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第54話 運命の落し者

 まさか再び会うことになるとは思わなかった。

いや……ここで再会したということは彼女自身が本物である証拠なのではないだろうか。


 俺は今まで目の前にいる少女を、ただの露出狂で厨二病をこじらせた魔族か何かだと思っていた。

しかし、俺がこの場に吸い寄せられたこと。

そして商業区に誰もいないということ。

これが彼女の力によるものだとしたら、納得がいく。

魔法と言われれば反論の余地はないのだが。


「何もそんな怖い顔をしなくてもいいだろう?

 久々の再会だ、少しくらい喜んでくれてもいいのだがな」


「喜んでる暇なんてない。

 俺にはやらないといけないことがあるんだ」


「安心せい。

 我がこうしてお主の前に現れたのは、お主がやらなければならないことに繋がることだ。

 むしろ、核心と言ってもいい」


 少女はゆっくりと玉座に背を預けた。

怪しく微笑みこちらの様子を見る。

ここは大人しく聞いておくべきか……?

彼女の言うことが本当なら……いや、本当じゃなくても頭には入れておいていいかもしれない。


「どういうことだ?」


「……魔族が精霊樹を堕とす作戦を立てている。

 こう言えばお主も事の重大さがわかるか?」


「魔族が……精霊樹を!?

 でも、何のために……」


「決まっておろう。

 精霊樹の中……すなわち神殿内には何がある?」


「そりゃ……魔晶石、しかもデカイやつ」


「うむ、そうだな。

 そして、精霊樹はなぜそこにある?」


「なぜそこにって……

 精霊が人間の繁栄を願って……!!」


 俺はここで大体話の検討がついた。

あくまで予想に過ぎないが、どうして今まで魔族が動かなかったのかさえ不思議に思える。

精霊樹を堕とす理由なんて、いくらでもあるじゃないか。


「云わば精霊樹は人間の象徴、お主の世界の言葉でいうシンボルだ。

 それを失い、更には魔晶石まで奪われることが、どれだけの影響を及ぼすと思う?」


「……まさか魔族は、本格的に人間界に侵攻する気なのか?」


「我の質問には答えないのだな……まぁいい。

 魔族は精霊樹を堕とした後リノシアに侵攻。

 そしてウォレスタと攻めるつもりだ。

 あくまで、一つ目の未来ではな」


「一つ目の……未来?」


 一つ目の未来と彼女は言った。

ということは、二つ目、三つ目の未来も存在するのか……?

それ以上の未来も存在するということにもなるはずだ。

何かの本で見たが、未来はいくつも存在し、その分岐点も多数存在する。

分岐点の数だけ未来は生まれる……


「我は同時に……そして連続的に全ての世界に存在する。

 こうしてお主と会話している今も、別の世界では違うお主と会話しているのだ。

 時間というものも遡れるし、未来など我にとってどうでもいいことなのだがな」


「どうでもいいなら、なぜお前は俺にこのことを?

 フュネイトの時もそうだった。

 わざわざお前は俺に忠告をした。

 一体何のつもりだ?」


「……お主がこの世界に来た理由。

 世界を救えと言われたはずだ」


「……え、あ、まぁ。

 てか、何気に話を変えるなよ」


「話は最後まで聞け。

 世界を救えと命じたのは誰だったかな?」


「……えっと、赤い髪の女性。

 詳しくは覚えてないけど、多分、会えばわかる」


 それを話した瞬間、少女は不気味に嗤う。

急に俺は、目の前の存在が恐ろしい何かに見えて、思わずぞっとした。

そうだ……奴は人間でも魔族でも半魔族でも……神でもない。

何もかもを超越した存在であるのだ。


「端的に言えば、我はそれを探している。

 我の肉体からこぼれ落ちた、我を構成する要素の一部だ。

 だから今の我は100%のうち、2%を失った98%の我ということになる」


「不完全ってことか?」


「そうだな。

 我は我自身の落し者を探しているだけだ。

 しかし我が必要以上に干渉すれば、落し者から離れていく。

 だからお主を利用する」


 なるほど……そういうことか。

俺は世界を救えと赤髪の女性に言われた。

それを成すということは、俺が赤髪の女性と干渉することになり、存在が確立する。

俺が彼女を認識すれば、彼女は存在する……みたいなのが現実世界にあったな。


「察しがよくて助かるぞ。

 我が抜け落ちた部分を得るためには、抜け落ちた部分を認識できる者が必要だ。

 なぜなら本来、他人には我の存在は認識できず、我を構成するものも認識できないからだ。

 落し者がお主に干渉したことにより、お主は我と落し者……両方を認識することが出来る」


「……なんかよくわからんけど、俺はどうすればいいんだ?

 お前に協力するってことは、要するに世界を救うってことだろ?」


「まぁそういうことになる。

 それ以外の方法もあるかもしれんがな」


「……なるほどな、わかった。

 で、お前の落し者ってのは何なんだ?」


「……『観測』だ。

 結果を観測し結果を得るものが抜け落ちた。

 このままでは、全ての世界において『結果』がなくなることになる」


「結果が無くなったら……どうなる?」


「滅びるさ、すべての世界と我がな。

 ……とにかく、今は精霊樹のことだけを考えてくれ。

 そこを乗り切らなければ、世界は救えないぞ」


 だんだん話がややこしくなってきた。

要するに、『全て』から『観測』が抜け落ちて、『結果』が得られなくなると『全て』が滅びるということか。

彼女の言うことが本当なら、俺もこの世界の人も全員、彼女の一部ということになる。

でも俺たちから『観測』が抜け落ちたわけじゃないし……

概念を司ってるようなもんだから何がどうなってても不思議じゃないけど。


「まぁ、善処する。

 何かあったら、今度は服を着てから俺に会うようにしてくれ」


 目の前の露出狂は「なんだ、つまらん」といった様子で肩をすくめる。

特にやましいことはないはずなのだが、ずっと見ているとなんだが悪いことをしているような気がしてくるのだ。


 俺は屋敷から出ようと、彼女に背を向ける。

すると、何らかの力が働き俺は再び彼女の方を向いた。


「……まだ何か?」


「重要なことを言っていない。

 これだけは言わなければならないことだ」


「……重要ってなんだよ」


「お主……いや、フレデリカという女も可能性はあるが……

 このままだと、お主は死ぬ。

 確実にだ。

 精霊の塔の頂上で、魔族と戦い死ぬのだ」


 突きつけられた言葉は、俺の死であった。

ただの言葉ではない。

『全て』から放たれた、最も説得力のある言葉。

俺は本当に……死んでしまうのだろうか。

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