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マジ無能力で異世界転移したけど世界を救うために頑張ります!  作者: 鷲鷹 梟
第2章 遥かなるアイントラハト
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第34話 妖姫覚醒す

 その夜。

俺は一人、薪を見るために起きていた。

最初は交代制にしようと思ったのだが、何だか今日は眠りたくない。

薪をただ見つめているだけでもいい。

たまにある、なんだか寝たくない日がたまたま今日来てしまったのだ。


「はぁ……なんでだろうなぁ」


 ため息をついた時、洞窟の音から不気味な音がした。

まるで風を切るような、鋭い音だ。

しかし、風など一切吹いていない。

もしも風が吹いているとしたら、洞窟の中からということになる。

それは少しおかしいのではないか?


 俺はどうにもそれが気になってしまい、洞窟の奥へ進むことを決めた。

奥はかなり暗いので、適当に作った松明もどきで照らしながら進む。

あと、念の為に剣も持っていく。


 洞窟の最奥に近づくに連れ、風を切る音は大きくなっていく。

なんだか寒いし、変な感じだ。


 やがて洞窟の最奥に辿り着く。

しかし、そこは行き止まりでこれ以上進めそうにない。


「あれ?

 おかしいな……

 だとすればどっから風が……」


 その時、壁に違和感があることに気づいた。

松明で照らしてみると、奥の壁だけ色が少し違うような気がする。

手で軽く叩いてみると、響くような音がした。

この先に、空洞があるということか?


「えっと、どうしたら……」


 壁を適当に触っていると、一つだけ出っ張った石があった。

こんな見つけやすい仕掛けでいいのかと思いながらも、俺はその石を押し込む。

すると、壁が音を立てて動き出し、その先に階段が現れた。

それは洞窟のさらに奥深くへと続いている。


「す、進むしかねえよな……」


 俺は逃げ腰ながらも階段を下っていった。

先程までと違い、壁が人工的に作られたようなものになっている。

謎の壁画と、ところどころにはめ込まれている宝石。

これは魔晶石だろうか?

だとすればここは遺跡のようなものなのかもしれない。


 歩くこと数分。

開けた空間に出た。

恐ろしく広く不気味なほどである。


「おいおい……なんだよここ……」


 空間をか細い炎を頼りに進んでいく。

すると、空間の中央に何かがあることに気づいた。

やたらとトゲトゲしいあれは……茨?

茨の繭みたいものがそこにある。


 手で触れてみようとした瞬間、空間に光が放たれた。

その光は茨の繭の内部から放たれており、至近距離で浴びるには眩しすぎる。

思わず手で光を遮り、慣れるのを待つ。


 光はやがて収束していき、輝きを失った。

しかし、いつの間にか空間全体に光が満ちている。

壁にはめ込まれた魔晶石のようなものが光を放ち輝いている。

それが照明の役割を果たしているのだ。


「なんだなんだどうしたおい!?」


 混乱の最中、それは現れた。

茨の繭がゆっくりとその歪な形状を解いていく。

花びらが広がるように美しく、不気味に。

さほど時間をかけず、茨の繭は禍々しい玉座へと姿を変えた。


 繭の中から現れたのは、裸の少女。

まだ発達途中というような風貌の少女は、玉座の完成とともにその目を開いた。

玉座に座り、言葉を放つ。


「ほう、お主か。

 我を目覚めさせてくれたのは」


 深い紫の髪に、同じように怪しい魅力を放つ眼。

少女は軽く欠伸をすると、自分の肉体を見る。


「なるほど、この世界ではこのような姿となるのだな。

 これもまた、面白い」


 どこか妖艶なその姿に、俺は目を奪われていた。

しかし、少女が俺を見つめたことで自らを取り戻す。


「どうした、お主。

 我の姿を見て興奮しているのか?」


「ち、ちげーよ!

 て、てかお前は何なんだよ一体!」


「何……か、難しい質問だ

 お主らのもつ稚拙な言語でどう説明しようか」


 少女は首を傾げる。

そして少し考えるような仕草をした後、ポンと手のひらを叩いた。


「我は『全て』だ。

 それ以上でも、それ以下でもない」


「……どういうことだ」


「だから『全て』だと言っているだろう?

 神などという小さな存在ではない、その上だ」


 神の……上?

つまり、なんだ、神を創造した神……みたいな感じか?


「我は全てを知っているし、操れる。

 お主がこの世界のヒトではないことや、これから起こり得ることも全て」


「おいおい、冗談だろ。

 俺はそれをどうやって信じろっていうんだ?」


「信じる信じぬもお主の勝手。

 しかし、信じた方が徳があると思うぞ」


 どうする……?

