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ウェポン・オブ・ロマンチック(3)

バーピックの戦闘に対して、ファミネイには3つの役割が存在する。ファイター、マルチ、アタッカーである。主としてファイターは接近戦で対応する者。アタッカーは後方から攻撃、支援を行う者。マルチはその中間で、かつ、状況によってどちらの役割もこなし、どちらも補う。


その中で変わり種のファイターがグラス・ウィズである。得意とする武器は2丁の短機関銃。接近戦を主とするファイターでは銃器を使う者は少なく、巨大な剣や槍などの接近武器を好む。


理由はマルチ、アタッカーの援護を受けるため、接近することに専念して、殴り合った方が効率がいいからだ。また、銃器では攻撃面積や弾切れなど制約もある。


ただ、機動力を攻撃の軸にする者は逆に銃器を好む。銃器が少数であるから機動力を得意とする者も少数なのだが。グラスはその中でも特化している。そして、戦闘方法だけでなく、とあることでも変わっているのだが。


短機関銃といっているが、アルミカンで展開されたサイズでは巨大である。自身の身長と同じぐらいの大きさで、砲身は腕の太さより少し小さいだけ。それでも展開した他の武器から比べれば、小さい部類だが。


ただ、それでも昔の兵器から比べれば、車両や航空機に付けられていた機関砲クラス。それが少女達には短機関銃と小型武器扱いである。


そんなグラスにレモアは今、悩んでいる武器の運用について相談するのであった。


グラスはレモアとは所属する部隊が違い、勤務時間が違う。だが、グラスが非番の時は大抵、食堂にいることは周知の事実なので、その時を狙えばいいだけである。


「なるほど、話には聞いていたけれど。そういう流れだったの」

グラスもこの計画には無理矢理話を聞かされていたので、概要は知っていた。そして、自身の実績から短機関銃を使うことを提案していた。


「とはいえ、この企画は私の思うような流れを完全に外れてしまったわ。その上、企画者だからと雑用もさせられるし」

試作でもそうだったが、その後の検証でもレモアが駆り出されている。機動力を生かしたいのに、重武装、アタッカーでのテストもさせられていた。


戦闘の役割はファミネイの得意、不得意で選ばれる。だが別の役割であってもこなすことは難しい話でない。ただ、その特性を生かし切れないだけである。


実際、レモアの役割はマルチ。得意なのは機動力であるが、他は割と器用貧乏で多様性の求められるマルチが役割となっている。


「そもそも、企画の名前が悪い。『ピナーカ』の由来を知っているのか」

これはレモアが話を持ち出した際に作られた計画のコンセプトを表す新武器の名前であった。今では企画名として使われている。


「神様の武器でしょう。決める際に検索して選んだのだから知っているわよ」

「そうよ。ただし、『弓』よ。文献ではその神様の持つ別の武器と混合されるようだけれど、そっちと勘違いしていたのでは」


「えー、何か光線とか出すとか、光の速さで飛ぶとか、破壊力がありそうだと思ったのに」

「何よ、その発想は」

グラスはレモアの思っていた発想に突っ込む。


「とにかく、企画名からすれば、コンセプトはズレていないわよ。弓、遠距離武器の名前なのだから」

グラスはそう語り、自分が用意した飲み物に口を付けた。


「それで私に相談事とは」

グラスの周りにはファミネイは寄ってこない。別に孤独を楽しんでいる訳でも、別に嫌われている訳でもない。


グラスから漂う香りがきついのだ。決して不快な匂いではないのだが、本来ない強烈な甘い臭いを漂わせている。


グラスは甘い物また、その香りを好む。ただ、通常の量では満足できず、また、それ無しでは生きていけないほど依存をしている。そのため、過剰に摂取した甘味から漂う香りが全身を包んでいる。また、今も現在進行形である。


たまに独自に作った飲み物をくれたりするが、美味しいことは美味しいのだが、薄めないと劇薬になりかねないほどの甘さである。


この性格というか依存症は治療も試みたのだが、どうしてもアイデンティティーと絡んでおり、甘み無しの生活では戦闘に影響が出てしまう状況だった。そのため、一応、依存していても大きな支障がないため治療は二の次となっている。


レモアも機動力を生かす先輩として、付き合いは多少あるので慣れているがそこまで不快ではないが、やはりきつい。


「それでこの企画ではレーザーライフル・バレルSMGが私としてはお気に入りなんですが……」

「まあ、駄目というでしょうね」

グラスはあっさりと答えた。


「短機関銃の提案は私だけれど、一撃必殺という観点で提案したから、実用性でいえば企画段階で却下されることは分かっていたわ」

「一撃必殺、それでいいじゃないですか」

レモアはその甘美な一撃必殺という言葉に酔いしれたいのだ。


「駄目よ。あくまで一撃必殺でも、敵が複数機の出現で考えた場合バレルSMGでどれだけ弾がもつ。そして、そういった状況で接近戦を仕掛けて、うまくいくケースは少ないでしょうね」

