01「……13年目?」
先に投稿した短編を連載化したものです。最初の数話は、短編前半の分割+新規話挿入です。
「出席番号1番、安積菜摘といいます。家の都合で、隣の県から……」
………
……
…
「「「「「うおおおおおお!」」」」」
「ひっ!?」
高校の入学式の日、最初のHRで私が自己紹介を始めたら、クラスメート全員から歓声が挙がった。そして、担任の先生は涙を流していた。
ナニコレ。
◇
「……ループ?」
「まあ、信じられないとは思うけど」
私以外のクラスメート全員が私にだけ自己紹介するという奇妙なHRを終えた後、既に決まっているというクラス委員長、安藤くんから説明を受ける。他のクラスメートは、私達を取り囲んで興味津々な顔をしている。
なお、担任の白鳥先生は、未だに教卓で涙を流している。ちなみに、担任はこのクラスが初めてという女性教諭である。
「信じられないというか……何が何やら」
ループ自体は知っている。SFやファンタジーでは定番だし。でも、それが現実に起きていると言われたら、そりゃあ混乱もする。なにしろ、私以外のクラスメート全員+担任にそう言われたのだから。
「えっと、私以外、みんな同じ出身の中学とか……」
「うんうん、みんなで安積さんをからかってると思うだろうね」
「でも違うんだなー。というか、中学の頃って、だいぶ忘れちゃった」
「ですよね。なにしろ13年目ですから」
「……13年目?」
近くにいた女子生徒、湯沢さんと鳴海さんが補足するように言葉をかける。
「つまり、私を除いたこのクラス……1-Cの生徒と白鳥先生は、12年間、毎年同じ一年を繰り返していたと?」
「実際には、僕らから変化が出るよう行動したこともあったから、全く同じというわけでもないんだけど」
「でも、学校行事とか、もっと大きいこと……社会情勢とか地震とかは全く変わらなかったよね」
「だね。……そうそう、これを1週間ほど見てもらえれば割と信じてくれるかも」
そうして、安藤くんから渡された手帳には、向こう一年間の毎日の天気が書かれていた。1時間刻みで。
◇
1週間後。
「まだ信じられないけど……天気予報よりもはるかに正確だったし……」
「よしっ」
穏やかにガッツポーズをする安藤くん。周囲のクラスメートもうんうんと頷いている。
ちなみに、入学式から1週間、他のことでもびっくりさせられた。その最たるものが、実力テストの過去問。本来の意味のそれではなく、12回ループして覚えた……という問題と解答のセットを、クラスメート全員(もちろん、私を除く)で手分けして密かに作成したというもの。
「あー、でも、テストではそこそこに手を抜いてね? そうだなあ、多くて9割くらいの正解を目指して」
「どうして?」
「2年目のループの時、ヒドい目にあってねえ……」
なんでも、1-Cだけが全員どの科目も満点に近い点数を叩き出し、カンニングを疑われたらしい。しかも、新しくクラス編成された入学直後のことだったから、
「担任の私が疑われて……あの時は辛かった……ぐすっ」
ヒドい目にあったのは白鳥先生だったようだ。