第十三話 「ギルドの説明。でも簡素だ」
……言い訳はしませんよ。
「すいません、ただいま戻りましたー」
ガルドに連れられて、魔物と戦って……というか一方的に殲滅して? 認められてからギルドに戻ってきた。どのくらい出掛けてたんだろ、一時間ちょっとくらい?
「……お帰りなさいませ。ご無事でしたか」
受付さんはほっとしたような表情でこっちに挨拶してくれた。
「はい。別段問題はなかったですよ? ちょっと魔物と戦えってなっただけですし」
どう考えても戦闘じゃなかったけど。うん、やっぱり殲滅しただけだよね。
「魔物と、ですか。Cランクへ推薦されるくらいですからこの辺りの魔物であれば問題はないのでしょうが……。あ、ギルドカードが出来上がりましたのでこちらをお受け取り下さい」
「ありがとうございます。そういえば今回倒した魔物の分はギルドカードもらう前だからカウントされないんですよね?」
なんか必要以上に殲滅したからもったいないよなぁ。
「えぇ……申し訳ありませんが、あの時点ではまだ登録が完了してませんでしたから……。ちなみに参考までに聞きますが、どのくらい倒されたのですか? もしなにか素材があれば買取もこちらでできますが、何も持っている様子はありませんよね?」
「買取とか知らなかったんですけど……次からは何か持ってきます」
まだ教えてもらってなかったよな? 俺が忘れてただけじゃないよな? とはいえ素人が剥ぎ取ったりとかできるものなんだろうか。それ以前に俺の魔法だと燃やしたり切り刻んだり潰したり氷漬けにしたりだから……無理じゃなかろうか。
「……そういえばまだ説明の途中でしたね。申し訳ございません」
「まぁいきなりガルドに話しかけられたから中断しただけですし、仕方ないですよ」
「ありがとうございます」
「ちなみにですが、倒した魔物の数は正確なところわかんないです。多分ゴブリンとウルフだけしかいなかったと思うんですけど、百にはちょっと足りないくらいだったかなーと」
たぶん。火と風と氷でそれぞれ三十くらいやってたと思うし。
「……はい?」
「どうかしました?」
突然受付さんがぽかんとしてしまった。何か変なこと言ったかな? あ、やっぱり多かったんだろうか?
「ひゃく、って言いました?」
「はい。多かったですか?」
でもガルドが呼んじゃったんだから仕方ない。それに多いとしたらやっぱり俺が役に立たなかったら相当不味かったんじゃないだろうか?
「あ、いえ……確かに多いですけど、ゴブリンやウルフだけだったんですよね? であればCランクに推薦されるくらいですから倒すこと自体はできるとかと。ガルドさんも一人でゴブリン百体以上を狩って帰ってきたことはありますし」
なんだ、問題なかったからガルドも平気そうにしてたのか。ん? じゃあ何に驚いてたんだ?
「ただ、相応の時間はかかります。この街から少し行ったところに何もない草原があります。おそらくはそこで戦ってきたのだとは思いますが、徒歩では往復で一時間近くかかる距離ですから……貴方が帰って来たまでの時間を考えると、数分から十数分で片づけたんですよね? 魔法使いとは聞いてますが、いくらなんでもこれは……」
……そんなにおかしいの? 魔法だったら広範囲攻撃できるよね?
「そんなにおかしいことだとは思ってませんでした。ただ普通に魔法を使えばある程度の範囲はまとめて攻撃できますよ?」
「……普通じゃないんですけど。いえ、わかりました。あのリーベル兵士隊長が推薦するくらいですから、このくらいは想定しておくべきでしたよね。すいません」
「いえ、謝られても困るんですけど」
言外にお前は普通じゃない、諦めました、って言ってるよね? 別にいいけどさ。神様扱いよりはよっぽどマシだし、普通じゃないのはリーベルだから、って感じだから。
「あぁすいません。貴方が悪いわけではないのに……」
「別にかまいませんよ? とりあえず話を進めましょうよ」
なんだろうね。自分以外のところでは話がどんどん進んでいくことが多いのに、自分が話してると進んでいかないっていうのは。
「……本当にすいません。さて説明の続きですが、別段難しいルールはありません。ランク上昇についてもギルドカードが依頼の数や倒した魔物のデータから判断しますし、時々ギルドから直接依頼をする場合を除いて、依頼を受けるタイミングだったりは自由ですから」
「えっと……ギルドカードが判断するのに、最初っからCランクって大丈夫なんですか?」
どうやって登録してるのさ、それ。
「はい、それは大丈夫です。私も詳しいことは知らされていないのですが、そういった例外措置は可能なようですから」
「ならいいんですけど……」
本当にいいのか? まぁいいや。あとは気になることと言えば。
「ギルドからの依頼、というのは?」
指名依頼とかそんなの? いや違うか。
「はい。たとえは危険度の高い魔物が確認された場合はランクの高い冒険者の方へ直接ギルドの方から依頼を出す場合があります。他にも危険度が高いわけではなくても魔物が大量に発生した場合には一定ランク以上の冒険者の方たちに依頼を出す場合があります」
「なるほど。普通の依頼だとまた別なわけなんですよね?」
「そうですね。ランクの低いものですと個人的な手伝い、荷物運びだとかの依頼があります。少しランクが高くなりますと、行商人の護衛が多いですね。あとは魔物が生息していて一般人が立ち入ることのできない場所へ、薬草などを採取していただく依頼などもありますから。基本的には個人の依頼をギルドを通して冒険者の皆さんへ回していくわけです」
ふむふむ……
「Cランクだとどんな依頼がありますか?」
とりあえず荷物運びたとかの依頼はランクが低いらしいからやる意味はないよね?
「そうですね。基本的には討伐系の依頼が多いですが、護衛などの依頼もあります。ただどの依頼にしても一人でやっていくのは厳しいですから、パーティを組むことをお勧めしますが……」
あー……すぐ終わる依頼だったらいいけど、外で寝たりするときとか見張りが必要だもんなぁ。護衛なんかもそうだろうし。でもパーティって言っても知り合いがほとんどいないからとりあえずは無理。
「とりあえず、一人でやれそうな依頼からやっていくことにします。まだこっちでの知り合いがいないので」
ぼっちじゃ、ないんだよ? 友達はできたし。
「それであればDランクの依頼をお勧めしますよ。オトヤさんはCランクとはいえ、冒険者としての経験はないのですし、下のランクからこなしていった方がいいかと」
「そうします。ゆっくりやっていくつもりでしたしね」
リーベルが余計なことしなければ最初っからゆっくりできたんだろうけどねー。
「はい、慌てても良いことはありませんからね。依頼はこれからやりますか?」
「いえ、貴女の言う通り慌てても仕方がないですから。今日は宿に戻ってまた明日から頑張ることにしますね」
「わかりました。またのお越しをお待ちしております。わからないことがあれば遠慮なく聞いてくださいね?」
「はい。じゃあ今日はありがとうございました」
さて、今日はとりあえず宿に戻って休もうっと。別段魔力は余裕があるし、なんか身体に魔力を巡らせると体力にも余裕があるみたいだからそんなに疲れてないんだけど、無理しても仕方ないしなー。ゆっくり行こう。ゆっくりとね。
……これからも更新は遅いと思います。大変申し訳ございません。
なんかもう……私ダメですね。