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マジ無能力で異世界転移したけど世界を救うために頑張ります!  作者: 鷲鷹 梟
第2章 遥かなるアイントラハト
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第31話 積荷(ただし、いきている)

 四日後。

俺はウォレスタ港でフュネイト行きの船に乗り込んだ。

事前に話が通っているので乗り込むまでに時間は要さなかったが、なにせ勇者様が旅立つということで大勢のギャラリーが港に押し寄せている。

状況だけ見れば俺も勇者様と一緒に行く人みたいになった。

まぁ全然違うんですけど。


「アキトさん、前に言ったことは忘れてないわよね?」


「はい、大丈夫です。

 危険な物だってことは重々承知しています。

 フレデリカさんや他の人に心配をかけないようにしますので」


 荷物を軽く撫で答える。

フュネイト行きの船には当然フレデリカもいる。

前に言ったこととは、紅魔晶石の危険さについてだ。

一応俺のことを心配してくれているのだろう。

……周りへの影響のことかもしれないけど。


「フレデリカ。

 そろそろ出発すると……おや?

 君は?」


 フレデリカへ声をかけたのは……噂の勇者様である。

この間見た時と同じように赤と黒の鎧を装備しているが、武器は見当たらない。

何処かへ置いているのだろうか。

というか俺、すごい人の目の前にいるんだよな……?

実感がまるでない。


「クロム様!

 えぇ、新人騎士ではありますが優秀な騎士です。

 今日はフュネイトで私達とは別の仕事があるとのことで一緒の船に乗っています」


「そうなのか。

 えーと、君の名前は?」


「あ、アキト=カゼミヤと申します。

 この度はお会いできて光栄です」


「アキトというのか、いい名前だな。

 今回は短い時間だけどよろしく頼むよ」


 勇者様はそう言うと何処かへ言ってしまった。

話してみた感じ、普通にいい人である。

俺みたいな絶妙な立ち位置にいる新人騎士にも優しく接してくれる。

これが彼の魅力の一つなんだろうな。


「やっぱりクロム様は凄いよね……

 私達みたいな人でも公平に接してくれるもの」


「俺の場合は下に見られてもおかしくないんですけどね。

 流石と言いたくなるような魅力を持ってます」


「アキトさんもそう思う?

 不思議な魅力があるのよね、クロム様には」


 アリアに言われた通り、勇者様と接触することには成功した。

しかし、まだ足りないような気がする。

今の会話では俺が受け取る部分は多いが、彼が受け取る部分が少ない。

本当に俺は『勇者様に足りないもの』を持っているのだろうか。


「おーい!

 もう出るぞー!」


 船員の掛け声と共に船が動き出す。

勇者様は船の甲板から見送る人々に手を振っている。

そしてそれを見る俺とフレデリカ。


 こうしてみると、勇者様はやはり主人公という感じがする。

フレデリカはヒロインで、俺はモブキャラクターの一人。

ゲームやアニメではこんな感じだろう。

なんというか、気分が沈むな。


 俺は主人公でありたいのだろうか。

よく、「誰もが人生という物語の主人公だ」とか言うけどそんな簡単なものか?


 そもそもスケールが違うのだ。

勇者様が王道アニメの主人公なら、俺は人生の転落を描いた本の主人公だろう。

前者を見た人は「こんな人になりたい」と思うが、後者を見た人は「こんな人にはならないようにしよう」と思うはず。


「この差だよなぁ……」


「え?

 どうかしたの?」


「あぁ、いや、独り言です」


「……そう、ならいいんだけど。

 私もそろそろ部屋に戻るわね」


 そう言ってフレデリカも行ってしまった。

一人取り残され海を眺める。

どんどん遠くなる港を見て少しだけ寂しくなったりするのも面白い。


「はぁ……」


「ため息なんてついて何してるのよ。

 あたしに何も言わないで国外逃亡かしら?」


 聞き覚えのある声に驚き振り向くと、まぁそこには予想通りの人物が立っていた。


「え、エルナ……!?」


「どうもお久しぶり。

 元気だったかしら?」


「元気っちゃ元気だよ。

 てかお前、手伝う約束はどうした」


「気が乗らない時はやらないわ」


 堂々と腕を組み答えるエルナ。

うん、知ってた。

この人こういう人だって知ってた。


「……で、お前はなんでこの船に?」


「決まってるでしょ。

 それを処分するためよ」


 エルナは俺の荷物を見て言う。

それとは多分、紅魔晶石のことだろうな。


「おいおい、マジかよ。

 許可は取ったのか?」


「えぇ、ちゃんと取ったわよ」


 エルナは一枚の紙切れを取り出して俺に見せた。

それは確かに許可状であるのだけど……


「……これ、積荷の許可状だろ。

 一応聞いておく、積荷ってなんだ」


「あたし」


 知ってた。

強烈なデジャヴを感じるぞ、これ。


「とにかく、私も一緒に行くから。

 多分それはアキト一人でどうにかなる物じゃない」


 いつになく真面目なトーンで語るので思わずドキリとする。

そ、そんなにヤバイのか……?

俺もヤバイとは思ってるけど、何か、更にヤバそうな感じだな……


「気合入れてよね。

 アキトはまだ死にたくないでしょ?」


「……勿論、まだ死にたくない。

 お前もそうだろ?」


「さて、どうかしら」


 答えない。

いつも通り俺をからかっているのか、それとも。


 不思議と俺は詮索することが出来なかった。

フレデリカのような過去を持っていたら、彼女を傷つける可能性もある。

今度、聞けそうなら聞いてみよう。

そのためにも生きて帰らねば。

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