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第67話 また一緒(クロム過去編③)

 異世界に転生してから十年くらいが経ったらしい。

俺はつい一週間ほど前に十五歳になり、この世界では成人とみなされる年齢となった。


 学校の制度的に、成人年齢となり進路が決まってる者は申請さえすれば卒業することができる。

俺は王国の騎士にならないかと声をかけられていたので、学校はもう卒業した。


 そしてついに迎えた今日という日。

新人騎士として初めて王国に勤める日だ。

騎士になってからは宿舎で過ごすことになるので、慣れ親しんだ我が家とも今日でさよなら。

まぁいつでも帰ってこれるのだけど。


 案内を住ませた俺たち新人騎士は、支給された鎧と武器を装備した状態で、訓練場に集められた。

いわゆる同期の騎士とはここで初めて顔を合わせることになる。

どんな人がいるのか……なかなか緊張するな。


「クーロムっ!」


 突然両肩をガシッと掴まれた。

何事かと思い振り返ると、そこには見慣れた顔の女性が立っている。

銀髪碧眼の昨日もなんだかんだで家で一緒に食事をした……


「ミ、ミスト!?

 お前、どうしてここに……!?」


 まぁまぁ鎧なんて着ちゃって……

しかも伸ばしていた髪の毛を切って、前はいいロングの髪の毛だったのに今はセミロングくらいになっている。


「どうしてって……

 私も王国の騎士になったからここにいるのよ?」


「……お前、技術職に就くんじゃなかったのか?」


「だったんだけど、別にここじゃ出来ないわけじゃないし。

 それに、騎士なら色々と融通も利きそうだしね」


 流石ミスト……恐るべし。

騎士という立場さえ利用して、自らの技術を高めようとしているのか。

ミストならオーパーツレベルの兵器を開発しかねないぞ。


 でも、本当にそれだけなのだろうか?

何か別の理由があるような気がするが……

しかも騎士にはならないと思うって結構前にも言ってた記憶がある。

確か妹さんが心配するとかの理由だったと思う。


「妹さんはいいのか?

 心配するとか言ってたよな?」


「あー、それね。

 アリアも十三歳になったし、大丈夫よ。

 本人も承諾してくれたし」


「ならいいけど……

 まぁ何はともあれ、改めてよろしく」


「えぇ、こちらこそ」


 俺とミストは握手を交わす。

形式的だからそこまで必要ないかもしれないが、なんとなく気持ちが引き締まるだろ?


「全員ッ!

 整列ッ!!」


 訓練所内に声が響いた。

見るとそこには上級騎士の一人が立っていた。

おそらく説明やらなにやらがあるのだろう。


 俺とミストを含む新人騎士は、即座に上級騎士の前に整列する。

迅速に行動しなければ注意されてしまう。

団体行動は基本だし。


「よし、上出来だ。

 今日から新人騎士の教育を担当するギリアム=ゴレムだ。

 諸君らが騎士団の一員になってくれたことを誇りに思う」


 ギリアムと名乗った上級騎士が語る。

上級騎士は、幾多の戦いで戦果を上げた英雄だけがなることができると聞いた。

上級騎士一人で、魔物の群れを殲滅し、戦局を大きく変えるほどの力を持っているという。


「今は魔族も平和的に動いている。

 しかし、何時その状況が変わるかわからない。

 来るべき時のため、我々は大いなる誇りをもってその爪を研がなければならないのだ。

 諸君らの武勲に期待しているぞ」


 ギリアムは小さく頷き、一呼吸。

すると、今までとは雰囲気が変わり、先ほどまで放たれていた鋭いオーラが一切無くなった。


「よし!

 じゃあまずは基本からだ!

 簡単なトレーニングから始めるから、お前ら、ちゃんとついてこいよ?」


 そう言うとギリアムは、背を向けて歩き出した。 

つい一つ前の台詞とのギャップに驚きながらも、俺たちはギリアムの後に続く。


 この時の俺は知らなかった。

基本的なトレーニングがどれだけ地獄か。





「なんだお前ら!

 まだまだ基本のトレーニングだぞ?

 疲れすぎじゃないか?」


 俺たち新人騎士の多くの呼吸は荒く、みんな座り込んでいる。

いくら新人とはいえ、並大抵のトレーニングでへこたれるような連中ではない。

この国の基本トレーニングがおかしいのだ。


 かるーく王国の外周を十週。

王国の周りの距離がどれだけあるかわからないが、このあたりで多くの新人騎士の体力が失われた。

その後は筋トレと模擬戦なのだが、模擬戦まで生き残った新人騎士は俺とミストだけという……


 しかし、俺もミストも何とか出来ないことはないくらいで、全力を出すことはできないだろう。

何でギリアムは同じメニューをこなしてぴんぴんしてるのか教えてもらいたい。


「……まぁいい。

 今日はここまでにして、明日から本格的にいくからな。

 解散ッ!」


 手のひらをパンッと叩き、解散を告げるギリアム。

その言葉を聞いて即座に動ける騎士は誰もおらず、しばらくの間訓練場は屍のようになった騎士たちの墓場になった。

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