閑話4 勇者という存在
ウォレスタに来るのは久しぶりだな。
最後に来たのは、まだクロム様が竜鳴峡谷を調査しに向かう前のこと。
一年……いや、二年ぶりって考えると私には少し長く感じる。
今日はフュネイトの件で私を含む何名かの騎士が集められる。
フュネイトへ同盟の話を持ちかけるために使いが送られるんだけど、これはウォレスタとリノシア、二つの国の総意なんだよね。
だから使いも二名、それぞれの国から送られるんだけど、護衛が必要。
リノシアからは私が行くけど、ウォレスタからは誰が行くんだろ。
アリアが妥当かな。
まぁガーティスってことも全然考えられるけど……
そういえばもう一人上級騎士の子がいたっけ。
名前は覚えてないけど、サックとかネックとかそんな感じの名前だったのは覚えてる。
ウォレスタの城に着いて一息。
会議室に通されて待ってると、アリアが入ってきた。
私を見ると軽く右手を上げて挨拶してくる。
「やぁフレデリカ。
わざわざすまないな。
この前のことでリノシアも大変だろうに」
「これもお仕事だからね、いいよ。
ねぇ、ウォレスタからは誰が護衛になるの?
やっぱアリア?」
「いや、今回は私ではない。
ガーティスも別の仕事があるから行けないそうだ」
「そうなんだ……
じゃあもう一人の子?」
「いや、ニックでもないんだ」
意外だった。
アリアでもガーティスでもない。
それにもう一人の子……そう、ニックさんでもないのね。
「え?
じゃあ誰が行くのよ」
まさかアキトさんじゃないよね。
アリアはあの人を愛弟子って言って大事にしてるけど、流石にこの大役を任せるのはマズイと思う。
「……クロム・レオンハート。
明後日、調査から帰還する。
その後、フュネイトへと向かってもらうと言っていた」
「え!?
ク、クロム様が!?」
クロム様。
みんなの憧れで、私の憧れでもある。
そりゃ勇者なんだから憧れの的になっちゃうのは仕方ないよね。
相棒だったミスト様と一緒に魔王打倒を掲げた勇者。
騎士としての誇りと、高貴な精神の持ち主。
「へ、へぇ~……
そう、なんだ!
ク、クロム様が……」
「随分嬉しそうだな。
舞い上がって仕事に支障が出ないようにな?」
「もう! からかわないでよ!
そ、そりゃ嬉しいよ……クロム様と一緒にフュネイトに行くなんて……
昔から一緒だったアリアはそうじゃないかもしれないけど……」
「まぁ、そうだな。
クロムは確かに強いし、心も強い。
だが、それ故に足りないものもある」
勇者様でも足りないもの……?
私には全然想像がつかないけど、一体何なのかしら。
「難しいことは私にはわからないけど……
そうだ、帰ってきてから何か変わったことある?」
「変わったこと……特に無いな」
「平和が一番よね、やっぱり」
「あ、そういえばアキトが専属の職場を貰ったな。
商業区で働いているぞ」
「へぇー、アキトさん凄いね。
専属ってことはかなり良い待遇じゃない?」
「……まぁ、それはそうなんだが複雑でな。
後で暇なら見に行ってみたらどうだ?
きっとアキトも喜ぶ」
そうね……明日は何も仕事がないから少し覗いてみようかな。
専属の職場を貰ってるのにアリアの反応があんまりよくない。
複雑ってどういうことなんだろ。
それも明日会った時にでも聞いてみようかな。
「でもアキトさんって騎士っぽくないよね。
流されてるっていうか、そんな感じがする」
「そうだな、確かにその節はある。
ここに慣れていないのもあるが、本人にも問題はあるだろうな」
「最近ウォレスタに来たの?
やっぱり騎士の一人なら、クロム様を見習うべきよね。
明後日帰ってくるなら、ちょうどいいかも」
「……そうだな。
あの二人は、会わせるべきだ」
「……本当、アリアってアキトさんを贔屓してるね」
「贔屓か、確かにそうかもしれない。
だが、アキトだけじゃない。
クロムにとっても、アキトは大事な存在になる」
「……そ、そうなんだ」
クロム様にとって大事な存在……?
とてもそうは見えないんだけど、長年クロム様と一緒にいるアリアなら分かる部分もあるのよね。
いずれ私もわかるようになりたいな……
「そろそろ大臣たちが来る。
準備をしておこう」
「そうね、大事な仕事だもん」
ちょっと心に引っかかる部分はあるけど、切り替えないと。
今日は遊びに来たんじゃない。
大事な仕事の話をしにきたんだ。
ちゃんと護衛できるか、不安な部分もある。
何かあって、また暴走してしまったらどうしよう……とかね。
でも、クロム様がいるならきっと大丈夫。
あの人は、私よりも何十倍も強いから。
剣も、心も。




