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第三話 「こっちの世界の肉って美味しくないのかなぁ」

「ちっ。本当にグランベアーが出たってのか? ローウルフしかいねぇじゃねぇか」


「そういう報告でしたよね? 目撃情報だけで証明できるものは何もありませんが」


 めんどくせぇ……村に残ってる二人がうらやましいぜ。オレことグランツはBランク相当の駐在兵士だ。本来なら街にいたんだが、問題行動を起こしちまってこっちに飛ばされた。


「だいたいグランベアーはAランクの魔物だぜ? オレたち二人でどうしろってんだよ」


「ですから確認に行っているだけで、別に倒して来いと言うわけではないでしょう」


 こいつは同じくBランク相当の兵士のアリエル。女のくせに結構やりやがる。こいつは村の出身とかで自分で希望して村に残ってやがる。普通は街に出たがるもんだろうがな。


 ちなみに村に残っている二人はCランク相当。危険度から今日は待機だ。本当にうらやましいぜ。ったく……


「ちっ……あぁもう鬱陶しくてしかたねぇなぁっ!」


 数体で襲い掛かってきたローウルフを大剣で薙ぎ払う。なんだってんだこれ。


「妙に数が多いですね。何かから逃げているようです。となれば本当にグランベアーが出た可能性は高いですよ?」


「わぁってるっつの」


 ローウルフは群れで行動してもDランク、単体ならEランク以下の雑魚だ。マジでグランベアーが現れたなら逃げて、餌を求めて村に現れかねん。迷惑な話だぜ。


 それから一時間程度歩ているが、こいつぁ……


「グランベアーが現れたのはほぼ間違いなさそうですね」


「あぁ。木々がなぎ倒されてやがる。爪の痕が残ってるからほぼ確定だろうよ」


 奴は気性が荒い。腹が減っているだけで暴れやがる魔物だ。ちっ、どうするか。


「どうしますか? 見つけてはいませんがいることは間違いないでしょうし、報告に一度戻りますか?」


「だな。オレ達じゃ勝てねぇ相手だ。街へ応援を出すしかねぇだろ。……ん?」


「どうしました?」


「いや……これは人間の足跡じゃねぇか?」


 木々がなぎ倒されているところから少し外れたところに足跡があった。大きさからいって人間。このサイズの魔物はこの界隈には通常いねぇからな。


「不味いですね……村人か、どこか別のところの人かはわかりませんが、ローウルフに対抗できる力を持っていたとしても」


「グランベアーは不味すぎる。しかしこんな近くに足跡があるんじゃもう駄目だろうが……しゃぁねぇ、もう少し探してみるぞ」


 まったく面倒起こす奴がいやがる。


「わかりました。まぁもしその人より先にグランベアーを見つけてしまっても、わたしとあなたなら逃げられるでしょう」


「だな。さっさと探すぞ」



▼▼▼



「これ、は……」


「ありえねぇ、だろ」


 あれから約三十分程度歩いたところに見つけたのは死体。それもグランベアーの死体だ。しかもこの殺され方……


「魔法、でしょうか? しかしグランベアーにも通用する魔法とは……」


「通用するだろうよ。周りの木々、消滅してやがるぞ……」


 どんなレベルの魔法使いだ。どんな出鱈目な魔法を使いやがった。グランベアーはその身に莫大な魔力をため込み、相手の魔法をかき消すなんてことをやってのける魔物だぞ? それを魔法で殺したってのか?


「しかもこの死体……殺されてからそう時間は経ってなさそうですよ」


「……見りゃわかんだよ。だが、魔法を使ったような音は聞こえなかったんだぞ。どうなってやがる」


 こんだけの威力の魔法を使えば結構な音が響くはずだろ? 何も聞こえなかったぞ。


「そうですね……実は魔法じゃないのでしょうか? とはいえ……あそこ、足跡が残っています。追ってみますか?」


「グランベアーより危険な奴なんぞ御免だが、まぁ放っておくわけにもいかねえよなぁ」


「えぇ。行ってみましょうか」



▼▼▼



「美味しくない……」


 木を集めてみて、魔法で火をつけて、熊さんの手は魔法を使って周りの毛を剥いで焼いてみた。で、食べてみた。


「狼よりましだけど、臭みがひどい」


 食べられるだけましかもしれないけど、これだったら木の実とかを食べていたほうがいいかもしれない……俺が肉をまともに食えるようになるのはいつの日か!


「……おい」


「んむ?」


 とか考えていたら誰かに声をかけられたので見上げてみれば鎧を着こんだ人がいました。おー、大剣持ってるかっけー。


「なんでしょうか?」


 大剣持った男の人の隣には槍を持った女の人がいましたが、この人は鎧は着込んでいないんですね。きっと動き重視。


「グランベアーを殺したのはお前か?」


「ぐらんべあー?」


 はて? なんのことでしょうか……あぁ。この熊さんのことなのかな?


「この熊さんのことですか? ですよー、事故みたいなものですが殺しちゃいました。でも美味しくなくて困ってます」


 熊さんの手を持っている右手を挙げて言ってみる。二人ともすごい苦々しい表情になった。どうしたんだろうか?


「……何だこの軽い奴は」


「……とりあえず話を進めましょう」


 小声でしゃべってるけど聞こえてますー? ふむん、もしかして珍しい動物だったから殺しちゃ不味かったとか? でも狂暴で襲われたしなぁ。防衛に過ぎないんだぜ。


「えー……わたしはこの近くの村に駐在してますアリエルと申します。こちらはグランツ。貴方のお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」


「おー、ご丁寧にども。俺は柊……あー……オトヤ ヒイラギです」


 きっとこっちの言い方のが正しいに違いない。なんとなく。


「苗字……ご貴族の方でしたか。失礼いたしました。相当な実力者の魔法使いであると見ておりますが、この森にはどういった御用で?」


 うん? 貴族じゃないんだけど。こっちだと苗字を持っている人は貴族になるんだろうか? まぁいいや。


「貴族じゃないんで畏まった話し方はしなくていいんですけど」


「ですが……」


「ならオレから聞くがよ。グランベアー、Aランクの魔物を殺している割に傷一つねぇ。さらに言えば魔法使いが一人でいるってのもおかしい。なんでこんなところにいるんだ?」


 おおぅ。今度はグランツさんとやらが聞いてきた。でも畏まった話し方をされるよりはこっちのほうが楽かな。


「んー、話せば長くなるんですけど。それに夢みたいな変な話なんですよねぇ」


 正直俺は信じられなかったし。つか今も信じてないし。というか神さんを信じたくないし。ざけんなーって言いたいし。


「んなもん聞いてから考える。とりあえず話してみやがれ」


「わかりましたー」


 さてさて、この二人はどんな反応をするんだろうなぁ。ふざけるなと怒鳴られる気がするぜ。

本来ならかなり強いはずの熊さんでした。

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