グラスはそこまで見通していた。何しろ、自分の得意とする武器、その特性を十分に理解しているからだ。


実際、バレルSMGの装弾数は少ない。コンパクト、軽量性を維持したためだが、レーザーライフルとの併用して、装弾数はバーピックを1体倒す程度しかストックされていない。アルミカンでリロードするのだが、それでも頻繁にリロードが必要となる。


通常の短機関銃の総弾数でも、それ単体で1体とおつりが来る程度。つまり、バレルSMGはおまけ程度の効果しかない。


「とはいえ、好評なのは中、近距離においては便利だから。サイドアームとして愛用者は多いからね」

ファイターは主として銃器を使う者は少ないが、別で持つ武器では距離の取れる銃器になり、軽量性から短機関銃を好んでいる。


また、銃器を主とするファイターも連射性、手数の多さから短機関銃を選択している。その愛用する者らが分かっているからこそ、バレルSMGは確実な実用性で好評であった。ただ、主としていないからおまけ程度の機能でも満足するほどに。


「それでもライフルと短機関銃の2丁同時で使いこなせば、同じことと特訓しているのだけれど……」

「それも無理ね」

グラスはため息交じりの少しあきれ顔で語る。その時、不意に甘い香りがレモアを襲う。グラスの口から漏れた香りだろうか。


「そもそも、火力を上げるために私は2丁持ちなんて、やっている訳ではないのよ。複数機相手にできるように、手数を増やすためよ」

太古の刀による二刀流にしても戦法は攻守兼用のバランスを取れた物で、2倍の攻撃力を得ようとして考案されたモノではない。


その後の「二刀流」というの言葉でも攻守兼用できる選手や相反する2つの技能持ちを指す言葉として使われている。


「それに制御が大変でしょう。力場の制御、火器の管理、アルミカンによる構成、その上、左右での別動作と、単純な二刀流はマイナスにしかならないわ」

少女達の武器はただ持っているだけでない。その巨大さゆえに維持だけでもいろいろな制御が必要となる。それらに戦闘が加わると簡単なモノではない。


「それに私は機動力で切り込みをかけて戦場を攪乱するから、どうしても撃破数は少ない。アシストの点では高評価だけどね」

2丁持ちは一撃必殺という観点ではなく、複数の敵を相手するのに手数を増やしてアシストをするため。機動力は攪乱のためで、レモアが考えている機動力とは少し違っている。


「まあ、この戦法が正しいというわけではない。自分にとって、うまく生かせるだけの話よ」

グラスはそう語る。確かにレモアもグラスの戦法は自分には無理と判断している。


「せっかく、2丁持ちという所でロマンある武器の参考になるかと思ったのに。これじゃ、余計混乱だわ」

逆にレモアにとっては、それら諸々の状況を一つでフォローできる武器こそが今、考えていることである。


グラスはそんなレモアを見て、ふと思った。

「じゃ、私と1対1で模擬戦をしてみない」

予想もしていなかった、いきなりの提案にレモアは目を丸くする。意図が読めないからだ。


「貴方が思う武器は、結局の所、貴方しか使えない。私の2丁持ちのように。むしろ、それが分かっていない今、武器の構想だけを先行してもただ、悩むだけよ」

グラスは自らの意図を話す。


グラスも自分の戦闘スタイルには悩んだ上でたどり着いた。その際、いろいろと先輩、姉貴分から教わったこともある。それをレモアから読み取って、今こうしてそれを真似している。


「機動力を得意とする者同士の戦い方を体験することで、少しはそれに参考になるのでは」

レモアはひとまず、その提案に乗ったが、その後、グラスはとんでもない条件を出した。


「あくまで勝ち負けを競う訳じゃないから、装備は自由でいきましょう」

接近戦を主とするファイターと、距離を置いても戦えるマルチではアドバンテージはマルチにある。この提案したグラスの方が不利になる条件である。


そもそも、ファミネイ同士の模擬戦は3人1組で行われる。役割によるアドバンテージを平均化するためもあるが、戦闘でもこれで1チームとして構成するからだ。それでも、1対1での能力を競う場合は同装備で行われる。


グラスがいうように勝ち負けを競う意図がないしろ、装備が自由では下手をすれば一方的な戦闘になりかねない。いつも通りグラスが2丁の短機関銃で挑んでくれば、レモアはアウトレンジから攻撃すればいいからだ。


なら、グラスにはそのアドバンテージを覆す秘策があるのだろう。それはレモアが望むロマンといえるかもしれない。そう思うと心がワクワクとしていた。


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