バーピックの解析事情
「検証用に作ってみましたが」
ターニャが皆に披露しているのは、バッテリーカー。
あのゴーレム、アトラースが残したバッテリーの一部を使っての作られた車である。この広い格納庫の中で走らせるには十分な速度が出ている。
「しかし、原理は簡単でも、それを理解するのには結構手間ですね」
実際、コアで作られたエネルギーは電気では無い。そのため、バッテリーを直に今の機構に組み入れる事は難しく、そこで取り入れられたのは電気で動くモーターである。
だが、原理は今では風化した知識。いくら単純であっても、文献で残っていても、誰も教えてはくれない。そして、モーターにしても作られてはいない。
アルミカンという優れた技術は構造、材料を知っていれば、その材料があれば作り出す事は可能であっても、その構造を真に理解するには骨が折れる事であった。
今回、原理、構造を理解して作ったのはモーターとその制御回路だけで、バッテリーは流用。もっとも、このバッテリー自体はバカピックも流用したモノ。
車としての部分は今使われている機構を必要最低限付けた車輪の付いた台車に過ぎなかった。これは重さや動力のロスを抑えるためでもある。
「様になっているじゃないか」
ハヤミは感心する。
バッテリーカーには負荷として荷物が積まれているが、それでも何の問題なく動かせている。速度も変わらず動いている。
「しかし、バカピックをこれで動かせといわれても理解できませんが」
あくまでこの検証はバカピックがバッテリーで動くか、という疑問に対するモノ。
あのアトラースはおそらくタキオンエンジンという無限の動力無しで、このバッテリーの力を使って、街を運んできた。しかし、今回作り出したのはモノを運ぶ程度の車。
置かれている荷物は1トンにも満たない軽量で、この程度はファミネイでも簡単に持ち運びが出来る。それにこれ以上の重さになると効率は下がり、さらにそれ以上は動かなくなる。
確かにの全バッテリーの一部だけとはいえ、今回の検証で得たデータでもその全体のエネルギー量はそれほど大きな力では無い事は判明した。
結局の所、今使われているコアよりも低容量で低出力と判明しただけで、疑問の検証にはまだ謎を残すだけであまり意味が無かった。
「それに、この程度の事は」
ターニャは何かの操作機器を動かし始めた。バッテリーカーに載せられた荷物は、宙に浮き、移動して、地面へと置かれる。
これは牽引ビームである。
重力操作や分子自体に働きかけ浮力を得るなど、その原理はいくつかあり、今、格納庫で使われているのはファミネイ同様、特殊な力場を利用する方式である。
今の時代にとっては当たり前の技術で、牽引ビーム自体は昔から使われて効率の良い方式に入れ替わっている。
「効率よい手ならいくらでもあります」
それでも、アキラにとってはバッテリーカーも牽引ビームのどちらも見慣れていない光景だけに興味津々であるが。
「それでは検証以前に、考えが完結しているのでは」
ハヤミがその事を指摘する。
「温故知新とでもいうのでしょうか。今回の検証は私自身の知的好奇心は満たされましたので意味はありますし、多少は見えてきたこともあります」
「ほう、それはなんだ」
ターニャは黙った。だが、視線だけは何かを訴えていた。
「まあ、考えがまとまったら答えてくれ。それよりもこのバッテリーカーはどうする。このまま使うのか」
「一応、バッテリーの素材は希少性が高く、また、エネルギーの補充も独自ですから、最低限だけ部品にして素材とします」
実際、荷物を運ぶには便利であっても代用品がある中では、規格が違う車としてはいささか不便なモノでしか無い。
なにより、昔は地球全体で見れば集めやすいモノであったが、バカピックによって行動範囲が制約された今の人類にとってはバッテリー出使われている素材はレアなモノであった。
それを無理してまで使うことは無理である。
「まあ、過去から何かを学ぶのも悪くないか」
ハヤミはなんだかんだで、そうまとめた。
だけれども、アキラにとってはいろいろな経験が少なく、年頃の男の子の様に働く機械というもの自体に興味が尽きることは無かった。
そして、それを説明するファミネイ自身もそんなアキラの反応に興味は尽きなかった。




