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第五話 「なにがどうしてこうなった」

 私はオトヤさんを大樹の元へと案内する。この樹は村ができる前からある唯一の大樹で、この村の象徴ともいえる樹だ。


「こちらになります」


「おー、これは予想以上にすごいなぁ」


 オトヤさんは大樹の大きさに驚いているようだ。それもそうだろう。普通の樹に比べれば倍近い大きさなのだから。


「うんうん。こんなに大きいなら結構簡単にいけるかもしんないなぁ」


「いったい何をしようとしているんですか?」


 言われるままに案内してしまったが、ちょっと試したいことがあると言っただけで、何をやるかが全く分からない。


「ちょっとした実験ですよ。まぁこの樹を傷つけようとか、村をどうこうしようとか、そういったことじゃないんで安心してください」


「そう言われましても……」


 何をやるかもわからないのに安心しろというのも無理な話だと思う。だけどオトヤさんはそれ以上はこちらを気にせずに大樹へと手をやる。


「本当に何をしようとして――っ!?」


 瞬間、オトヤさんを中心に魔力が渦巻いていた。感じたこともない密度の魔力だ。確かにこんな魔力を使えるのならばグランベアーだって魔法で倒せるだろう。納得できるレベルの魔力だった。


 だけど猶更わからない。一体こんな魔力を用いて何をしようとしているのか。


 近づこうにも近づけない。下手に近づいて刺激するのが怖い。あの魔力の矛先が自分に向かうかもしれないということが怖い。


「ふぅ」


 それからどれだけ経っただろう。数秒? 数分? あるいはもっと? わからないけど、オトヤさんが一息ついた瞬間にあれだけ渦巻いていた魔力は霧散していた。


「せいこーう。いやー、久しぶりだからどうなるかと思ったけどいけるもんだね」


 どうやら終わったらしい。成功と言っているのはなんだろう? 聞きたいけど声が出ない。未だに身体を恐怖が縛っている。


「んむ? アリエルさんどうかしましたか?」


 オトヤさんが笑いながらこちらに話しかけてくる。なんて無邪気な顔だろう。この人は自分がやったことの凄さをきっとわかっていない。


「……あ、と。い、一体何をやっていたんです、か?」


 かろうじで声が出せた。しかし恐怖はまだなくならない。


「んーとですねぇ。ま、一度村長のところに戻りましょ? そしたらわかりますから」


 オトヤさんは何かを楽しみにしているかのような表情でそう述べた。そして先に歩いて行ってしまうのを何とか追いかけていくのだった。



▼▼▼



 いやはや、成功したぜぇ。こっちに来て魔力が漲って仕方がないから加減がすごく難しいかと思ったけど、案外簡単に済んだな。多分この樹のお蔭なんだろな。魔力の操作がすごく楽になったし。やらないけど、この樹を切って媒体にしたら魔法も使いやすくなりそうだ。うん、やらないけど。


 それにしても……村長の家に戻るのに隣を歩くアリエルさんを見てみるけど、うーん、なんか顔色悪いんだよなぁ。もしかして俺の魔力に当てられたかなぁ。


 ま、本人が何も言わないし、とりあえずスルーしとこ。違う理由だったらなんか嫌だし。


「お、着きましたねー。それにそろそろな予感」


 みんなの反応が楽しみで仕方がないぜ。アリエルさんが村長さんの家に入っていくので、俺も続いて入っていく。


「おぉ、お二人とも戻りましたか。おやアリエル殿、顔色が優れないようですが……」


「……いえ、大丈夫です。それよりもオトヤさん、一体何をやったのですか?」


「んーそろそろなので、二人とも一度外に出てもらってもいいですか?」


 俺の言葉に二人は頭にはてなを浮かべているようだが、気にせずに外に出てもらう。お、来るな。


「な……!」


「まさか……こんなことが……」


 おーし完璧だった! 無事、雨が降ってきたな。うんうんいい感じだよ。


「オトヤ殿! これはいったい!」


「この村、雨が降らなくて困っていたんですよね? 前の世界でも雨を降らせたことがあったのでこっちでもやってみました」


 でもあっちだとやったあと高熱にうなされたんだけどね。今回は問題ないや。ちょっと疲れたくらいで。


「やってみましたって……そんな簡単に……」


「……これはまさしく神の所業。話は本当だったのですね」


「私も半信半疑でしたが、そのようですね……」


 うむん? また二人で話し始めちゃったかな? このパターン多いなぁ。


「オトヤ様」


「え、様?」


 どうしたんだ村長。いきなり殿から様に変わったぞ。


「あなた様も神の一人だったのですね。この地に憂いて降りてきて下さった」


「えっと、はい?」


「申し訳ありません。村人たちに現状を説明しなければなりませんので、一度この場を離れさせていただきます。貴方様は神です。なのであまり民衆へ顔を出さないほうがよろしいかと。それでは失礼いたします!」


「え」


「オトヤ様、今までの無礼をお許しください」


「いやいや……」


 村長は走り去って行ってしまった。アリエルさんも俺に対して傅いている。


「……マジでどうしてこうなった?」

主人公まさかの神様扱い。今後どうなる。

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