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第七話 「手加減してますよ?」

いつもよりちょっと長めになりました。

「それではお世話になりました。また暇を見てきますね」


「おおオトヤ様。お待ちしております」


 翌日、雨も止みいい感じに晴れている中、村長さんに別れを告げる。ついでにお弁当を持たせてくれたのがすごい嬉しい。


「んじゃ行くか?」


「行きましょうか」


 さすがに村人たちに別れを告げる時間もないし、集まられても俺が困るのでみんなには普通に仕事をしてもらっている。雨が止んで、仕事日和な天気だしね。


 俺とグランツさんは村から出ていく。そういえばここから街までってどんくらいあるんだろうか? 聞いてみよう。


「あん? こっから街までの道のり? ちけぇちけぇ、今から行けば日が落ちる前には着くぜ。無論歩きでな」


「なるほど、こっちの世界に来たばかりの俺には近いのかどうか全然わかんないですね」


 まぁそれでも問題はないんだけどね。今まで大した運動もしたことないし、結構体の弱かった俺だけど、なぜか運動は得意で、体力も結構あるんだぜ。ただ限界を超えるとぶっ倒れたりしたけどね。


「近いっての。ちょっと離れた場所って言ったら、街から王都までなんて馬車で五日以上はかかるんだぜ? それに比べたら歩きで一日もかからない。近いだろ?」


「そう言われれば近いような気もしますけどねー」


 馬車かー。乗ってみたい気もするけど、これから乗る機会なんていくらでもあるよね、きっと。やっぱりあっちの世界と違って交通機関がないから移動には時間がかかるんだなぁ。


「そういえば気になってたんだがよ」


「んむ? なんですか?」


 一時間くらい無言で歩いていたらふとグランツさんに話しかけられた。なんぞ。


「そのお前の話し方なんだがよ。なんで丁寧にしゃべるんだ?」


「え? そりゃグランツさんのが年上で立場も上だからですけど?」


 多少崩れた話し方にはなっちゃうことはあっても年上には敬意を、ね。


「そりゃ年は上だが、立場って言ったらお前神様なんだろ? こっちが下じゃねぇか」


「む……グランツさんまで神様扱いですか?」


 嫌だなぁ。この人はそうしないと思っていたのに。


「冗談だよ冗談。ただお前と一緒で普通に話してもらったほうが楽ってだけだ」


 あぁなるほどそういうことかー。うんうん、確かに堅苦しい話し方は嫌だよな納得。


「そういうことなら。じゃあグランツさん、これからは普通に喋るからよろしくねー」


「お、おぅ。いきなりフランクになったな」


「いやー、俺もやっぱり気楽に話せるほうがいいしね。やっぱり肩のこる話し方より気楽さだよね」


「だな。それについちゃ同意だ。ところで……」


「魔物だね。森の中で見たのとは違うし、こういったとこでも出るもんなんだ?」


 今歩いているのは見通しの良い街道のようなところ。まぁ道があるわけじゃなくて草原に近いけど、馬車が通ったりするからか、草がないところもある。見通しがやたらといいので魔物の姿もよく見える。ウサギっぽ奴だ。角が生えてるけど。


「ボーンラビットが十五匹か。こいつらは群れてもせいぜいDランクの雑魚だ。ちなみにこういったところでも当然魔物は出るさ。だから普通は護衛を雇ったりして馬車で移動するんだがな」


「あ、やっぱり弱いんだこの魔物。あの狼っぽいのより弱そうな感じだったんだよね」


 あの熊さんからはかなりの威圧感を感じたけど、気づかない間に殺しちゃったし。今回のウサギさんからはほとんど力を感じない。というかこの力ってなんだろ? 魔力かな。


「ところであれって全滅させちゃっても大丈夫?」


「まぁ問題ねぇな。ほんとならあいつの肉はそれなりに美味いんだが、オレは料理なんぞできんしな。お前もできないだろ?」


「できないねぇ」


 できてるなら森でももうちょっとまともなものが食えたんだろうか。あのあと聞いた話だが、あの熊さんの肉は焼くんじゃなくて煮るといい感じに美味しくなるらしい。食べたかったけど、凄まじい魔力で殺した関係で食べると危険らしいのでやめといた。もう食べちゃってたんだけどね……


「ま、それなら遠慮なく全滅させよっと」


 現れてはいたけど、こっちを警戒していて全然近づいてこなかったウサギさんに魔法をぶつける。今回は周りに木々もないことだし炎で。


「……マジで出鱈目だなお前はよ」


「そう? ものすごく手加減したんだけど」


 事実である。熊さんは無意識だったからあれだけど、狼っぽいのの時よりも威力の弱い魔法だし。まぁ、簡単に言えば火の玉。それを三十個ほど作って飛ばしてみた。一瞬で灰になったね。


