こそこそ


「はっきり言うね。あの店、ナンパ野郎の巣窟(そうくつ)

「え!?」

「猫カフェは主に女子に人気ですから、女子グループかカップルで来ることが多いんですよ」

「で、あの店はなぜか男子大学生ばかりバイト採用してるのよ。いや、なぜかじゃないね、店長が出身大学の後輩にばかり声かけてたから」

「衛生面の規制もあって、厨房スタッフは問題ないんですけど、接客の方が異様ですね」

「あのお友達の娘には悪いけど、お兄さんというのも、わかってて菜摘ちゃんを誘うよう誘導した可能性が高いね」

「司さん、でしたっけ? 菜摘さんのことを学校で話題にして、それが伝わったのでしょう」

「はう」


 えーと、つまり、最初から私目当て? なんというか……なんというか、である。


 ちなみに、なぜふたりがそこまで店の内情に詳しいかは追求しなかった。訊けば教えてくれたかもだけど、知らない方がいいと思ったからだ。うん。


「でも、どうしよ? あの子たちに本当のこと言えないし、今から帰らせるのも……」

「それは任せなさい! ちょっと遠いけど、安心安全、ゆったりできる別の猫カフェ知ってるから!」

「電車に乗って行く必要がありますけど、ちょうど駅前ですしね」

「いいの? 駅前近くで買い物の予定だったのに」

「いいのいいの、その猫カフェ近くにもいい店あるから!」

「偶然ですけどね。さ、あの子たちに伝えましょ」


 一時はどうなることかと思ったけど、なんとかまとまりそうで良かった。



 そうして、私達5人は猫カフェを堪能し、ついでに、買い物や食事も一緒に楽しんだのだった。結果的にはベストだったのかな。


「じゃあ、友達送ってから帰るね」

「うん、司もあまり遅くならないようにね」

「わかってるよ。じゃ、行こ、みなみちゃん」

「うん。お姉さん達、今日はありがとう」


 駅前で小学生ペアと別れ、私達3人も学校近くまで歩いてから解散ということになった。


「いやあ、菜摘ちゃんもだけど、小学生を変なところに連れていかなくて良かったよ」

「本当に、ですね。場合によっては、変なトラウマにもなりますしね」


 えーと、本当にどんな店だったのかな。やっぱり詳しくは訊かないけど。


「ところで、菜摘ちゃん。あの司って子だけど……小6、だよね?」

「そうだよ。一緒にいた娘もね」

「うーん、もう12歳前後ってことだし、猫カフェや買い物の時みたいに、あんまりベタベタしない方がいいんじゃないかなあ」

「どうして?」

「どうしてって……ねえ」

「そうですね。あの子も一応、男の子(・・・)なのですから」

「私も司もひとりっ子だし、弟ができたみたいでかわいいんだけど」

「かわいい、かあ。明らかに、男としての下心を感じるんだけど」

「えっ」


 そっ、そうなの!? 家でもあんな感じなんだけど……。


「あと、気づいていなかったかもしれませんけど、お友達の娘(みなみちゃん)の菜摘さんを見る目、明らかに嫉妬してましたよ」

「つまりあれだね、あの娘は司と仲良くなりたくて、菜摘ちゃんを引き離すためにお兄さんとタッグを組んだと」

「司さんも、あの娘を理由に菜摘さんとお出かけしたかっただけかと」

「えっ、えっ」

「今更ですが、菜摘さんには恋愛方面もじっくり理解していただかないと」

「遅かったくらいだね。今日はこの後、喫茶店で特訓よ!」


 それも極めないといけないの!? っていうか、喫茶店でなにされるのー!

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[一言] 12に飛ぶ直前に白鳥先生の呟きが見えて笑った
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