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マジ無能力で異世界転移したけど世界を救うために頑張ります!  作者: 鷲鷹 梟
第2章 遥かなるアイントラハト
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 閑話8 ちょっとした衝撃

 ウォレスタ王都の大衆酒場「ルハネス」に俺とアリアは来ている。

なぜかと言えば、まぁ大体予想はつくだろうが目の前で酒を浴びるほど飲んでるアリアの誘いだ。

今まで何度か誘われていたが気乗りしなかったので断り続けていたがが、今日はなんだか「まぁいいか」という気分になってしまったのが運の尽き。


「で、聞いてるのか!?」


「あ、あぁ、勿論。

 聞いてるっての」


「嘘だ、ぜったい聞いてない。

 ガーティスはいつもそうだ」


「いつもじゃねえ、たまにだ」


 アリアがこうやって飲む時には大体理由がある。

ストレスが溜まったり疲れたり同僚が配偶者を見つけた夜なんかはいつもこう。

だからといって一人で酒を飲むのは虚しいのでこうして俺みたいな暇人を連れて行くのだ。

今回、なんでこうなったかって言えば……


「聞いてないなら教えてやる。

 二度は言わんぞ二度は」


 既に二度目の説明であろうことはこの際言わないでおこう。

俺もその方が助かるし。


「ちょっと前にさ、アキトのとこに行ったんだ。

 仕事の都合でちょっとな、うん」


「支援所にか。

 そういえば書類がどうとか言ってたな」


「そう、そのしょりゅいだ。

 支援所の扉開けて入ったら、何かいるんだよ、人が」


「そりゃいるだろ。

 いなかったら他に問題がある」


「そうじゃなくてだ。

 アキトじゃなくて、フレデリカがいたんだよ!

 『アリア! 久しぶり!』とか言って」


「フレデリカが……?

 お前と同じで仕事関係じゃないのか?」


「違うんだよなー、それが……」


 いい感じで酒が回ってきたアリアの前で、素の状態でいるのはキツイ。

俺は赤いフードの女性店員をつかまえて、酒を注文する。

何故かアリアも一緒に注文したが、気にしない。


 赤いフードの女性店員は、なんでも最近入ったばかりの新人らしい。

しかし、もうすでに酒場の店主である「ママさん」にちなんで「アネさん」とアダ名を付けられて常連客からは既に慕われている。

楽しそうに仕事をしていてなによりだ。


「はい、こちら注文のものです。

 ごゆっくりどうぞ」


 去り際に微笑む彼女を見れば、酒が特別にうまくなりそうな気がする。

気のせいだが。


「で、話の続きだガーティス」


 酒をグビグビと煽り、話を続けるアリア。

大分飲んでるが、いつものことなのでもう慣れた。


「フレデリカがいたからさー、仕事かなって思ったんだよ、私も。

 そしたらそうではないんだなー」


「仕事じゃない?

 じゃあなんでまたフレデリカは支援所に?」


「……アキトの仕事、手伝ってるんだとさ」


「……それ、大丈夫なのか?」


「大丈夫らしい、給料出てないから。

 でもそれだけじゃないんだよ気になるのは」


 まだあんのか。

フレデリカがアキトの仕事を手伝ってるってことで割りとお腹いっぱいだぞ。

そういう柄じゃなかったと思うしな。


「フレデリカさ、支援所に置いてる物の整理してたみたいなんだ。

 で、見たことない物が出てきたんだろうな。

 アキトに『アキトー、これどこに置けばいいの?』って聞いたんだ」


「それに何の問題があんだ?」


「……いつの間にかフレデリカが『アキトさん』から『アキト』呼びになってるんだ。

 これはちょっとした衝撃だぞ」


「俺もお前もフレデリカには『さん』なんて付けられてないだろ?

 気にしなくてもいいんじゃねえか?」


「違うんだ、違うんだよガーティス。

 フレデリカだけならいいんだ。

 でも何かアキトまでフレデリカを『フレデリカ』呼びしてるんだよ!」


「あー……そういうことか」


「私もまだ『アリアさん』なのに!

 まだ『さん』ついてるのに!!」


 要するに知らない間に愛弟子と親友が仲良くなってて辛いってことだろう。

いや、多分アリアは二人が仲良くなることに関しては問題視していない。

自分より先に『さん』が外れた事実に悲しみを抱いているというわけか。


「いや、まぁ、立場がちがうだろ?

 お前は一応アキトより偉いわけだ。

 気軽に呼べはしないだろ、他の兵士にも変に見られる」


「フレデリカだってリノシアの団長だぞ?

 同じようなものだよもうフュネイト行って何があったんだよ二人とも……」


「落ち着けよ……

 もしかしたら照れてるだけかもしれねえ。

 フレデリカよりも長い期間、『さん』を付けてたから、今になって呼びにくいだけだ」


「……そうか?」


「あ、あぁ! 間違いねえ!

 アキトはいつ『さん』を外すかタイミングを伺ってんだ。

 きっと明日にでも『さん』を外して呼ぼうなんて思ってるかもしれねえ」


「そうか……アキトは照れてただけか……」


 いや、多分違うけどな。

フュネイトでアキトとフレデリカ、二人の間に何かあったのは事実だろう。

けどまぁ、大したことじゃねえ。

アリアにとっては大事かもしれねえが……


「そうか……もしかしたら明日にでも……

 『アリアさん』から『アリア』……」


「そういうことだ。

 お前はいちいち気にしてないでデカく構えてりゃいいんだよ」


「……そうだな、私がしっかりしていなければ示しが付かないな」


 どうやら納得してくれたらしい。

酔ってる時のアリアは割と単純なので助かる。


「よし、そうと決まれば飲むぞガーティス!

 まだまだ夜は長いんだからな!」


「なっ、まだ飲むのかよお前!

 てかお前、何か今になってイキイキしてきてねえか!?」


「細かいことは気にするな!

 騎士ならば目の前の敵をただ見据えるのみ!」


「その敵間違えてるからなお前!」


 結局俺とアリアは朝まで飲み明かした。

お互い普通に仕事があるってのに飲み明かした。

だが、ストレス発散にはなったような気がするから良しとしよう。


 もう二度とアリアとは酒を飲みたくないがな。

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