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マジ無能力で異世界転移したけど世界を救うために頑張ります!  作者: 鷲鷹 梟
第2章 遥かなるアイントラハト
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第46話 新たな道

「もう大丈夫なの?」


「はい、大分落ち着きました。

 えっと、ありがとうございます」


 自分の心を見つめ、新しい自分になれた夜。

いろいろな感情が俺の心を洗い流した。

現実世界から異世界にやってきて、心の休まることがあまりなかったと思う。

常に何かに追われていて、毎日やることがあって、慣れない世界に順応しようと努力していた。


 もしかしたら、気づかないままに蓄積されていたストレスをぶちまける場所がほしかったのかもれしれない。

こんな時、大人ならお酒を飲むのだろう。

まだ酒の飲めない年齢の俺は、子供らしい方法でストレスを爆発させた。

おかげで心が軽くなったような気がする。


「お礼なんて言わないでよ。

 お互いの気持ちを整理しただけなんだから」


「そうですかね……?

 でも、俺の荷物はずいぶん少なくなったように思います。

 これもフレデリカさんのおかげですよ」


 俺とフレデリカはあらかた泣き尽くしたので、もう涙は枯れ果てたという感じだ。

今は二人とも泣きやんでいて、しっかりとした状態で向き合うことができている。

先までのように、心と心ではなく、顔と顔。

とても素直だと俺は思う。


「……フレデリカでいいよ。

 そう呼んでくれるのが、一番のお礼」


「わ、わかりました。

 慣れるまで不自然かもしれませんが、よろしくお願いします」


「もう、そんな風にかしこまらないでよ。

 あれだけ恥ずかしいこと言い合った仲なんだから、普通に話そ?」


「え!?

 で、でもリノシアの兵士団団長ですよね……

 流石にそれは……」

 

 目上の人や年上の人に敬語を使うのは当たり前だ。

いきなりフランクに話しかけるのは失礼だと思うし。

時代が時代なら、敬語を使わないだけで処罰とかされるし。

この世界でも当然、敬語は使うべきだと思っていたのだが……


「いーの。

 私は普通に話してくれる方が嬉しいから。

 ね、いいでしょ、アキト?」


 うっ……!

そんな風に言われたら断れないっ……!

これが女性の特権か……!


「が、がんば……る」


 不自然ながらも敬語ではなく、普通に答える。

それを聞いてフレデリカは笑い、うんうんと頷いた。

慣れるのには時間がかかりそうである。


「それじゃあ、私はそろそろ戻るね。

 アキトはどうするの?」


「あ、俺も戻りま……戻る。

 でも一回外の空気を吸ってからかな……」


「そっか。

 じゃあまた明日ね」


 フレデリカは軽く手を降りながら広間を去っていった。

一人になってから、俺は軽く迷子であることを思い出す。

あれ、どうやって外に出ればいいんだ?

というか客室の場所もわからないのだが?


「やべえ……どうしたらいいんだ……」


 とりあえず広間を出ようと歩き出した時、床に違和感を覚えた。

先ほどまでなかったはずの、光る矢印が点々と出現している。

もしかしてこれか?

これを辿ればたどり着けるのか?

外に……あるいは客室に。


 俺はその矢印を辿って城を歩く。

不気味なほどに誰もいない、本当に大丈夫なのか?

兵士の数人くらいはいてもいいだろうに。


 やがて光る矢印は二つに分かれた。

一つは外の方を差しており、もう一つは別の方向。

すなわち客室を差している。

俺は迷わず外の方を差す矢印を辿ることにした。

振り返って確認すると、もう一方の矢印は消えていない。

迷う心配もなさそうなので、これで安心して外に向かうことができる。


 外は穏やかな空気に包まれ、虫の鳴く声が辺りに響いていた。

空には現実世界よりもはるかに大きな月が、星の海に浮かんでいる。

とても綺麗な夜だ。


 つい少し前までは、魔族が攻めてくるかもしれなかった街。

今はその片鱗さえ見えないほどに平和な夜が訪れている。


「……やっぱり、魔族が攻めてこなくてよかったな。

 こんなに穏やかなところに争いなんて似合わないし」


 やはり外の空気を吸いに来てよかった。

もうしばらくしたら戻って、ゆっくり休もう。


 平和な夜の空気に浸っていると、視界の端で何かが動いた。

見てみれば、そこには赤いフードの女性が立っている。

あれはリッシェだ。

俺と同じように外の空気を吸いにきたようで、まだこちらに気づいていないようだった。


 声をかけるか悩む。

でも、なんだか彼女の表情を見ていると、話しかけたほうがいいと思えた。

こんな夜に似合わないほど、悲しげな表情をしていたから。


 俺は今一度、フレデリカに言われたことを思い出す。

思い出した上で、リッシェに声をかけることに決めた。

大丈夫。

俺はもう一人じゃない。

だからきっと、この一歩は今までとは違うものになるはずだ。

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