閑話6 俺の本当の気持ち
真面目な話を書きたかったのに後半どうしてこうなった
「しかし不思議だなぁ、其方は」
フュネイトの女王が俺に向かって言った。
勇者様とエルナが出て行った今、この場に残されているのは俺と女王のみ。
側近が誰もいないのは彼女の能力故なのか、見えないだけで誰かいるのか……
でも不思議ってなんだ。
「不思議……ですか?」
「そう、不思議だ。
妾は人の心を読むことができる。
未来を予測できるほどに正確にな。
しかし、其方ほど読めない人間はなかなかおらぬ」
「は、はぁ……」
それだけの力を持っていても俺の心は読めないってなんでだ?
俺、そんなに読みにくい思考をしているのか?
「読みにくいのではなく、読めないのだ。
何も考えていないようで、そうでもない。
そこが不思議なのだ」
「え……?
何も考えていないようで、そうではない?」
「あぁそうだ。
妾は人の心は読めても、自らでも忘れている根本は読めぬ。
無論、其方がそうとは限らぬがな」
「自分でも忘れている……根本」
人は変わることができる。
でも、その内側にある根本を変えることは難しい。
変わりたいと思う内にその根本を隠して、自らが変わったと錯覚したりする。
女王は、俺がそうかもしれないと言いたいのだろう。
「本当に、そうなんでしょうか。
俺は、ずっと俺のしたいようにしてただけなんですけど……」
「……其方は自らの望むことを成しているつもりかもしれぬ。
だがアキトよ、なぜそうするようになったか考えたことはあるか?」
「なぜそうするようになったか?」
考えたこともなかった。
考える必要なんて、理由なんて必要ないと思っていたから。
「其方が自分のためとしていることも、最後は他人のためになっている。
他人のために自分が犠牲になる方が、楽でいいからな」
「……」
「悪くはない。
だが今のまま其方が歩むのなら、その強さに限界がある」
自らの矛盾に、俺自身で気づいている。
自分のためは他人のため。
他人のためは自分のため。
それを成すためなら命だって捨てる覚悟がある。
あったはずだった。
死にかけてから、初めて俺は死にたくないのだとわかった。
本当は命を捨てる覚悟なんてないのに、無理矢理でも忘れなきゃいけないときもある。
「……弱いな、アキト。
なるほど、その人間的な弱さが其方の根本だ。
誰もが持っている弱さを、其方は誰よりも恐れている。
それ故、隠さずともいい、理解してくれる者はいる」
「そんな人、いるはずありませんよ。
人が他人を理解することなんて不可能です……」
「完璧に理解するのはそうやもしれぬ。
だがな、だからといって理解しようとすることをやめてはならぬ。
其方の周りに其方を理解しようとしている者がいるなら、一度だけでもいい。
一度だけでも向き合ってみたらどうだ?」
なんだか俺の全てが見透かされているような気がした。
自分で忘れようとして心の奥底に封印していたはずのものさえ、彼女の前では扉を開く。
過去のトラウマみたいなものでも、向き合わなければいけない。
そんな心の強さを、俺はもっているだろうか。
「……話しすぎたな。
まぁここからが本題だ。
妾が其方をここに残した理由はもう一つある」
「もう一つ……?」
女王は頷くと、手を軽く持ち上げて指で軽く円を描く動作をした。
すると、俺の後ろにベッドが現れる。
今まで何もなかった空間に、突然。
「……え?」
「其方の身体に残っている魔力をある程度放出させなければならぬ。
今のままでは命を削りかねない。
安心しろ、痛みはないように心がけよう」
女王はゆっくりと立ち上がり、こちらに近づいてくる。
待て、なんだ、何をする気だ。
どんな手段で俺の魔力を放出するんだ。
さっきまで結構重い話をしてたのにどうしてこうなった。
「魔力の放出を終えたら、また少しだけ話をしよう。
今度は……そうだな、世間話とやらがいい。
それをしようではないか」
女王の手が俺の頬を撫でた。
瞬間、俺の身体の一部が一切動かなくなる。
何かの魔法……きっと俺を抵抗させないために魔法をかけた。
腕、脚、胴体。
顔はかろうじて動かせるが、それだけじゃどうしようもない。
ゆっくりと俺を押し倒し、手を身体に這わせてくる女王。
やばい、何がやばいってもうそりゃいろいろですよ。
これ心読まれるんだよな!?
読まれてるってことは……なんだこれ、この恥ずかしい感じ!!
全部筒抜けっていうのが恥ずかしさを跳ね上げてる!
「少し妾につき合え。
妾の施しを受けることができるなんて、運がいいぞ」
頭が爆発しそうになりながら、俺は女王の施しを受けた。
あまり記憶にないが、とても健全な方法だというのはここに誓おう。
しかし、まぁ……ファーストキスの味くらい覚えておきたかったという強がりだけは残しておく。




