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第58話 藍緑よ、蒼に染まれ

 暗く、やけに冷たい地面で目を覚ました。

身体の自由はなく、しかも全裸。

どうやら鎖か何かで手足を繋がれているようだ。


 現実世界基準で畳四帖ほどある牢屋のような部屋に、俺は倒れている。

まだ意識はしっかりしていないし、体中が痛い。

一体何が起きているんだ……?


 今だ眠りにつこうとする意識の中、俺は思い出す。

ウォレスタ王都の路地で起きたことを。

そこで眠っていた意識は覚醒し、みるみるうちに体中に血液が送り込まれていくような感覚を得る。


 どうやら俺は、何者かに捕まってしまったらしい。

魔族か、人間か、はたまた半魔族か。

普通に考えれば魔族が打倒だが、魔族に命令された人間や半魔族の可能性も十分ある。

路地に案内してくれたあの女性……きっと彼女が仕掛け人だ。


 ……ここは地下だろうか?

わからないが、早くここから脱出しなければ……

しかし、体の自由がきかない状態でどうすればいいんだ?

闇雲に手足を動かしても、ギャリンギャリンと嫌な音をたてるだけ。


 しばらくどうにかして鎖が外れないか試していたが、俺の力では無理だと悟る。

すると、金属で造られた重い扉を開き、一人の魔族が姿を現した。

フュネイトで見た、トカゲ頭……否、ワニ頭の魔族。

エルナにやられた奴が、なぜここに?


「目は覚めたみたいだな。

 状況はわかってるか? アキトさんよ」


「……なんで名前を知ってんだよ」


「お前みたいに目立つタイプなら、名前はいくらでもわかる。

 立場をわきまえろ、雑魚が」


 トカゲ頭が俺を蹴る。

一応こいつでも魔族の端くれなので、身体能力は人間よりもある程度高い。

一撃が重い……!


「とにかく、お前から欲しいのは情報だ。

 情報さえもらえりゃ、お前の命だけは保障するぜ?」


「はっ……

 笑っちゃうね……

 俺みたいな雑魚騎士から何の情報を得ようってんだ」


 即座にもう一発、蹴りが飛んでくる。

トカゲ頭が俺の髪の毛を乱暴に掴み、持ち上げた。

あぁ、こんな状況ってマジであるんだ。

ようやく飲み込めたぞ。

これは拷問というやつだ。


「お前はウォレスタの上級騎士とも繋がりが深そうだからな。

 リノシアの団長ともだ。

 お前が情報を言わねぇなら別に構わねえ。

 だが、お前のお仲間は……どうなるかな?」


「お前みたいな奴に負けるような人たちじゃないんでね。

 もっと別の奴を捕まえるんだったな」


「ふん、余裕だな。

 だが、シュトーラス様に敵うとでも思ってるのか?」


 シュトーラス……!

赤魔晶石でドーピングした俺の一撃を、片手で受け止めた魔族。

しかもダメージを受けた様子もなく、余裕を持っていた……

確かにアイツなら……アイツならフレデリカやアリアさんでも倒せないかもしれない。


「……お前、今、明らかに『ヤバイ』って面したぜ?

 安心しな、お前が情報を渡してくれさえすればいいんだからな!」


 今度は拳。

一発や二発ではなく、何発も何発も顔面や体に叩きつけられる。

更には蹴り。

膝蹴りも絡めて攻撃してくる。

魔法は使わないんだな……拷問。


「まぁ、長い付き合いになりそうだし、じっくり聞かせてもらうぜ。

 身体が無事な間は痛みだけで勘弁してやる」


「……何言えばいいのかわからない状態で言われてもな。

 た、ただ痛いだけなんだが」


「おぉっと、まだ質問してなかったな。

 とりあえずウォレスタ内の情報から欲しいなぁ……

 リノシアの金髪については後だ。

 あいつの暴走条件なんかも、お前ならある程度わかりそうだしな」


 こいつの聞き方が悪いのかわからないが、抽象的すぎるぞ。

ウォレスタ内……お偉いさんでもない俺が知ってる範囲は限られている。

だが、いくら俺でも戦闘時における作戦行動や、非常武器庫・食料庫などは知っている。

臨時拠点になりうる場所もだ。

これだけは言えない……絶対に。





 それから休むことなく拷問は続けられた。

殴る蹴るだけじゃ事足りず、水責め・電流責めも加えられた。


 魚顔の魔族が、水の魔法で責め立ててくる水責め。

息が出来ねえのなんの。

酸欠で頭は回らなくなるし。

しかも身体中に傷ができているので、水が染みる染みる。


 魔晶石で雷の魔法を発生させて、電流を流す電流責め。

普通に痛い、泣き叫ぶくらいには痛い。

痛みで何度か意識が吹きとんだほどだ。


 拷問のおかげで口の中は切れ、血の味がずっとする。

身体の痛みも尋常ではなかったが、麻痺してきたのか感覚がない。

視界も曇っているし、本当にそろそろヤバイ。


「……くっそ、しぶといな。

 本当にお前のお仲間さんが危ないかもしれないぜ?」


「……」


「チッ……!

 ふざけた野郎だな……」


 トカゲ頭の魔族……拷問の途中にグニスと名乗った男は再び拳を振り上げた。

すると、再び誰かが扉を開けて入ってくる。

新たな拷問役かと思ったが、違う。


「どうですか、調子は。

 今だに何の情報も無いというのなら、憤りを覚えますが」


「シュ、シュトーラス様!?

 いや、実は……まだ……」


 全身が黒の魔族……シュトーラス。

あの時は見えなかったが、よく見れば白とオレンジの模様が入っている。

現実世界でもこのカラーリングに見覚えがあるが、畏怖の対象には正解だと思う。


「まぁ貴方にはさほど期待していません。

 何も言わないというのも予想の範囲内です。

 拘束できたことに価値がありますから」


「……おい、どういうことだよ。

 俺はたかが雑魚騎士の一人だぞ」


「まだ会話の余裕がありますか。

 拷問が足りていないようですね、グニス」


 くそ……何も言わないほうがよかったかもしれない。

このままだとまた拷問に逆戻りのパターンか……?


「……まぁいいでしょう。

 貴方はフュネイト侵攻作戦を食い止めた前科があります。

 それに、今回も私たちの動きにいち早く気づいたようですので、念には念を入れておかなければなりません」


「それは高く評価されて……よかったよ。

 で、俺をどうするんだ?」


「そうですね……

 貴方に対する処分は既に決まっていますが、先にやらなければならないことがあります」


 処分……ね。

前に会った時、殺すと言っていたし多分殺されるんだろう。

今の状況だと、俺が助かる道はない。

露出狂が言ってたけど、やっぱり俺は死ぬ運命にあるのかもしれないな。


 だが、その前にやらなければならないことってなんだ……?

俺を殺してからじゃなく、殺す前にしておきたいこと?


「……グニス、少しだけここを離れます。

 その間は任せます、私を失望させないでください」


「わ、わかりました……!

 シュトーラス様、一体何を……?」


「……兵を動かします。

 予定より早いですが、精霊樹を堕とします。

 我々、魔族の手で」

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