初日で 泉田香里
今回も短い……頑張ろう。
自宅で明日の小テストに向けて、咲さんと勉強しています。と言いましても、私が教えているだけです。この方普通の人と違ってハンデを抱えている私は、授業・予習・復習をしっかりしているので赤点は取ったことありません。別に自慢なわけでありません。いえ、自慢にしか聞こえませんね。
しかし、教えるのにも一苦労します。やり方を教える時でも一から書いて、その答えの証明も書くので数学の証明みたいな感じがします。でも、耳が不自由な私に頼ってくれるのは素直に嬉しいです。
【ここだけ要点を押さえておけば大丈夫です】
「ありがと〜! さすがは私の親友だと!」
勉強会も終わり用意してあったお菓子を摘まみながら、談笑としました。話す事と言っても、田舎なので基本世間話になってしまいます。
「あっ、そう言えば…上原さんと一緒にいた人って誰だろうね? 息子だったり」
【それはないかと思います。親戚ではないでしょうか?】
今日駅前で見かけた男の子を思い出しました。見た感じ身長は170cmくらいでしょうか。軽く整えられた髪型にそれなりの顔つきをしていました。年齢は私たちに近いと思います。
だけど、あの目は印象に残っています。疲れ切った目を……。彼がどんな理由でこの街に来たかはわかりませんけど、ただ彼の力になりたいと思いました。
「でも、ちょっと好みの顔だったな〜」
【咲さんの性格に文句は言いませんけど、少し自重しましょう】
「別にいいじゃん。命短し恋せよ乙女って言う言葉があるんだから」
【咲さんのは節操がないと言うのです】
「そうゆうことに言うのこの手か!」
いきなり咲さんに手が私の脇に入りくすぐり出した。私も聞こえないだけで、感覚は健在です。つまり、くすぐりには普通の人同じ感じ方をします。
こうして、咲さんが帰るまで楽しい時間が過ぎて行きました。