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プロローグ~逃亡前夜~

素人作品ですがよろしくお願いします。



もう駄目だ。 耐えられない。


俺は鉛のように重くなった体を地面に投げ出しながら心中で己の恩人であり、親代わりであり、己の武の師匠でもある人の顔を思い浮かべると思い付く限りの罵詈雑言を浴びせかけた。


あのドSババアめ、何が『今日は水上を駆けることが出来るようになる素晴らしき歩方を伝授しよう。 なーに簡単だ。 右足が沈みそうになったら沈む前に左足を上げ、左足が沈みそうになったら右足を上げる。 な、簡単だろ』だ!!


んなこと簡単に出来てたまるか!!


速攻でドプンと沈んで土左衛門が一丁出来上がるだけだっちゅーの!! ………まあ文句言ったら『そんな甘ったれた根性してるから出来ないんだ! 罰として錘を追加だ!』とか言われ兼ねない……いや、絶対そう言うに決まってる。


小休止を入れて体が少し楽になったのを感じると俺はガクガクと生まれたての小鹿の如く足を震わせつつも立ち上がった。


いつまでも休んでいるわけにはいかない。


本日の修行メニューは終えたがまだしなければいけない雑用は山ほど残っているのだ。


俺は愛剣を手にとぼとぼと歩き出した。








 「遅い! 何ちんたらやってんだ!」


 家に帰った途端に罵声が飛んできた。


 部屋の中央で酒瓶を片手に顔を真っ赤にした女が俺を睨みつけていた。


 我が偉大なる師匠である。


 まるで炎を思わせる紅蓮の赤髪を逆立て、猛禽のように鋭い視線が俺を貫いた。


 それだけで身体中に悪寒が走り冷や汗が流れた。


 「日暮れまでには帰って来い……私はそう言ったはずなんだが」


 師匠は立ち上がるとゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。


 師匠の背丈は俺とほぼ同じ位のはずなのにまるで巨人に見下されているかのような威圧を感じる。


 師匠の機嫌の悪さが殺気となって肌にピリピリと危機感を感じた。


 だけど恐れることは無い。


 師匠に拾われてから10年、この人のことなら何でも知っている。


 こうなった時の対処法もバッチリである。



 「すみません師匠! これが手に入ったと酒場の親父に聞いて取りに言ってました」


 「そ、それは!?」



 師匠が驚愕に目を見開いた。


 俺が取り出して見せたもの…それはドワーフの酒職人でも僅かにしか造ることが出来ずに市場にめったに出回らない幻の銘酒『鬼殺し』である。


 昔から酒場の親父に頼んでいたものが今日ようやく手に入ったのだ。



 「お、おおおおおいっ!! は、早くそれを寄越せ」



 さっきまでの様子とはうって変わって師匠が鬼殺しをひったくっていった。


 震える手で瓶を開けるとコップに注ぎ一気に煽った。



 「ッッッッッカッハアアアアァァァ!!! うめええええぇぇ!!」


 「師匠にはいつもお世話になってますから感謝の気持ちにとずっと探していたんです。 喜んでいただけたようで何よりです」


 「で、弟子ぃ……お前って奴は……」



 俺の言葉にジ~ンと来たらしい師匠は目を潤ませると俺の頭をガシガシと撫でてきた。



 「ささっ、酒はまだまだあるんですからどんどん飲んで下さい」


 「おう!!」



 俺が進めると師匠はペースを上げて飲んでいった…………竜や悪魔でも酔い潰せると言われるぐらい酒精の強い『鬼殺し』を。










 『鬼殺し』を全て飲み終えると同時に師匠はぶっ倒れて眠りについた。


 これで当分は目覚めることは無いだろう。


 俺は師匠が眠りについたのを確認すると予め用意しておいた荷物の詰め込まれたリュックをベットの下から取り出した。


 以前から今日のために用意していたものだ。


 今酔いつぶれて無防備に眠りについている師匠だが普段はどんな時であろうと隙を見せることがない凄腕の武芸者である。


 常駐戦場、いついかなる時に襲われようとも対処できるのが本物の戦士というものだ、というのが師匠の言葉である。


 顔を真っ赤にし無防備に酔いつぶれて眠っている人が吐いた言葉とは到底思えないが……。


 この『鬼殺し』が無ければこのようなことにはならなかっただろう。


 俺は師匠を抱えるとベットに寝かせ離れようとした瞬間、師匠の腕が伸びその豊満な胸に頭を抱きしめられた。


 酒臭さと共に感じた強烈な女の甘い匂いが肺を満たし理性が飛びかけた。


 唇をかみ締め身体の奥から迸りそうになる衝動を堪えるとゆっくりと師匠の腕の中から抜け出した。


 ふぅと大きく息を吐き出すとベットに眠る師匠に目をやった。


 ベットの上に投げ出された細く滑らかなラインを描く肢体は白磁のような肌を赤く染め、呼吸と共に上下する胸は薄い生地のアンダーを大きく押し上げぷるんと震えている。


 常時威圧を放っている眼が閉じられているせいか普段は感じにくい美貌が露となり思わず視線が釘付けになってしまう。


 普段は暴君な女王様だが今は可憐なお姫様のようでそのギャップに頭がくらくらとしてくる。


 いつまでもその姿を見つめていたいところだが当初の目的を思い出すと和み惜しみながらも師匠に背を向けた。



 「師匠、ごめんなさい。 そして今までありがとう」



 俺はそう呟くと今まで暮らしていた家を後にした。



 


文章書くのって難しい・・・

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