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ウェポン・オブ・ロマンチック(5)

(エピソードあらすじ)ロマンのある武器を開発しようとして、なんやかんやで機動力を生かす者同士、レモアとグラスの模擬戦はグラスの圧倒という結果で終えた。ただ、それはグラスの教育的指導と脚本通りの展開、演出だった。


機動力を得意とする少女達の戦闘はスピーディである。そのため、短時間で決着が付いた。それでも内容は濃いモノであった。


特にハヤミやアキラにはリアルタイムでは内容を読み切れない。リプレイでようやく中身を理解していた。


実際、気がついた時にはレモアの存在は戦死扱いで戦闘エリアから消されていた。そして、その場に残っていたのはペイント弾で赤く染められた地面だけであった。


戦闘内容は上品な教本にはない、グラスが先輩達から受け継いだ戦法の披露であり、バーピック相手のユニークでアグレッサー的な戦法、戦術でもあった。


模擬戦の結果。グラスの圧倒的な勝利。シミュレータが出した戦闘の優勢度を示すスコアも『5:95』と常時、場を支配していたグラスに点数が入っており、レモアに一切の点数が入っていない。


ただ、単純なスコアでは『35:65』。これはグラスが戦闘指導に徹していたため、とどめが刺せる場面でも見送ったため、チャンスを生かし切れていないと判断され、大きく減点とされた。このスコアに関しては余り参考にはならない。


「さて、この結果をどう見るか」

ハヤミはアキラに尋ねた。スコアが示すとおりいえば、単なる惨敗だ。だが、長距離と近距離という元々想定されない状況での戦闘、そこを考えると勝敗は余り重要ではない。中身が大事になる。


「敗因はレモアが無謀に前へ行きすぎたことでしょうか」

アキラは先ほどの戦闘をそう評価した。

「そうだな」

ハヤミも同じ感想であった。


「実際、先の戦闘でも同じ状況になりがちであった」

レモアは機動力に自信があり、それを生かし、頼ろうとする。また、距離に問わず射撃能力も高いため、ファイターよりもマルチとして役割を与えられている。


ただ、新人であるレモアが、機動力を生かして前に出るのは、危険なだけである。先の戦闘では大規模であったこともあり、前に出ても結果的にサポート役にしか役が立たなかった。それがいいのか、よいのかは別だが。


「ともあれ、お前の指示や補助、各員によってサポートで生き延びたが、1人だけでそれらをこなすには経験不足。また、実績に裏付けされた直感が足りないな。その結果がこれだ」

敗因をハヤミはそう分析した。


「では、レモアは後方で守りに徹していたら勝てたと思うか」

「おそらく、それはないでしょう」

ハヤミの問いかけにアキラは即答した。


「レモアの性格もありますが、グラスは前に出ないといけない状況を作り出して、誘い出していたはずです」

今回の模擬戦でも何度とレモアは前を出た。むしろ、それだけグラスは前を出る機会を作り出していた。


「そう、装備などの特性を理解していれば、そういう状況は作りやすい。必要なのは状況をフォローする武器ではない。状況を味方に付ける情報と知識だ」

グラスがやりたかったことを口で説明する。最も、ハヤミには何度か同じことを立ち会ってきた。


グラスが新人の時だって、こうやって立ち会っていたからだ。そして、今と同じ結果で先輩に惨敗したのだったが。


「まあ、ロマンも悪くないが……」

事の発端である近接、射撃のロマンのある武器は、時間をかけて行われたバーピック対策の中でも何度か話題に上がってきている。


今も成立していないとおり、できなかった。正確にはいろいろな制約が多く、それよりもチームで役割を分担させた方がコストや運用面で効率がいいという話になった。


つまりはファイター、マルチ、アタッカーの役割を3人1組にしたチームの考えである。しかも、1人が行うよりも各自のサポートで何倍にも効果を上げることができた。無駄にロマンの武器に頼る必要はなかった。


特にターニャはそういった開発経緯を理解している。だが、ハヤミはターニャにはこのイベント、騒動に参加を禁止していた。その答えをしているからだ。


少女達も楽しみにしていたモノとは多少違っていたけれど、概ね満足なイベントであった。


とはいえ、満足できない部分は良くできた戦闘教材だったからだ。若手には参考になる戦いであり、ベテラン勢にもあらため考えることの多い戦いであった。


実際、少女達はこの試合は賭け事にはしていない。この結果は一部では経験、予測しており、そもそもハンデのありすぎだけに勝敗を賭ける試合としてみても成立していない。


賭けといっても、少女達の賭けるモノはお菓子や小物類であるが。


では、当の本人達は。シミュレータの戦闘から解放されても、しばらくは立ち上がれず、座り込んだままである。


シミュレータの結果は随時に反映され、体にも伝わってくる。だからといって、ダメージがそのまま体に反映されることやコアの使いすぎによる負荷による体に悪影響はないが、それを疑似体験しているだけに、仮想から解放されてもコアと脳内の処理が現実への対応が追いつかない。


一種の仮想酔いである。そのため、しばらくは仮想空間で何もせず休み、慣らしてから現実に戻ることになる。それでも仮想内の疲労はすぐに消えることはない。これも違和感なく現実への慣らしのためである。


だから、模擬戦で得た情報、振り返りを処理するにも一苦労。


何せ、レモアは満身創痍の死亡扱い。グラスもコアの制限解除による負荷と頭へのダメージなどで疲労と痛みに耐えている。優勢に勝利したとはいえ、決して優雅なモノではない。


それにこれだけ優勢に戦闘をしていたが、楽な時は一瞬たりともなかった。常にリスクは付きまとっていた。コアの負荷のかかり具合では意外にもグラスの方が上。それは観測や機動力に常に全力で使い切っていたからだ。


レモアの場合はただ、追うだけで全力を出している場面は少なかった。それに自慢のレーザーライフルを使う場面も少なかったし。ただ、ダメージだけはでかい。


ともあれ少女達にとって、戦闘でロマンチックなことは仮想といえど何一つないのだ。


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