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疑心暗鬼もほどほどに  作者: トロトロのトロロライス
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壁や天井などに亀裂が入っている廃墟。


「・・・・・そいつはどこにいるんだ」


「いや~それが逃がしちゃって」


そんな廃虚で騎士のような恰好をした者が十一人。ある者は椅子や机に腰をかけ、ある者は壁によりかかっている。


「・・・・・・ふざけるな」


「だから~途中で邪魔が入っちゃってさ~。それにあまり見られるのはよくないでしょ~」


先程から陽気な声で笑いながら話しているのは金髪の青年。だがその笑みはどこか不気味で目をそらしてしまいたくなるような笑みだった。それに比べ他の者達は重々しい表情で二人の会話を聞いている。


「・・・・・・・・・」


「信じていないって顔だね。まあ、いいや。それで何がお望み?」


「ちっ・・・・・・二日以内にそいつらをつれこい。殺しても構わん」


「え~弱い者いじめは好きじゃないんだけどな~」


「・・・・・・どの口が言う」


「も~ひどいな~。でも本当に好きじゃないんだよね~・・・・・・・弱い物(・・・)いじめはね」



青年の顔はもはや笑みとは程遠い、そう獲物を見つけた獣のような、そんな不気味な顔だった。



******



「・・・・・・・・」


「レオさんはどこか行きたいところはないんですか?」


俺とシェーレは森の中を歩いていた。


「・・・・・・別に」


先日の事があるので一人で行かせるわけにはいかない。だから今日は一緒に付き添いとしてついてきたのだが。


「もう、遠慮しなくていいんですからね」


どこかおかしい。いや、昨日と同じように明るく活力に満ち溢れているように見える。だがあれほどの事があった後なのにこれほど元気というのは逆に違和感を感じる。


「・・・・・最初は肉屋さんに寄りましょうか」


「・・・・・・・・・」


それに何故か歩く足が速いような気もする。



「・・・・・・・・」


そして少し先に街が見えてきた。こちらは昨日と変わらず大勢の人でこみあっていた。だが俺達に気が付くと


「・・・・・・あ、あいつらは・・・・・!」


「・・・・・きゅ、吸血鬼?!」


道行く人は足を止め、店の人は店の戸を閉めてしまう。子を庇う母親、逃げ惑う人々。そんな光景を眺めながら俺とシェーレは立ち尽くしていた。シェーレ自身もこうなることは覚悟はしていたのかもしれない。


昨日のあの時人々はなぜか全員怯えるような顔をしていた。それも刃物を振り回していた金髪の青年でもこの俺でもなく、シェーレを見て(・・・・・・・・)


「・・・・・・・」


するといきなり何処かから石のような物が飛んできた。もちろんシェーレの方に。


それがシェーレに当たる前に掴み取り投げた奴めがけて投げようとする。


「・・・・・・・レオさん」


だがそれを止めるようにシェーレがそっと俺の服の裾をつかむ。その手は小刻みに震えていて、それでも強くつかんでいた。


「・・・・・やめてください」


ふと彼女の顔を見る。それは今まで見たことないほど暗く悲しさに満ち溢れていた。瞳には今にも決壊しそうなほど涙があふれている。


「・・・・・・・・帰るか?」


俺がそういうと小さくコクッと頷き今度は俺の手に自分の手を重ねようとしてきた。俺はそれを振り払うように背をむけ先に歩き出す。


「・・・・・・行くぞ」


「・・・・・・・」


それでもすぐに追いついてくるとまた手を重ねてきた。だが今度は握ってきた、握られる手が痛いほどに。俺はそれを握り返しこそしなかったが、振り払わずにそのままにしておいた。


しばらく歩くと街は見えなくなり、罵声も聞こえなくなる。辺りはまるで墓地のように重く静まり返る。だがその静寂は長くは続かなかった。


「・・・・・・雨」


あっという間に辺りは水浸しになり、雨が木々や地面を強く打つ音が耳に入ってきた。シェーレもすっかり濡れてしまい、いつもは眩しい銀髪も輝きを失っている。


俺は握られた右手を振り払う


「・・・・・・・あっ」


そして着ていたコートを脱いで頭からかぶせてやった。あまり水は通さない方なので多少は濡れないで済むだろう。まあ既に結構濡れてしまっているのだが。


遠慮して返してくると思っていたのだが、彼女は少し驚いたような顔をしただけでコートを取り払おうとはしなかった。というかコートを頭に被ったまま袖に腕を通しだした。それでも全体的に身体の小さいシェーレには大きすぎるようで、足よりも長い裾は水に浸り、彼女の小さい手は袖の半分ほどまでしか通っていない。


「・・・・・・」


「・・・・・・・あの」


「・・・・・・」


「・・・・・・すいませんでした」


何のことを言っているのかわからない。確かにさっきの出来事は不愉快に感じた。だがそれはあいつらが悪い訳で彼女が謝る理由なんてどこにもない。ましてや俺なんかに。


すると左手をまたもや握られた。そんな雨で濡れ冷えた小さな手は


「・・・・・・・・」


氷のように冷たかった。




******




やっぱり慣れることのないベットの感触。窓から差し込み部屋をうつすおぼろげで冷たい月の輝。肌に触れる冷たく淀んだ空気が中々寝かしてくれない。



「・・・・・・」


あの後、豪雨の中なんとか小屋まで帰る事ができた。だがその頃には靴や服は完全に水でぐしょぐしょ、体は体温が感じられないほど冷え切ってしまっていた。その後はシェーレ俺の順番で風呂に入り、簡単な食事を取った。そして今はそれぞれの部屋で休んでいる。


「・・・・・・」


休んでいると言ってもベットで横になっているだけ。結構冷え込んでいるというのに俺が被っているのは一枚の薄い布。今日の豪雨のせいで丁度外に干していた服やタオル、さらには布団までもが濡れてしまい使い物にならない状態になってしまった。一枚だけ干していなかったのは不幸中の幸いだったのだが、それもシェーレが使い俺には薄い布が一枚。正直眠れる気がしない。気は進まないが何枚かの服にでも包まって寝るとしよう。そう思いベットから降りてクローゼットの前まで来たとき


キィーー


いきなり真横のドアが開き、人間ではない何かが立っていた。


俺は別にホラーは苦手ではない。むしろあっちの世界にいたときは暇つぶしによくホラー映画やゲームをやっていたものだ。だがそういったものは画面の中での話。現実に起こると怖くないといくら頭が理解していても体が反射的に反応してしまう。咄嗟に目を瞑ったり悲鳴をあげたりなど。それが俺の場合ドアを閉めるといった反応だった。


「・・・・・・・・あ」


やってしまってから気づく、それが人間以外の生物でも、ましてや幽霊や怪物でもない事に。


「・・・・・・・・・」


閉めたドアを開けると廊下で何かが布団を被り中でもがいていた。俺の足元には布団から少しだけ何かの足らしきものがはみ出ている。


もちろんその何かというのは


「・・・・・うにゃっ!」


はみ出ている足を掴みそのまま布団の中から引き上げる。すると中からは俺と同じように薄着をした銀髪の少女が出てきた。


「・・・・・・・・何やってんだ」


「いや、これは・・・・・・」


シェーレは今逆さま状態。つまりちゃんと服を押さえておかないと重力に逆らう事なくめくれるわけで。当然シェーレはそんなことをしていない。


「・・・・・・・」


俺の視線の先ではシェーレの顔が隠れるかわりに二つの膨らみが露わに。


「・・・・・お、下してぇええ!」









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