11
イツクたちは、森の中をさまよっていた。
「あっ。」
後ろを歩いていたメグムが転んだ。
「大丈夫?」
イツクがメグムを起こし、雪をはらっていると、
「もう歩けん。」
と、メグムが弱音を吐いた。あても無く歩き続け、辺りはもう日が暮れようとしていた。
「私たち、どうしてこんな所にいると?家に帰りたかあ。お腹空いたあ。」
メグムはぽろぽろ泣き出した。
「ごめん、全部僕のせいや。ごめんな。」
「謝ったって何もならんやろ!」
突然、イトシが大声をあげた。
「こんなとこで死にとなかやろ。早く立てって!」
イトシは無理矢理メグムの腕を引っ張った。
「痛い!」
「おいやめろ!」
イトシはフン、と鼻を鳴らし、腕を離した。
「八つ当たりすんな。」
「俺ら、きっとここで獣のエサになるんだ。最悪。」
イトシの発言は無視して、イツクは明るい声でメグムに言った。
「じゃあ、おぶってやる。ほら。」
「私たち食べられちゃうの?」
メグムが肩に腕を回してきたが、その力は弱々しかった。
「分からん。そうならんようにせんと。」
勢いをつけ立ち上がると、重みがズシンと体に響く。
「メグムの荷物持ってくれんね。」
イトシに、努めて明るく言った。イトシは相変わらずむっつり顔だったが、素直にメグムの鞄を受け取った。
「どうせ死ぬんだから。」
イトシがぽそっと発した言葉を、イツクは聞こえなかったふりをした。
それからも、2人は歩き続けた。
歩いてきた方角には、もう夜闇が降りている。ここで一晩明かさなければならないのだろうか。イツクがそう思ったその時。
「あれ?」
「何?」
「あれ、明かりじゃない?」
イトシの指さす方を目をこらして見ると、確かに、ぽうっと、光が灯っていた。
「誰かいるのかも!」
2人は顔を見合わせ、全速力で走りだした。どんどん光が近付いていく。
森を抜けた。目の前に、大きなお屋敷が立ちはだかっている。いくつかの窓から、明かりがこぼれていた。
「やった…!」
2人は息を弾ませながらも、その表情には笑顔が浮かんでいた。
「まず、ここがどこか訊こう。」
玄関とおぼしき扉に近付き、呼び鈴を鳴らした。
すぐに、扉は開いた。……その瞬間、3人は屋敷の中に引っ張られた。