第23話 予想外の結末
フレデリカの暴走を何とか止めた俺は、宿舎に戻って傷の手当をしていた。
背中の傷は大したことがなかったのだが、左腕の傷が結構深い。
篭手を斬り裂き、なおかつ俺の腕にまで到達。
さらにその刃は骨に届くかという勢いだった。
「うぉおっ……痛てぇ……
恐るべし、ハルバード……」
包帯越しにでも傷を触ると痛む。
しばらくはまた薬と美味しいご飯で療養しなければならないだろう。
利き腕じゃなくて助かった。
傷の具合を確認していると、ドアをノックしてアリアが入ってきた。
気絶したフレデリカの様子が気になる。
目を覚ましてまた暴走とかしなければいいけど。
「アリアさん、フレデリカさんどうですか?」
「あぁ、一度だけ目を覚ましたが、今は眠っている。
暴走した記憶はないようだったから、疲れで倒れたと言っておいたよ」
どうやら無事みたいだ。
だが、暴走していた時の記憶がないというのはどうなんだろうか。
魔物と戦っていたことは覚えているのだろうけど……
本人としては暴走のことを覚えていないほうがいいのだろうけど、もし暴走したとわかれば余計に辛いのではないか。
まぁその辺もアリアは考えているはずだ。
俺もあまり本人の記憶が蘇るような発言はしないように気をつけなければ。
「フレデリカさんが無事でよかったです。
でも、魔法を使い過ぎると暴走してしまうんですね……」
「フレデリカは特別だがな。
魔法器官のおかげでかろうじて生きている。
常人なら死んでいるだろう」
「暴走の危険があるのに、兵士長をやってるんですか?」
「……そうだ。
フレデリカは部下にも信用されているし、武器の扱いも上手い。
リノシアとしては手放したくない人材なんだ」
エルナとの模擬戦を見ていてわかるように、フレデリカは強い。
それにレギルディアの人体実験の話から、捨てられたフレデリカを拾ったのはリノシア。
少なからず恩は感じているはずだ。
「……なんか、複雑ですね」
「まぁな。
私達は職業柄いつ死んでしまうかわからない。
だからこそ、自らが生きた証をこの世界に残さなければならないんだ」
「生きた……証」
「国民も同じだ。
生きる時間と引き換えに、その存在をこの世に残す。
子であったり、技術であったり、生き様だったり。
それぞれ違うが、みんな同じなんだ」
あまり深く考えたことはなかった。
生きる理由とか、証とか。
現代世界に生きていれば、それを考える時間すら愚かだと思った。
けれど、この世界に来てから少しだけ考えが変わっている。
もしかしたら俺も、世界を救うということで、生きた証を残そうとしているのではないだろうか。
難しいことはわからないけど。
「あ、いたいた。
あたしがいない時に大変だったみたいね」
シリアスな話をしている時、それをぶち壊すかのようにエルナが現れた。
ノックくらいしてほしい。
肝心な時に何処かへ消えていた本人に言われたくないんだが。
「……何処行ってたんだよ、お前」
「訓練場の外よ。
案の定、外からは普通の風景に見えてたけど」
「……ほんとに面倒くさがりなんだな
少しは手伝ってくれてもよかっただろ」
「災難だったみたいね。
最後、誰かが兜を投げてなきゃ危なかったじゃない」
「まぁ……そうだけどさ……」
そこまで言ってから、違和感を覚えた。
訓練場は、外から見れば普通の風景に見えていたはず。
エルナがもしも俺とフレデリカの最後を知っているなら、訓練場の中にいるはずなのだ。
「……もしかして、最後に投げ入れられた兜って……」
「何?
気になることでもあるのかしら」
「……いや、何でもない」
おそらく、兜を投げたのはエルナだろう。
訓練場の外から様子を確認して、中に戻った。
その間にどのような葛藤があったかわからない。
けれど、あの瞬間に兜を投げることが出来た人間は限られる。
思ったよりもエルナは冷たい人間ではないのかもしれない。
思い返してみれば、ウォレスタで魔物と戦闘した時に助けてくれたのはエルナだ。
会話上はツンツン……というかグサッとしているが、優しい子なのだろう。
じゃないと、俺を助けたりなんかしないでそのまま燃やしていただろうに。
「あ、そうだ。
アリア、ちょっと聞きたいんだけど」
「ん?
どうした?」
「アキトって、どこの所属になるのかしら」
「まだわからないな。
騎士の称号だけは与えられているが、詳しくはなんとも……」
「なるほどね。
それじゃあたしがアキトと一緒にいても問題ないってことよね」
「確かにそうなるが……」
衝撃発言が耳に飛び込んでくる。
なんだ、どういうことだ。
一緒にってことは、このサボり常習犯と常に一緒にいろと?
「え、マジか。
それって俺に拒否権あるのか?」
「いや、ないわ。
あたしはアキトに興味があるの。
あたしの中で納得いくまでは一緒に活動してもらうわ」
「いや、まて。
俺にも仕事があるわけで」
「そうなったら手伝うわよ。
面倒じゃない範囲で」
エルナから信じられない言葉が口にされた。
手伝う……そんな、そんなことあるわけない。
なんだかんだでサボるにきまっている。
そうわかっていながらも、俺はエルナと一緒に活動することになった。
本当に大丈夫なのだろうか……




