閑話5 本当に変な男。
「ねぇ、暇なんだけど」
あの女が目を覚ます間、ただひたすらに待つしかない。
何もすることがない。
いつものことなのだけれど、それが今は少し困る。
だから少し、目の前の馬鹿にいじわるをしてみた。
「暇って言ってもな、ここから離れるわけにはいかないだろ」
「知ってるわよ。
何か面白い話でもしたら?」
「無茶いうな。
異世界で絶対にスベらない話なんて持ってないわ」
「は?
何言ってるの?」
スベらない話ってなによ。
話がスベるってどういうことかしら。
何処か遠くへ行くのかもしれないけど、意味がわからないわ。
「……俺さ、この世界の人間じゃないんだよ」
「で?」
今度は突拍子もないことを言い出した。
転生か召喚はわからないけどそんなことを言う人は久しぶりに見た。
思わず普通に「で?」って声が出たけど、気にしなくてもいいでしょ。
「俺の住んでた世界はさ、魔法とかないんだよね」
「へー。
不便ね」
「その代わり、科学が発達してる。
この世界で言うと魔法みたいな」
「例えばどんな?」
「……お掃除ロボットが自動で動く」
「ゴーレム?
いや、でも掃除をするのよね……」
「あぁ、さらに最適なルートで効率よく掃除してくれる」
「それは便利ね」
魔動ゴーレムがお掃除してくれるってすごい世界ね。
ちょっと不気味だからあまり近寄りたくないけど。
「ねぇ、他には?」
「えーと、どれだけ離れていても、友達と話ができる」
「嘘よ。
どうやって?」
「電波っていうのでそれが可能になる。
詳しいシステムはわからないが」
「なるほどね。
で? 他は?」
「魔法を使わなくても空が飛べる。
さらに、その先にも行けるぞ」
「はぁ!?
空の先なんてあるわけない」
「馬鹿め、それがあるんだよ。
宇宙っていうものがな……」
「ウチュウって何よ。
虫かなにか?」
空の先って何よ。
空は空でしょ?
空に先があるなんて……あるわけないでしょ、普通に考えたら。
先がないから空なのよ。
「話変わるけどさ、エルナって何歳なんだよ」
「失礼な話に変わったわね。
17よ、まだね」
「俺は18だ。
好きなもんとかあるのか?」
「好きな……ね。
あぁ、静かな場所が好きかしら。
今はうるさいのがいるけど」
「……暇って言ったのはお前だろ」
「まぁね。
今度はあたしからいいかしら?」
これは前から聞きたかったことを聞くチャンス。
ずっと気になって変な調子になっていたから、今がその時。
「……あぁ、いいぞ」
「アキト、なんであたしを守ったの?」
「守った……?
あぁ、あの時か……
そうだな……あんまり理由とかないかもしれん」
「……は?」
「いや、俺が生きてるより勝率上がるだろくらいには思った。
後は、まぁエルナが殺される瞬間を俺が見たくないとか、それくらい」
「……あれ、あたし避けられたわよ?」
「えぇ!?
マジかよ……
早く言えよ!」
「無茶を言うわね、アキト」
……本当に意味のわからないことを言う男だわ。
自らの命より、勝率があがることを考えるのね。
あたしが殺される瞬間を見たくないってのも、なかなか変な理由。
あの時あたしは、「この男は自分が守るものすべてに価値があると思ってる」って思ったわ。
けど、少し違うかも。
確かにあの男の中では価値がある。
けれどそれ以上に、自分がすることに他人からの価値を求めていない。
他人が意味の分からないと思うことでも、平気でやってのける自由な人。
……でも。
「ちょっと面白いかな」
やはりこの男といると調子が狂う。
上辺というものを感じないからだろうか?
自由すぎて、中身が透けて見えるからこそ……
「……少しは信じられるかもね」
この言葉がアキトに聞こえたかわからない。
聞こえていないことを祈るわ。
自然と口に出てしまったから、自分自身でも驚き。
アキト……変な男だわ。