この露出狂中二病全開少女を信じるか?

自らを『全て』と名乗る者。

到底信じられない。


「しょ、証拠を見せてくれ。

 お前が『全て』だという証拠を!」


「……いいだろう。

 我も暇だったしな。

 わかりやすいほうがお主にはいいだろう」


 そう言って少女は指をパチンと鳴らす。

すると、空間に突如として出現した黒い穴から、ドラゴンが現れる。

それは紛れも無く、俺がこの世界に来た時に襲われたドラゴンと同種であった。


「ど、ドラゴン!?」


「これだけではつまらないだろう」


 さらに指を鳴らすと、黒い穴からまたも何かが現れる。

見覚えのあるその姿は、疑う余地もなく……


「フレデリカさん……!?」


 少女の合図とともにドラゴンとフレデリカは戦いを始める。

しかし、ドラゴンは強く、フレデリカは徐々に押されていく。


「……まさか」


 フレデリカは懐から結晶を取り出し、割った。

手投げ斧を展開しドラゴンに攻撃していくのだが、それでも劣勢である。

魔力を持続させるため、フレデリカはどんどん結晶を砕いていく。


「やめろ……やめてくれ!」


 やがて、フレデリカは魔力暴走(スペルオーバー)を起こす。

あの時と同じように漆黒のオーラを放ち、眼が紅く輝きだした。


「なるほど、行き場を失った魔力がオーラのように見えるのか。

 興味深い」


 少女はそう言うものの、つまらなさそうに戦いを見ていた。

暴走したフレデリカは、斧を展開したままドラゴンへ向かっていく。

しかし、暴走しているがゆえにドラゴンの攻撃動作が見えず……


「やめろぉぉぉおおおおおおお!!」


 ドラゴンの鋭利な爪が、フレデリカを引き裂いた。

鎧ごと引き裂かれ血を流して倒れるフレデリカは、光を失った目で俺を見つめる。

死にたくないと訴えるように。


「これでわかってくれたか?

 我が『全て』であることが」


「……あぁ、わかったよ。

 わかったけどな!」


 気づけば俺は無意識のうちに剣を引き抜いていた。

なぜだろう、いやに心がザワつく。

怒りが収まらない。


「ほう、この我に戦いを挑むというか。

 面白い」


「うぉおぉおおおおおおおお!!」


 俺は剣を構え、少女へ向かっていく。

しかし、少女が手をかざした瞬間、俺の身体は宙を舞った。

衝撃波のようなものに弾かれ、壁に背を叩きつける。


「その意気込みは良し。

 だが、あくまでこれは余興だ」


 少女が指を鳴らすとドラゴンは消え去り、フレデリカは何事もなかったかのように蘇る。

先程まで血を流して死んでいたのに、今はピンピンしているのだ。

フレデリカは俺を見て笑うと、ドラゴンと同じように姿を消した。


「……今のは、本物なのか?」


「あぁ、本物だ。

 この世界に同じ人間を二人創りだした。

 都合のいいように改変はしたがな。

 そして、一度殺し、蘇らせ、消した」


「……ふざけてるのか。

 お前、命を何だと思ってるんだ!?」


「命……か。

 お主にとっては大切かもしれぬな。

 しかし我にとって命なぞ、お主らが思う石ころ同然」


「てめえ……!」


「わからぬだろうな。

 価値観というものは自らの常軌を逸すれば、理解できぬものだ。

 我はここでお主を殺すことも出来るのだぞ?」


 込み上げてくる怒りを、俺は無理やり抑えつけた。

ここであの少女に挑み、殺されるのは容易い。

しかし、俺にはやらなければならないことがある。


「遠慮しとく。

 俺には、やらねえといけないことがあるんだ」


「……なるほど、勢い任せの馬鹿ではないようだな。

 気に入ったぞ、お主」


「そりゃどうも。

 俺はもう行くぞ。

 お前は勝手にしろ」


 俺はそう言い残し、少女に背を向けた。、

行き場のない怒りを、歩みに変えて進む。


「そのままで聞け、アキト」


 名を呼ばれ驚くが、決して振り向かない。

歩みを止めることもしない。


「今アキトが成そうとしていることは、唯一正解の道だ。

 しかし、それをすれば大変な未来が待っているだろう。

 言っても無駄だろうが、気をつけるのだぞ」


 俺は返事をせず、その場を離れる。

正解ならそれでいい。

俺に大変な未来が待ち受けていようよ、俺だけが大変ならばそれでいいのだ。

たとえ、どれだけ辛くても。

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