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マジ無能力で異世界転移したけど世界を救うために頑張ります!  作者: 鷲鷹 梟
第2章 遥かなるアイントラハト
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 閑話9 異世界幽霊調査隊 幽霊屋敷編

 話しは、数ヶ月前に遡る。

クロムがフュネイトに行って少し経った頃、ウォレスタ王都で変な噂が流れるようになった。


『商業区の幽霊屋敷に、幽霊が出る』


 幽霊なんているはずがない。

しかし、ここ最近になって、どうにもその噂が絶えない。

あまりにも噂になるもんだから、騎士が調査に出向くことになった。

本来なら支援所が担当するのだが、その責任者であるアキトは不在。

そのため、なぜか俺が行くことになったのだが……


「なんで、俺なんだ?

 あと、なんでわざわざ夜なんだ?」


「わかりませんけど、アリア殿が断ったみたいですよ。

 んで、ガーティス殿なら夜でもやってくれるって」


 上級騎士である俺が、幽霊屋敷の調査だと?

しかも、連れは一人。

模擬戦で審判をやらせると、右に出る者はいないと言われる騎士。


「安心してください。

 この私、シン=パンが付いています!」


「だーから余計心配なんだろうがっ!」


 なぜか一緒に行くことになったシン。

鎧と兜を装備して、今にでも戦いを始めようという様だ。

幽霊と闘うつもりか?

実戦経験はあるものの、実際に戦っている姿を誰も見たことがないという幻の存在。

もはや、シン自身が幽霊なのではないだろうか。


 そんなくだらない話をしているうちに、問題の屋敷に着いた。

商業区の外れにある二階建ての屋敷。

商業が栄える前……まだ商業区が民間区と同じ役割を担っていた頃に建てられたものだ。

ウォレスタの街が魔族に襲撃された時に、この屋敷の住人は殺されたらしく誰も気味悪がって近寄らない。


「ま、まぁこういう噂には、尾ひれがつくって決まってっから……」


「あれ?

 ガーティス殿、声が震えてません?」


「んなぁことねえよ!

 ほら! とっとと行くぞ!」


 シンを先頭にし、屋敷に入る。

古びたドアがキィ……っと不気味な音をたてる。

電気はつかない。

街の外れなので、街の明かりもあまり入ってこない。

月明かりだけが、唯一の頼り。


「おいシン。

 明かり持ってきてねえのか?」


「いや、持ってきてないです。

 ジャッジ剣だけです」


 そう言って彼は懐から黄色い剣を取り出した。

模擬戦の時に使われる不正確認のものだ。


「なんでそんなもん持ち歩いてんだ?

 まぁいい、行くぞ」


 行くぞと言ったが先頭はシン。

静かな屋敷の中に、俺とシンの足音が響く。

虫か動物か、何かが動く音が聞こえる気がする。

サワサワ~みたいな、ザワザワ~みたいな。


「ワァッ!?」


 突然シンが立ち止まり、叫んだ。

俺はシンの行動……というか声に驚き、声を上げる。


「どあええっしゃああい!!???」


 気が張っていた分、驚きが大きい。

心臓が凄まじい速度で動いている。

日頃の鍛錬でもこんなに早く心臓が動くことはないってのに。


「なななななんだ!

 どうした!?」


「あ、いえ、何でもないです。

 大きな声出したらどうなるかなーって思っただけです」


「ふざけんな! 心臓が止まるかと思ったろ!

 兜のせいで変に響くしよ!」


「ガーティス殿は背の大きさに合わず、虫や幽霊が苦手ですからなぁ。

 あと甘い物が好きですし」


「うるせえ!

 苦手じゃねえ! びっくりするだけだ!」


 「甘い物好きは否定しないんですね」とシンは笑うと、歩みを進めた。

俺はシンに驚かされたことがきっかけで、神経が敏感になったように思う。

なんかもう、何もかもが怖い。


 屋敷の奥に辿り着き、部屋を調査していく。

どこもかしこも古いだけで、特に目立った異常は見られない。


「な、なんだ……

 やっぱり、幽霊なんて出ねえじゃねえか」


「噂は噂ですからね。

 さぁ、ここで最後です」


 残す最後の部屋は、屋敷の主の部屋

いつの間にかシンが俺の後ろにいる。脅かす気かコイツ。

まぁいい、さっさと終わらせて帰る。

そう思いドアに手をかけると、何処からか、笑い声のようなものが聞こえた。


「おおおおおいシン。

 こんな時に脅かすんじゃねえ」


「いや、ガーティス殿。

 今のは……私ではないです」


 シンの顔を見ると、先程とは違い真っ青になっている。

明らかに聞いてはいけない声を聞いてしまった。そんな顔だ。


「え、じゃあなんだ。

 今の笑い声は……」


「多分気の所為ですよ。

 恐怖が生み出した幻聴かなにかです」


 その声は完全に震えている。

説得力が皆無だ。


「ま、まぁいい。

 ドア……開けるぞ?」


 シンはゆっくりと頷いた。

ドアにかけていた手を、ゆっくりと押す。

ギギ……と音を立てて開いたドアの先には、何ら普通の部屋が広がっていた。

いかにも主が座っていそうな椅子にも、変わった様子はない。


「な、なんだ……やっぱり気の所為だったか……」


 何もないとわかると、途端に安心する。

身体から力が抜けるようだ。


「おい、シン。

 何もなかったから帰る……ぞ……」


 後ろを振り向くと、青ざめた表情のシンが、何かを指して固まっている。

その指の先には、黒い、女の子の影のようなものが見えていた。


「……えっ」


 思わず、俺まで固まってしまう。

女の子の影は、宙に浮いた椅子に座っており、こちらを眺めているように見えた。


「ゆゆゆゆゆゆゆ幽霊だあああああああああ!!!!」


 気づくと俺は、シンの手を掴んで、部屋を飛び出していた。

途中、何かにぶつかったりしていたが、気にしている暇はない。

夢中で走っているうちに、俺とシンは中央広場にたどり着いた。


「幽霊……いたよな?」


「幽霊……いましたね」


 俺とシンは、たしかに幽霊を見た。

あの屋敷には何かがいる。

きっと魔族に殺された屋敷の主の怨念が、今もそこで彷徨っているのだ。




「ってぇわけだ」


「ふーん……」


 俺の渾身の怖い話を、アリアはつまらなそうな表情で聞いていた。

アリアと一緒にルハネスで酒を飲んでいたら、どうやら俺まで酔っ払ってしまったらしい。

普段はこんな話、死んでもしないからな。


「いやさー、怖いのは怖いんだけどな。

 ガーティス、精霊祭警備の場所、商業区を嫌がったのって……」


「……そんなわけ、ない」


 決してそんなわけない。

幽霊が怖いからとかそういうわけではない。

俺はアリアが向ける疑惑の眼差しを振り切るように、新人店員に酒を頼んだ。


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