表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

2

何分歩いたか分からないが、潮が満ちてきている。早くしないと、また元通りの海になってしまう。

島は、カラスや海鳥で溢れていた。イツクは男から手渡されたナイフを握りしめ、牢獄の扉を開けた。

牢獄の中は、太陽が昇り始めていたため、真っ暗ではなかった。代わりに、猛烈な悪臭が鼻を襲う。酸っぱい様な、つんとくる臭い。吐き気を催したが、何も食べていないので戻せない。

2階からが囚人部屋だったが、どの囚人も既に息絶えていた。鳥の巣窟と化している。人の脳みそをカラスがつついていた。腐敗臭、汚物、鳥の臭い。

273へ向かって階段を駆け上がったが、途中何度も転び、顔を打った。そのたびすぐ起き上がり、もつれる足を必死に動かした。

囚人273号のいる5階へ着いたときには、体中震えていた。びっちょり汗をかいていて、服が体にまとわりつく。自分のはあはあ喘ぐ声だけが聞こえる。鳥すらおらず、辺りは静寂に包まれていた。

囚人273号の部屋は、1番端だった。汚臭はするが、下階の者たちほどではない。

男から渡された鍵で、そっと扉を開けた。

簡素なベッドに女が横たわっていた。伸び放題の髪に汚れた服。恐る恐る近付くと、かすかだが呼吸をしている。

女の首をナイフで切断しなければならない。ナイフを持つ手がぶるぶる震える。いったい、この女は何をしたんだろうか。

腕が震えすぎたせいだ、イツクはナイフを落としてしまった。その音で、女が動く。女の表情は垂れ下がった髪で見えなかった。

イツクはナイフを拾い直し、女に襲いかかった。女は痩せこけていて、すぐ押し倒すことが出来た。首元を狙うが、以外にも女は俊敏で、器用にナイフをよけた。

女に腹を蹴られ、イツクはその拍子にベッドから落ちた。咳き込んでいると、女がゆっくり近付いてきた。イツクにもう戦う勇気は無く、一目散に部屋を出て、階段を駆け降りた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