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第56話 眠り狼と恐怖の一夜

 俺は、痛烈な痛みで目を覚ました。

腹部に打撃と思われる衝撃が与えられ、無理やりに目を覚まされたというのが打倒だろう。


「ってぇ!!

 なんだなんだ!?

 敵襲か!?!?」


 体を起こして辺りを見回すが敵らしき影は見られない。

しかし、それよりも恐るべきことが俺の身に起きていた。


 なぜか、俺の横にエルナが寝ている。

それもとてつもなく幸せそうな顔ですやすやと寝ている。

どうやらエルナの寝相によって放たれた裏拳が、俺の腹部にクリティカルヒットしたようである。


「な、なんでこんなところにエルナが!?」


おかしい……

なぜ……なぜ俺の横にエルナが寝ているんだ……


 あれか?

俺は禁忌を犯してしまったのか……よりによってエルナと……?

いや、そんなことはないはず。

一度よく考えて見るんだ。

どうしてこうなったか俺は寝る直前までの記憶を思い返してみることにした。




 精霊祭一日目は無事に終わり、深夜まで働いた俺は支援所に戻ってきていた。

支援所二階の自室で、布団の中にイン。


 この時間になってくると、あれだけ多かった人の数も多少は減る。

あちこちで酒を飲んでる輩がおり、どんちゃんどんちゃんしている声が聞こえてくる。

声がうるさいので出来るだけ窓は閉めて寝たいのだが、それだと部屋の空気が悪くなってしまう。

暑さと空気の悪さで寝られないかもしれないが、仕方なく布団近くの窓を閉めた。


「何かが起きるってまだ判断するには早いけど、今はまぁ仕方ないか

 ていうか……もう寝よう。

 疲れたし……」


 大袈裟な独り言に返答してくれる人もおらず、なんだか少し寂しい。

まぁこれに返事が帰ってきたら心霊現象発生により眠れなくなってしまうがな。

というところまでは覚えているのだが……




「というかやっぱり俺何もしてねえじゃん!!」


 よく見れば、窓が開いており心地良い風が入り込んでいる。

どうやらエルナはこの窓から侵入したと思わるのだが……

なんで寝てるんだ?


「てか、結構独り言喋ってるのに起きないな、コイツ」


 エルナの近くでガンガン喋っているのに起きる素振りも見せないエルナ。

フュネイトの時はすんなり起床した覚えがあるのだが、どういうことだ。


「おーい、エルナ。

 起きろ、なぜここにいる」


 エルナの肩を掴んで揺すると、うんうんむにゃむにゃ言い出すエルナ。

もう少し揺すってみるとかすかにエルナの目が開いた。

その目は明らかにこの世界を見ておらず、まだ夢半ばという感じだが俺は容赦はしない。


「起きろ。

 色々と聞きたいことがありすぎるんだが」


「……あぁ、まだゆめなのね」


「あ、いや、夢じゃないです。

 こちらは現実となっております」


「りあるなゆめね……

 ひさしぶりなかんじがするわ」


 こいつ……夢だと思っていやがる。

いくら揺すっても「ゆめかー」しか言わないエルナは確かに貴重だ。

しかし、この現状は色々と俺の心臓によろしくないと思うんだ俺は。


「リアルな夢じゃなくて!

 げん! じつ! なの!!」


 エルナを無理やり起き上がらせてみる。

ぼやーっと目は開いているのだが、意識はこちらにない。

なんだかもう必至に起こそうとしてる俺が馬鹿らしいのはないかと思い始めてきた。


「ま……ねむ……」


 左右を軽く確認したあと、よくわからない言葉を呟きながらエルナは再び目を閉じる。

そして、なぜかこちらにもたれかかってくるようにして眠った。

あれ……この状況、さっきより悪くなってません?


「あっ……もうなんかいいや……

 明日も仕事だし……寝よ……」


 俺はエルナを起こすのを諦めて再び眠りにつくことにした。

横になって目を閉じてみるが……


「(なんかこいつめっちゃいい匂いするんだけど……!!)」


 なんだこれなんだこれ。

何かエルナめっちゃいい匂いするんだけどなんで?

あれか、所謂「女の娘の匂い」ってやつか!?

どっちにしろ駄目だ。

一度意識してしまえばもう駄目だ。


 しかも寝返りなんてうった日には最悪だ。

俺の腕を抱きまくらか何かと思っているようで、腕を絡めてくる……!

色々と、その控えめでありますが柔らかいものでがですね、当たっていらっしゃるんですけど、はい。


「寝れない……

 ぜ、絶対これ、寝れない……」


 仰向けで天井をひたすらに見つめて無になる。

悟りだ……悟りを開くんだ……

これでも一応騎士だろ?

風宮秋人だろ!?


 それ以前に男であるという点をどこか遠くにぶっ飛ばして俺は無になる。

何か今の状況でエルナを起こしたら逆に俺の命が危ない。

「言い訳はそれだけ? じゃあ死んで?」くらいなことを言われてレイピアで心臓を貫かれるか、炎の魔法で焼却されるかの未来しか見えないんだ俺には。

おかしいな……さっきまでは少しの幸せを感じていたはずなのに、急にそれが恐怖に変わるなんて。


 先程まで起きろと言ってはずの俺はどこかに消え去り、今は起きるな……! 起きるな……!と念じている。

人間何があるかわからないな、不思議だな。


 珍しく天使と悪魔が手を組んでいるように思える今日このごろ。

俺は無になろうと思いながらひたすらに天井を見つめて一晩明かすのだった。

もちろん、疲れが取れたなんてことはない。

明日も、仕事だ。

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