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マジ無能力で異世界転移したけど世界を救うために頑張ります!  作者: 鷲鷹 梟
第2章 遥かなるアイントラハト
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第47話 風宮秋人の仕事

「こんな時間にどうした?」


「えっ!?

 ああ、あの、アキト……さん?」 


 星空を眺めながらため息をつくリッシェに俺は声をかけた。

誰かに話しかけられるとは思っていなかったのか、リッシェは驚いたような表情を見せる。

当たり前か、こんな時間だし。


「俺もちょっと外の空気を吸おうと思って外に出たんだ。

 そしたらリッシェがいたからさ」


「そ、そうなんですか……

 私と同じですね……」


 やはり彼女の表情は暗い。

彼女のおかげで魔族の計画を阻止できたというのに、なぜこんなにも暗い表情をしているのだろうか。


「なんか、悩みでもあるのか?

 その……なんていうか、そう見える」


 リッシェは一瞬俺を見て、そのあと視線を落とした。

何かあるのは確かだろう。

やがて彼女は再び星空を見上げながら、口を開いた。


「……実は私、一つだけ嘘をついてるんです」


「嘘……?

 どういうことだ?」


「嘘……というか、黙ってたというのが正解です」


 そう言う彼女は、どこか星空よりも遠い何かを見ているようだった。

消して俺の方は見ず、まるで独り言だ、これは星に向かって話しているのだというように。


 しばらくして、彼女は視線を戻す。

一度深く深呼吸をして俺の方を見ると、覚悟を決めたような顔で言う。


「私、実は魔族なんです」


「……え?」


 突然の告白に、俺は思わず素の声を出してしまった。

どうみても彼女は人間。

魔族が持つような特徴を一切持っていない。


「やっぱり、驚きますよね……

 私が実は敵側の魔族だったなんて……」


「いや、確かに驚くけど……

 でもリッシェが魔族なら、なんであいつらが攻めてくることを俺たちに教えてくれたんだ?」


「……私は、魔族でありながら魔法器官を持っていないんです。

 いわゆる、『ニセモノ』の魔族なんですよ」


 魔族でありながら、魔法器官をもっていない。

それが意味することは一つ。


「魔法が使えない魔族なんて、魔族じゃないんです。

 私の本当の名前は、リューゲ=リッシェ。

 リューゲは魔族の言葉で、嘘や偽を意味します

 両親が皮肉でつけた名前です、笑えますよね……」


「そんな……

 魔法が使えないから魔族じゃないなんて、そんな……」


「本当ですよ。

 両親は、魔法が使えない私を捨てました。

 それでも何とか生きようとしていた私は、魔族に捕らわれ、奴隷のような生活を強いられていたんです」


「……だから、今回のことを俺たちに」


 リッシェは頷くと、またも空を眺める。

瞳には涙が浮かび、今にも溢れだしそうだ。


「でも、もう終わりました。

 魔族の計画は阻止できましたし、私のできることはもう全部」


 一体、何を言っているんだ。

今そんなことを言ったら、俺は勘違いしてしまう。

そうじゃないと、頼むから言ってほしい。


「アキトさん、ありがとうございます。

 最後に私は、生きててよかったと思うことができました」


「待ってくれ……!

 そんなこと言ったら、まるでお前はもう……」


 リッシェは涙を流しながら笑う。

今にも崩れそうな表情なのに、決して崩すまいと必死に。


「私はもう、生きてる意味がないんです。

 だって、私には何もありません。

 だから……もう、いいんです」


「よくない……よくねぇよ!」


 思わず声を張り上げてしまう。

もしかしたらこの声に驚いて、誰か起きてしまうかもしれない。

でも、かまうもんか。


「何もないなんて言うなよ……

 そんな悲しいこと言うなよ……!

 生きてりゃいいことがあるとは限らない。

 でも、生きてなきゃ、生きてなきゃいいことも悪いこともわからないまま終わっちまうんだぞ!」


「アキトさん……」


「お前はもう、さんざん辛い目にあったはずだ。

 苦しくて苦しくて、でもどうにもならなくて……

 それでもお前は、こうやって生きて、一つの国の危機を救った!

 でも、それだけがお前の生きてきた証じゃねえ!」


 力の限り叫ぶ。

俺の心の声を、全て彼女にぶつける。


「苦しかったことも、うれしかったことも、全部お前の生きてる証だ!

 生きてきた証じゃねえ! 生きてる証なんだ!

 そしてこれからも、お前は生きてる証を刻むことができる!」


「そ、そんな……無理ですよ。

 私には取り柄なんてないし、暗いし……

 今回だって、たまたまうまくいっただけです」


「もし、お前に生きる理由がないって言うなら……

 俺がお前の生きる理由をつくってみせる!」


「……え?」


「俺は、ウォレスタで国騎支援所を営んでる。

 魔族でも、半魔族でも、人間でも、誰だっていい。

 生きてる者たちのために、全力で支援する。

 それが、俺の仕事だ!」


 国騎支援所の支援は、ウォレスタ国民でなくても受けることができる。

勿論、ちゃんとした審査や上限はあるものの、誰でも受けることができるのだ。

だから俺は、叫ぶ。

もしも彼女が望むなら、俺はそれを叶えたいと思う。

生きてる証を、生きる理由をつくるために。


「アキトさん……ありがとうございます。

 少し、考えさせてください」


「……あぁ、わかった。

 俺は待ってる、お前が支援所を訪れるのを、ずっと」


 そう言って俺は城の方へ戻る。

彼女を一人にするのは、少し不安だ。

でも今は彼女を信じるしかない。

どんな答えを出すかは、彼女次第。

俺にできることは、彼女がいつ訪れてもいいように、支援所で待っていることだ。

俺の素直な気持ちを、きっと彼女は真剣に受け止めて、考えてくれると思うから。

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