「さっきの火の初級魔法“ファイアボール”だろ? いくら初級だからってあの数は聞いたことすらないし、威力がありえんぞ。なんだ姿すら残らないって」


「いいじゃん別に。でもあんまり出鱈目だと変な人が来て困るかもしれないなぁ」


「当たり前だ。どんな手を使ってでもお前を引き込もうとするだろうよ。で、どっかとの戦争でもさせられんじゃねぇか?」


「うわ、それは勘弁。ま、とりあえず街に行こうか」


「ほんとにわかってんのかお前はよ……」


 少し気楽すぎるかもしれないけど、なんかだんだん楽観視するようになっている気がする。森の中での生活に比べると楽すぎるからかもしれない。神様扱いは嫌だったけど、知らないうちに調子に乗っているのかもしれない。うん、気を付けよう。



▼▼▼



 こいつは本当に出鱈目だ。オレも今までの人生で魔法使いとは結構知り合ってきたが、あんな芸当ができる奴はいなかった。


 こいつの持っている魔力が異常な量っていうのはまぁ納得できるが……どうしてあそこまでコントロールできる? 同じ魔法を同時に三十だぞ、普通は構成が崩れるはずだ。俺は魔法なんぞ使えんから詳しくはないが……いや、詳しいやつが見たら暴れだしそうなくらいの出鱈目さだな。


「お、グランツさん。あれが街ですかー?」


「あぁ、そうだな。さて門番に話をするからお前もついてこい」


「りょうかーい」


 どこまでも軽い奴だな、こいつ。さて今日の門番は誰だ……ちっ。


「今日はてめぇが門番やってんのか、リョエン」


「あれ、グランツさん(落ちこぼれさん)じゃないですか。今日はどうしたんですか?」


 リョエン。こいつも俺と同じく兵士をやっているが、こいつはAランク相当の実力をもつ。オレとアリエルの二人を同時に相手をしても平然と勝ちやがる。


「影の森にグランベアーが出た。その件で報告だ」


「あぁあぁ。噂で聞いてますよ。報告っていうと実際にいたんですか? もしかして倒したとか? やーそれはないかー。貴方たち弱いですもんねー」


 ……こいつから見れば確かに弱いかもな。だが、規格外を見てしまったからかオレはお前が強いように思えねぇよ。


「それの報告も含めてだが、倒したのはこいつだ」


「どうもー。魔法使いのオトヤです」


 ここについてから一言も喋ってなかったオトヤが挨拶をする。魔法使いと聞いたリョエンが顔をしかめる。あぁこいつ魔法使い嫌いなんだっけ? 恋人を殺されたとかで。


「へー、魔法使いさんねぇ。全然強そうに見えないけど、ほんとに倒したの?」


「嘘の報告なんぞして何の意味があるんだよ」


「あるんじゃない? 自分の出世とか、金儲けとかねー」


 馬鹿かこいつは。なまじ実力があるもんだからすぐに他人を見下す。その力も知らずにな。オトヤは……笑ってる。なんだこれなんだこの怖い笑いは。


「まぁなんにせよ、こんな怪しい奴は街に入れられないなぁ。いや、むしろここで死んでみるといいよっ!」


 ちっ! 剣を抜いて襲い掛かってきやがった。 こいつ本気かよ!? いくらなんでもいきなりすぎるぞ!?


「うるさいなぁ」


「なに!?」


「おいおい……」


 ぼそりとオトヤが呟いた。その瞬間にリョエンの持つ剣は真っ二つに斬れて、地面に落ちた。


「ば、馬鹿な。魔法石を使用した剣だぞ。貴様何を……」


「うるさい。これが俺の実力だよ。そんな剣、簡単に真っ二つにできる」


 オトヤが低い声でリョエンに声をかけている。これは同一人物なのか? 雰囲気が違いすぎるぞ。


「ふざけ……くっ、わかった。あんたの実力はわかったよ。確かにグランベアーを倒したんだろうね。じゃ、さっさと報告に行ってくれよ」


 リョエンの奴もこいつの雰囲気がおかしいことに気づいたか。まぁそんな危険な奴を街に入れてしまっていいのか疑問だが、何かあれば責任は連れてきたオレにあるだろうからな。


「じゃあなリョエン。ご苦労さん」


「……じゃあな」


 街に入るときにオトヤは一言も喋らなかった。


というわけでものすごくチートな主人公でした。

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